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クソゲーとマンチキン



 己が子に五感を与えよ 


「制限時間は10分、それまでに誰がどの五感をこの化け物に与えるのか、決めろ」


 というミッションを与えられたジョンはワンドをジッと見詰め思考を巡らせ

 グレイズはキャロを見詰め思考を巡らせていた。

 そんな中、先に口を開いたのはキャロ・イオルーク


「わ、私がやるよ」


 ジョンは視線をワンドから外しキャロへと移した。


「……やるって何を?」

「私が五感を全部、あの子へあげる」


 それはグレイズも考えていたことそれを自分から進言したのでジョンの説得をせずスムーズに話が進みそうだとグレイズは内心ホッとする

 この先何が起るか予想できないこの状況でジョンかグレイズが五感のどれかを失うことになってしまったら次もあるであろうゲームに対応できるか分からない

 なのでここは1番戦力にならないキャロに犠牲になって貰うのが1番理にかなっているとグレイズは考えていたのである


「ふーん、お前が?」

「ジョンさん、わたし大丈夫だよ! だってこれが終われば元通りになるんだもんね? これが最善これで良いんだよ、うん」

「……懐かしね、お前オレと最初に会った時も似たようなこと言ってなかったか? クククッそういうのバカの1つ覚えって言うのさ憶えときな女王さま」


 しかしジョンはグレイズやキャロとは全く違う事を考えていた。


「質問だ」


 ジョンはワンドに視線を再び移す。


「このゲームの目的はそこのガキを”優等生”に育て上げることだったよな?」

「その通りだ」

「ならば確認なんだがお前の言うミッションをクリアすればコイツは優等生に育つのか?」

「……ほぉ」


 とワンドは感心したように唸る


「いいや違う、貴様たちが全てのミッションをクリアしたとしてもこの化け物が優等生に育つとは限らない」

「……どういう事だ?」

「クククッつまり、コイツを優等生に育てるにはミッションをクリアする以外にも別の条件を達成する必要があるってことだな?」

「その通り」

「別の条件だと?」

「クリア条件はコイツを不良ではなく”優等生”に”育て上げる”こと、とお前が言い出してからずっと頭の中で引っかかってた。グレイズそれにキャロ、このゲームをクリアする為の条件は二つある、1つはコイツを”育て上げる”ことそれともう1つその上でコイツを”優等生”にすることだ」

「……」



 それを聞いてグレイズはジョンの話の内容を理解し顔を歪ませ

 キャロは理解できずにあたふたとしている


「コイツを育て上げるのはお前の言うミッションをこなせば問題なくコイツは育つという認識で間違いないか? その他に条件はないだろうな?」

「あぁそうだ。この化け物を育てるのにそれ以上の条件は存在しない」

「それじゃそこのガキを”優等生”に育て上げる為の条件を教えてくれよ」

「”過程”だ。ミッションをクリアするまでの貴様たちの言動がこの化け物の成長先を左右する、この化け物の模範になるような言動を繰り返しミッションを最後までクリアすれば無事にこの化け物は優等生に育て上げられる」


 ジョンは鼻を摩る


「模範ね、その模範とやらの基準はなんだ? 模範つってもお前個人の心の中の模範なのかお前が生まれ育った国の法や宗教で定められていた模範なのかで話は全く違ってくる、今回のケースで言ってもキャロの提言を却下する場合、大人が自己犠牲でこの場を治めようとした子供を救った模範的行為とも言えるかもしれんが所詮子供の戯れ言だと侮って彼女の覚悟と勇気を蔑ろにしたとも言える、まぁ何が言いたいかというと倫理観なんざ千差万別”模範”なんてのは何とでも言えるっつーことだ。だからお前の言う模範の詳しい基準を教え願いたい、でなけりゃ延々と選択肢無限大のクイズをノーヒントで答え続けなきゃならないオレ達があまりにも不利すぎる」

「駄目だ」

「なんだと?」

「その基準を教える事はルールになっていない、なので私が貴様にそれを教える筋合いはない」

「……」


(やっぱりミッションをこなすだけの簡単なゲームじゃなかったな、こちらにほぼ勝ち目のない理不尽なゲーム……なにか別の突破口はないのか? なにか――)


 ジョンはワンドの発言を最初からなぞり何か穴がないかと考え

 思い至る、突破口


「ルール違反……」


 とポツリと呟くジョン


「?」

「さっきの話さ、お前はこのゲームにはクリア条件が2つあると意図的に隠してオレ達へ伝えたそれはルール違反なんじゃないか? ”ルール説明をしなければこの教育ゲームは成立しない”ってな、お前はオレ達への説明を怠った……不成立だ。このゲームを管理するゲームマスターの明らかな悪意によるプレイヤーへの妨害工作によりこのゲームは不成立だ……!」


 次の瞬間、ワンドの口から大量の血が溢れ出る


「!?」


 ワンドの右脇腹が抉れ消え去っていた。


(な、なんだ? 今そこのガキから何かがワンドに向かって飛んで行った。攻撃したのか? オレがルール違反を指摘したから? ……それにしてもあのガキ素早いな、このゲーム負けてたらヤバかった……あの攻撃からキャロとグレイズを匿いながら逃げるなんざ無理――)


「さて……続けようか……」

「なに……? 続くのか?」

「私の不手際が原因でゲームの進行が留まってしまったことは謝罪しよう、だがこの通り私はまだ生きている、なのでゲームは続行だ」

「……」

「勝負が決まったと思ったのか? 私はルール説明の不備が原因でゲームが成立しなければこの化け物が私に攻撃してくると言っただけ死ぬまで攻撃してくるとは言っていない」

「……じゃあもう一回だ」

「なに?」

「オレが”指摘”してからそこのガキはお前を攻撃した。つまりこのゲームはルール違反を”指摘”しなきゃルール違反とみなされないということ、お前はそれをオレ達に伝えなかった。だからもう一度なのさ、もう一度くらえよそのガキの攻撃をな……」


 二回の攻撃をくらったワンド

 しかし彼はまだ生きていた。

 ゲーム続行


(そもそも死ぬのか? コイツはコイツもまさか不死とかいう最悪のオチじゃねぇよな、いや息も整ってないし出血多量で痙攣も起こしてる……致命的なレベルでダメージは喰らってるはずだ。なぜそれで立ってられる……?)


「10秒だ。残り時間……10秒」

「……」


 ジョンの鋭い眼光がグレイズをとらえる


「あのガキの模範になるような言動をしなくちゃならないみたいだからな……キャロのような幼気なクソガキよりお前みたいなテロリストを犠牲に選ばせて貰うことにしたよ、勿論、従ってくれるよな? オレの模範に」

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― 新着の感想 ―
もう、今までの言動でグレててもしょうがない。 子供と変態のどちらを犠牲に選ぶと言われたら、そりゃ変態でしょうね。 五感が無くなったら普通は頭がおかしくなると思いますけど、グレイズならマリアのことを考え…
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