仲良し
グレイズはジョンに言われた通り五感を赤ん坊に渡すため、赤ん坊へと近付いている
選択肢はない
(ゲームは無効になったのではないのか? あの男はルール説明に不備があった場合、ゲームは成立しないと言っていた。それなのにゲーム続行……おかしな話だ。これはもしやブラフか? ゲーム続行と言ってこの生物に触れさせる為のブラフ……)
グレイズの手が止まる
(これがブラフの可能性があることにジョンが気付いていない訳がない……俺を試してるのか? そこから)
背後に立っているジョンの鋭い視線を感じながらグレイズは赤ん坊を見詰めながら思考を進める
「……俺は触らない、ワンド・ワライアス・ワイス……お前、嘘をついているな」
「3」
ワンドはグレイズの言葉に反応せず淡々とカウントを進める
グレイズはそのワンドの態度に怯むことなく2と1のカウントを聞き入れ0とワンドが口にする
「で? どうだ? これでオレ達の負けになっちゃう感じか?」
といつの間にかグレイズの真後ろに立っていたジョンがワンドに問う
「……ふむ、やはりそう容易い相手ではないか……お前達の勝ちだ。ジョン・ラム」
「勝ち? つーことはこのままお前は死ぬつーことでいいんだな?」
「こうして余裕ぶっているが、実はかなりヤバイからな……ゲームを仕切り直して最初から始める余裕は私にはもうない」
(嘘は言ってないな、これで一安心)
「この勝負に勝てた褒美にこのワンド・ワライアス・ワイスが1つ貴様に伝えておこう、この精神世界からの脱出方法をな、脱出する為の手段は2つある、1つは赤き竜の殺害、もう1つはこの世界の何処かにある”ベレッタM9””5色の貝殻””書籍「片翼の勇者」”絵画”古塔”その4つのアイテムを探し同じ場所へ集めること」
ベレッタM9という単語を聞きそれが何なのか理解出来たのはジョンだけそれはジョンの世界にある拳銃の名前であった。
片翼の勇者という単語を聞きそれが何なのか理解出来たのはグレイズだけそれはグレイズが幼少期に愛読していた本の名前であった。
古塔という単語を聞きそれが何なのか理解出来たのはキャロだけそれはキャロが画家を目指すキッカケとなった絵画の名前であった。
「……まだお前に聞きたいことがある――」
ジョンはそう言うとワンドの身体が崩れ始めた。
「残念だがここまでのようだ。ジョン・ラム、グレイズ・グレナード、キャロ・イオルーク、この世界にはまだこのワンド・ワライアス・ワイスのような瘋癲者が4人いる、気を付ける事だ。そして連中によろしく伝えて置いてくれ、このワンド・ワライアス・ワイス、貴様達と再会することは叶わなかったがそれを私は嬉しく思う心の奥底から、とな」
そう勝手に自分の言いたいことを全てジョン達に叩き付けたあとその場から消えた。
「……何だったんだ。奴は」
「竜に育て上げられとっくの昔に滅びた筈のクルサントンの出身である奴がなんでこの世界に居てオレ達を攻撃して来たのか、その答えは今のオレ達が持って居る情報だけでは導き出せるとは思えない考えるだけ時間の無駄だろうからこの事は今は考えない方がいいと思うんだがそこんとこどう思う? グレイズ」
「異論はない、だが奴の言っていたこの世界からの脱出法については議論すべきだろう、奴の言っていた条件の1つである赤き竜を殺す、についてだが赤き竜を殺すならばお前が持って居たあの刀を探し出す必要がある、そしてもう1つの条件である4つのアイテムを探し出し同じ場所へ集める、についてだがこれは単純に4つのアイテムを見つけなくてはならなくなる」
グレイズは近くにあった階段に腰掛ける
「どちらの選択肢を選んだとしても赤き竜からの妨害は免れないだろうが4つのアイテムを探し出すより赤き竜を殺せる刀を1つ探し出せば済む方がまだ安全か?」
「……この世界にあの刀があるとも限らねぇけどな、外の世界に残されてる可能性もある、奴はあの刀がこの世界にあるとは言ってなかったしな」
「……お前の刀を探しつつ4つのアイテムも探そう――」
「一緒にな」
「……」
「二手に別れて探そうだとか言おうとしただろ? お前に逃げられたり死なれたりしたら困るから一緒に探そう、仲良くな」
「であれば先ずは何処へ向かう?」
「そうだなぁ……おっと丁度良いところに女王陛下がいらっしゃるぞ、ここは最高責任者である彼女に決めて貰うってのはどうだ?」
勘弁してくれとグレイズはうんざりしたように目を回す。
「そんな顔すんなよ、上司が獣人ってのは納得いかないって? もしかして獣人差別主義者か?」
「……」




