爆弾女
「もう行っちゃうの?」
「えぇ、そろそろ行かないと怪しまれちゃうかもしれないしね、また明日会いましょ」
「……うん」
「次はサシャの所に行かなくちゃ」
「そ、それなら私も……」
「心配は無用よ、私だけで良いわ、貴方には明日の準備があるでしょう?」
「……分かったよ、気を付けてね」
「えぇ、じゃあ明日ね」
寂しそうに手を振るエミリー
その後マリアとジョンは無事エミリーの館から脱出しナサルと合流する
「遅かったな、何をしてたんだ? こっちは見つかるんじゃないかと冷や冷やとしていたんだぞ!」
「そりゃ失敬したな、さて次に行こうか?」
「次?」
「次のお嬢様の標的の名前はサシャと言いましたっけ?」
「標的ッて……物騒な言い方をしないでよ!」
「さっきのを見て物騒に考えるなって言う方が無理ですよ」
「うっ……何よ、もう! 知らないわ! 先に行ってるからね」
とマリアは先に行ってしまった。それを急ぎ追うナサル
ジョンはのんびりとその後を追った。
サシャの館前に到着する、館は都市の端っこ人気の無い所に有り館は植物のツタに覆われ不気味な雰囲気を醸し出している
「金持ちの家とは思えんな」
「口は禍の元だぞ」
「おっと、思わず口が滑っちまったな」
マリアがサシャ邸の扉をノックしようとするが返事がない
「……留守か?」
「主人が留守でも使用人の一人や二人居るだろう」
「しかし誰も出て来ないって事は誰も中に居ないか、生きている奴が一人も居ないか……だ」
ジョンのその言葉を聞いて緊張を顔に出すナサル
「ま、まさか有り得ない……いや、つい最近とある館が盗難に遭ったらしいと聞くしかも二軒……もしかしたら」
その犯人が目の前に居るとは夢にも思って居ない、ナサルにマリア、ジョンもこれ以上の混乱は面倒なので真実は黙って置く
「中の様子が知りたい、マリアお嬢様他に出入口は?」
玄関の扉は鉄で出来ている、ジョンの持つ短剣なら斬れるだろうがもし斬って何でも無かったら最悪、それは避けたい
「し、知らないわ、なんせ人の家だもの……」
「大丈夫ですよ、最初からあまり期待してませんでしたから」
ムッとするマリア、しかし次の瞬間その重そうな鉄の両開きの扉が大型動物の唸り声の様な重低音を出し開いた。
そして顔を出したのは顔見知り、バーングである
「バーング!? 此処で一体何をしている!?」
「……それはこちらが聞きたいね、お前等此処に何の用だ?」
「マリアお嬢様のご友人に会いに来たんだ」
「友人? ふぅん、なら残念だなこの屋敷は無人だぞ」
「何? どういう事だ?」
ナサルが問う
「? 言ったままだ。この館には人っ子一人も居ない」
「そ、そういう事を聞きたいんじゃ――」
「待て、状況を整理しよう、俺達が此処に来た理由はマリアお嬢様の御友人のサシャ・ネールネーナに会いに来た。次はお前だ。何故此処に居る?」
「この屋敷は私の師匠の家でね、久々に会いに来たんだが……私が来た時には既に無人だった」
「で? どうやって入って中で何をしてたんだ?」
「この館の鍵は前から持ってたんだ。だから簡単に中には入れる、それに私はお前の様に窃盗目的で此処に入ったんじゃない、中に本当に人が居ないか確認していただけだ」
「何?」
ナサルが聞いた。さっきのバーングの発言に聞き捨てならない言葉が雑じっていたのだ。
「今なんと言った……?」
「別に今聞き返す必要は無いだろ?」
「黙って居ろ! ジョン!! お前の様に窃盗目的で入った訳じゃないと言ったな? バーング? 間違いないな?」
「ふふ、間違い無いぞ、言った」
(こいつ……あの時のジェイクとの会話を聞いてやがったな、確かに気配は一つ多かった。最初はジェイク側の奴等だと思って見逃したが……面倒な事になったな……)
ジョンをギラリと睨むナサル、マリアは不安げにジョンを見て居る
「本当なの?」
「説明をしろ、全てだ」
言い逃れは無理
バーング・ワルピスは爆弾を投下したのだ。




