誇り
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「第三教室に”一人”で来い」
マリアの机の引き出しにその手紙が入っていた。久々の学校、久々のクラスメート、先生、授業と来てこの手紙
「来た!」そうマリアは思った。これはマリアの想定内、此処からが勝負、ジョンもナサルも後ろには居ない、二人には別の事を頼んでいる
気合を入れる為自分の顔の頬をパチンッと両手で叩くマリア
そして向かう旧校舎、しかし以前ほどの恐怖は感じていなかった。
(もう、昔の私じゃないんだ!)
勇気を持って旧校舎の扉を開く、そして第三教室まで歩き扉を開く
「お久しぶりね、マリアちゃん」
待ち構えていたのは首に白いリボンを着けているので幹部だと理解する、お久しぶりと言われたが彼女の顔を見るのは初めて
「……投稿初日から早速お誘い頂けるとは思ってもみませんでしたわ」
これはマリアの嘘
「あら、そう? 私達は貴方はもう二度と此処には来ないと思って居たからとても驚いたわ、また此処に来たという事はまた痛い目に遭いたいという意味でこちらは受け取って良いのよね?」
「そんな訳が無いでしょう? 私は貴方達を見返しに来たのですよ」
上級生の威圧にも負けずマリアは強い言葉を返す。
「見返す? フフ可笑しな事を言うわね。どうやって見返してくれるのかしら?」
周りに居た複数の上級生達も上品に冷たく笑う
「あら、違いましたわ御免なさい訂正します。私一人相手にこんなに人を集めなくてはならない貴方には何も見返すモノはありませんでしたね、だって最初から私の事を恐れているのですもの、ふふふ」
「あららら、これは手強いわね、私も思わず怖気たじろいでしまったわ、貴方の無謀さに」
そう言って鞭を取り出した。
「服を脱ぎなさい、以前と同じの様にね」
「貴方の命令に従う義務は私には無いわね」
「そう、なら貴方達脱がせなさい、全部脱がす必要は無いわよ」
マリアを取り囲む上級生
此処まではマリアの想定内の事だがこれからは分からない
マリアは懐からナイフを取り出す。ジョンから貰ったナイフだ。
今までは小動物を虐めて税に浸る猫の様な顔だった彼女達の表情が凍る
「これ何か分かるわよね? そんな鞭よりも簡単にこれで人を殺せるのよ、ふふ」
怪しくマリアの瞳は光る、その眼はジョンと同じ、狂気の眼
言葉を失う上級生達
「そうよね、貴方達は絶対的に安全な所からでは無いと何も出来ない、卑怯者で臆病者……貴方達がエミリーを笑う権利なんてないわ!」
マリアはナイフを床に置いて鞭を持った上級生の足元にナイフを滑らす。
「これで貴方達は傷付く事は無くなった。さぁやりなさいよ、今までの様に必死にもがく人間を笑うと良いわ、そうでもして無ければ不安なのでしょう? やりなさいよ」
「な、何よ、何のつもりよ」
「私の目的を聞きたいの? じゃあ教えて上げる……私は貴方達が如何に無力で愚かな人間か教えて上げたかっただけ、これで良く分かったでしょ?」
マリアが鞭を持った上級生に向かう、間違いなく上級生の瞳には恐れが有った。
「や、止めなさい! 近寄らないで!」
鞭を振るった。勿論何処に当たるのか等考えていないその鞭はマリアの顔に当たる
「あっ!?」
頬に鞭が当たり確実な傷が付き口からは一筋の血が流れる
「ふ、ふふ」
痛がる素振りも見せず口から出た血を左手で拭き取り、微笑み相手を視る、恐れるその顔を
「怖いの? この私が? 貴方よりも身長は小さく武器も持たないこの私が?」
鞭の目の前までマリアは歩き立ち塞がる
「悔しいでしょう? 自分がどれだけ無力か知るのは、私も悔しかったわ」
彼女達を前に友人達を救えなかった事それにザッラーを目の前にして何も出来なかった事、それがマリアの頭を巡る
「私の口を止める為にその鞭で叩くのならそれまで、嫌な事から耳を塞ぎ目を背き続けて居れば貴方達は何時までも弱者を笑い者にする事でしか自分の存在の意味を知る事の出来ない惨めな人間のままよ、今はその生き方が楽でもいつか必ず知る事になるわ自分の惨めさに自分の今まで築き上げて来たモノが何も無い事に、それでも良いの? それでも満足なの?」
上級生はマリアに威圧され動けない、そんな彼女に手を差し伸べるマリア
「それが嫌なのなら私と握手をしましょ、仲直りの握手を」
「な、何が仲直りよ……! そ、そんなモノ!」
「なら別に良いのよ? それなら私はこの傷付いた顔のまま先生の所に行って何故この傷が付いたか教えるわ」
「うっ!?」
「ふふ、自分の立場がお分かりかしら? さぁ」
その小さな手を取る、満足そうにマリアは微笑み
「これで仲直りね」
と言う
この事にシルフィアはまたしても憤怒した。そして命令をする、マリアの周りの誰かを制裁せよと
しかし
靴に釘を入れようとした子は
「止めて置きなさい、こんな事は」
とファンクラブの子達をマークしていたナサルに止められ
階段から落そうと企みそれを実行しようとしていた子は
「階段から落ちるのはさぞ痛いだろうがそれよりも三階の窓から直接地面に叩きつけられた方が痛いんだ。試してみるか?」
とジョンに脅される
マリアは報復を恐れナサルとジョンにそれを食い止める様に頼んでいたのだ。
全てを終えマリアは二人に礼を言う
「ありがとう二人共、貴方達が居なかったら私はあんなに強気になれなかったわ」
やっぱり私はまだ無力……でも何時かは一人でも誰か助けられる様になりたいとそう願うマリア
「お嬢様!? その顔の傷は!?」
「あぁこれ? 大丈夫よ大丈夫何てこと無いわ」
「大丈夫ではないでしょう!? 何を考えているんですか!! 急いでローラに頼み治癒しましょう! 行きますよ!!」
とナサルに連れ出されローラの元に連れていかれる狭間マリアは置いて行かれそうなジョンに手を振った。
(本当にありがとうジョン、貴方が居なかったら、私こんな事する勇気は無かったわ、絶対に恥ずかしいから口では言わないけど……ありがとう)
その手にはそういう思いが乗せられていた。
その頃シルフィアは自分の屋敷の自分の部屋という安全領域にて一人怒り狂っていた。
「あの田舎者の餓鬼……私に盾を突こうと言うのね、ふ、ふふ良いわ、思い知らせてやる……! 私の恐ろしさをね、覚えて居なさいよマリア・ワルクルス今度は貴方の家を崩壊させて上げるわ、貴方の馬鹿な両親なんて私のパパが本気になったら一捻りなんだから……!」
「そりゃ恐ろしいね」
「えぇ、そうでしょ――」
シルフィアの思考は一瞬止まる、此処は私の部屋、私以外に誰も居ない、私以外の声がする訳が無い、というロジックを辿り
「!?」
少しのタイムラグの後、驚く
「だ、誰!?」
「俺はジョン、ジョン・ラムだ」
開かれた窓の縁に黒服の男が座っていた。
「あ、あなた確か……マリアの!?」
「そう、俺はマリアお嬢様の執事だ」
「な、なんのつもり!? も、もしかして私を殺す気なの!?」
「何をするつもりか? それは簡単、お前が今までして来た事をお前に返すだけだ」
震えるシルフィア、自分の安全領域の筈のその場所が一瞬にして修羅場となりそこへ放り出され初めての恐怖を感じている、今までは高みの見物しかして来なかった。恐怖を感じるのは当然の事、そんなシルフィアにジョンは指を指し言った。
「シルフィア・ナナニックお前を俺独自の偏見と見解により……”制裁”する」




