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育成ゲーム



「びっくり、とつぜん床から男が生えてきたぞ、ほらお前らももっと驚けよ、これじゃオレだけが臆病者みたいに見えちゃうだろ?」

「何者だ?」

「……」


 ジョン達が天空から舞い降りた赤い何かに近付こうとした時、唐突に床から現れた男性はグレイズの問いには答えずジッとジョンを睨み付けている


「うわぁ……怒ってる? なにかオレが怒らせるようなことしちゃったのかな? 例えばその右手に巻かれてるボロボロの包帯がなんか思春期真っ只中って感じでダサいとか、心の中で想ったのが聞こえてたとか?」

「少し黙って居ろジョン」


産まれて初めてだった他人の言動を煩わしいと思ったのは


「はいはい、分かりましたよ」


 と言ってジョンは両手を挙げながらキャロの様子を伺う

 キャロは不安げな表情を浮かべ包帯の男のことを見詰めている


「おいキャロ、オレの後ろにいな」


 とジョンに声をかけられると多少は不安が和らいだのか強張らせていた表情が柔らかくなりそうになったがジョン達に着いてくると言った手前ジョンに簡単に甘えることに抵抗を覚えたキャロは再び表情を強張らせ「だ、大丈夫だよっ!」と言ってその場に留まった。


「クククッいいね格好いいじゃないか流石女王陛下様々」

「……」

「ワンド・ワライアス・ワイス」


 包帯の男がそう呟く


「そ・れ・が、私の名前、ワンド・ワライアス・ワイス、ワンド・ワライアス・ワイスだ。二回言った意味は特にない」

「はいはいわかった変人くんってことをアピールしたい訳ね」

「寂しい言い方をするな、ジョン・ラム、変人であることは認めるがそれをアピールしたい訳ではない、ただ滲み出てしまうのだよ変人さがね」


(オレの名前を当然のように知ってる訳ね、あの竜の分身とかか?)


「その変人が私達に何の用なのだ?」


 ワンドはグレイズを指差す。


「そう、ワンド・ワライアス・ワイスは貴様らに用がありここへやって来た。お前達は邪竜を知っているか?」

「……邪竜? そりゃ赤い竜のことを言っているのか?」


 ワンドは首を横にふる


「違うな、ワンド・ワライアス・ワイスの言っている邪竜とは我が故郷クルサントンの姫だった者のことを指しており名をアグヌワライアスクルサントン、現在は星の雨と名乗っている」

「知らねぇな? お前らはどうだ?」

「……」

「し、しらない……」

「このワンド・ワライアス・ワイスの里親であり師であった者……」

「……で? わざわざオレ達にお前のママの話を聞かせてどうしたんだ? お前」


 ワンドは自らの右腕に巻き付いてきた包帯を解く

 露わになったワンドの右腕は白色に変色しており時々独りでに蠢いている


「知ってほしかったんだ。この私のことを、このワンド・ワライアス・ワイスのヒストリーを忘れ去られてしまうことを”ほんの”少しでも先延ばしにする為に」


 そうワンドが語り終えると腕を真っ白が切断され地面に落ち、そのまま何か別の形へと変貌を遂げ白い人間の赤ん坊のような見た目になった。


「哀れに視えるか? この私が」

「……かなりな」


 身構えるジョン


「さて、身の上話はこの辺りにしておこう、貴様たちも気になっているであろうコレは私が産まれた時から私の右腕に寄生していた化け物、名はキャロ・ジョン・グレイズ」

「なんじゃその名前……」

「この化け物の名は今からこの化け物を育てる教育ゲームに参加する参加者の名が冠される決まりになっているのだ、この化け物がこの私の右腕から落ちたその瞬間から貴様たちはこの化け物を”教育”しなければならなくなった」


 ジョンはこの瞬間、ワンドに対して攻撃を仕掛けようかと考えたが何かしらの魔法か能力が既に発動してしまったのであろういま迂闊にワンドに襲いかかるようなマネをするのは危険だと感じ思い留まる


「なぜ、んなことしなきゃならない?」

「貴様たちの目標はこの化け物を優等生として育て上げることしかし教育の仕方を誤ればこの化け物は不良となり貴様たちはこの化け物に反抗され貴様たちが全員死ぬまで攻撃を続ける、ついでに言って置くがこの化け物は不死だ。不死斬りの刀のない今この化け物に対してキサマたちが対抗する術はない」

「……教育とやらをせずにお前を直接攻撃した場合はどうなる?」

「その場合もこの化け物は貴様たちを攻撃するようになっている、私が貴様たちを攻撃した場合は私がこの化け物に攻撃される」


(ハッタリを言っているようには思えない、攻撃しなくて正解か)


「お前も? お前も攻撃をされるのか?」

「あぁ、この化け物は私もルールを破れば問答無用で攻撃の対象にしてくる、このルール説明もそのルールの1つ、ルール説明をしなければこの教育ゲームは成立せずこの化け物は私を攻撃してくる、もし疑問点があるのなら幾らでも質問して貰って構わない私はその質問に対して必ず答えるし嘘もつかない、そういうルールだからな」

「教育ゲームとやらが終わるまではお互い攻撃は出来ないということだな?」

「その通りだ。グレイズ」


 ジョンは手を挙げる


「しつもーん、そいつを優等生に育てたらどうなるのぉ?」

「私がこの化け物に殺され、貴様たちはこの教育ゲームから解放される」

「……ふーん、じゃあオレ達がこのゲームへの参加を拒否した場合は?」

「参加者の誰か1人でも教育ゲームへの参加を拒否したとこの化け物が判断した場合、貴様たち全員がこの化け物に攻撃をされることになるので逃亡を図ることはおすすめしない」


(この赤ん坊がどれほどの危険性か分からんが今はコイツの言う通りにするのがベターか)


「で? ソイツを教育するつったてどうすればいいんだ? 乳でもあげればいいのか?」

「貴様たちはの子供が第一次成長期を迎える為に支払わなくてはならないモノがある、それは――」

「五感だ。産まれながらに「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」を持つことが叶わなかった哀れな我が子に親である貴様たちは五感を差し出さなくてはならない、しかし貴様たち3人がそれぞれ全ての五感を支払う必要はない、今から3人で話し合い誰がどの感覚を差し出すかを決め、我が子に五感を差し出せ」

「コレに差し出す五感を3人で分担して差し出せるということか? ……3人で分担するのではなく1人が五感を全て差し出すといった選択は許されるのか?」

「勿論」

「差し出したら、差し出した方はその感覚を失うってことでいいんだよな?」

「その通りだ。差し出した者はその感覚を失う、しかし失うのはこのゲームの間だけだ。一生その感覚を失うことはないのでそこは安心していい、本来であれば親は子の為に投げだしたモノが返って来ることはないがこれはあくまでもゲーム、気楽にやってくれ」

「……勝手に下らねぇゲームに参加させておいてよく言うぜ、泣けるね」



 




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― 新着の感想 ―
竜が守護していた風の谷で眠っていたであろう人たちが出てるだろうから、そりゃあ竜の関係者ですよね。 里親ということはダイヤモンドみたいな感じで育ててたのか。姫で邪竜で恐怖と一体何したんだか。 ダイヤモン…
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