斬り斬り舞い
出口のない宮殿で足止めを喰らっているデッチェと十二花隊のメンバーの前に1人の仮面をつけた女性が宮殿の地面から生えて現れた。
その見覚えのないに対してデッチェや十二花隊の面々も静観することを選んだ。
「……敵か味方か、教えて貰ってもいいかな?」
「よくわかんねぇ……私もこの状況には混乱しててなぁ……」
と呑気に胡座をかき髪の毛を掻きむしる
「あぁ頭がぼーとする……」
「隊長、どうします? コイツ」
カリストファーはその部下の問いに答えることなく黙って前進し彼女の前に立ち塞がる
「貴方が冷静になるまで私達は待つ、だからそこでゆっくりと状況を整理し慎重に答えてくれ君は私達の敵か味方か、どちらなのかを」
ボケーと髪の毛をむしっていた女性の緩い瞳がカリストファーを捉える
「あー……もういい、もうすっきり、あたますっきりんりんしてっからさ、でさ……こっちからも1つ聞きてぇんだがお前、どうしてウチの前に立ってんの? 仲間はぼくが護るんだって感じ?」
「いや、こうした方が君と話すのに適していると判断したので私は君に近付いたまで決して君のことを警戒している訳ではないよ」
彼女のことを警戒していると思われこの女の気分を悪くしないようにカリストファーはそのような嘘を並べた。
「ソレ嘘だろ、どう考えても、別にそれで怒りゃしねぇよ、ウチは心が広いんだ……だがなぁ……テメェみたいな自己犠牲魂みなぎってる奴はキレェでよ、今決めた。ウチはテメェ等の敵だぁっ!!」
女性は何もない空間から巨大な斧を取り出しカリストファーに向かって振り下ろした。
それを後方にステップし避けるカリストファー
しかし床に叩き付けられた斧は地面を砕き、それによりはじき出された地面の断片がカリストファーを襲う
その断片を黒い触手で弾くカリストファー
「おらああああああああぁあぁああああああああああっ!!!!!!!!!」
神聖な宮殿に相応しくない凄まじい怒号を響き渡らせながらカリストファーに襲いかかる女性
そんな彼女の身体をデッチェが彼女の身体の横方向からタックルし彼女のバランスを崩し攻勢に打って出ようとしていた彼女の出鼻を挫く
「いってぇなっ!! このデカブツがっ!!」
口から出た一筋の赤い液体を舐めとり
彼女は再び斧を空間に生み出し斧を持っていないもう片方の手に握る
「テメェ等、卑怯だぞ……ウチは1人だってのに集団で嬲ってきやがって……このヘンタイ共がっ!!」
「問答無用で襲いかかって来たオメェが悪い」
「……はぁ!? 悪いのはソイツだろ!」
と言って彼女はカリストファーを指差した。
「ウチの前で自己犠牲魂をひけらかしたのが悪いに決まってんだろ!! 勇敢だとか仲間想いとかウチは嫌いなんだよ、だからウチはこんなイライラしてるっつーのに!! あーー!! もうムシャクシャするっ!」
女性はそう叫ぶと信じられないほどの跳躍力をみせ宮殿の壁へ飛びつきその両手の斧で宮殿を支える支柱を次々と切り倒す。
「な、なにしてやがんだ! アイツ……!!!」
「マズイ……あの女この宮殿を破壊するつもりだ」
戦況不利なのであれば、ステージごと叩き潰してちゃぶ台をひっくり返してしまえばいい
彼女のその一見横暴で短絡的にもみえるその行動は実に合理的だった。
宮殿の柱が折れ壁が崩れ天井が降ってくる
「お、おいおいおい、マジかよ……!」
デッチェたちはこの出口のない宮殿の何処にも逃げ道はない
そしてそれは彼女も同じだった。
「テメェ等の運か上か!! ウチの運が上か!! 勝負しようぜ!! それとも一緒に仲良く地獄行きかぁ!?」
「全員、私の近くに寄れっ!!」
カリストファーの命令通りに十二花隊が動く
デッチェはちょっと遅れてカリストファーの近くに寄った。
「テメェの大好きなお仲間諸共、瓦礫の下敷きになっちまえよぉ!!」
カリストファーの自身の身体から黒い触手を出し全員を触手で包み込む
「触手プレイかぁ!? ははっ!! やっぱテメェ等ヘンタイじゃねぇか!!」
「随分と想像力が豊かな女性のようだ」
満足したのか彼女は破壊行為をやめ、二本の巨大な斧を担ぎカリストファーの顔を眺め笑う
「ウチを褒めても飴ちゃんはあげねぇよぉ? あはははっ!!」
次の瞬間
宮殿の瓦礫が辺り一帯を呑み込んだ。




