静観傍観一石二鳥
ダーテエルウィンが赤き竜の前に座る
「まぁまぁ落ち着いてよ、そういきり立ちなさんな、おっかさん」
「誰がアンタのお母さんよ……!」
「ハハッいいツッコミをするねぇ気に入ったよ、どうよかったら俺の仲間に――」
マリアとエルから冷たい視線を浴びせられダーテエルウィンは「ごめんごめん、冗談だよ」と言って2人にウィンクを送った。
「そんな威勢のよいツッコミを出来るぐらいの元気はあるんだ。大丈夫! 深呼吸して~ひっひっふーって」
「……」
「なんだい俺のことを信じてないの? すっごーく怪訝そうな顔してるけど」
「信用されてると思ってることに驚きだよ、少しでもおかしな動きしたら斬るよ」
と勇ましく言った所で自分の腰に剣がないことを思い出すエル
かなりの羞恥心を感じたエルしかしエルは勇ましい顔を崩すことなく堂々としていることにした。
「それで相談なんだけど赤き竜ちゃんさ、ここに入った人達が持ってた武器を戻してあげてくれないかな?」
「ふざけ――」
「もちろんタダでとは言わないさ、君がエル達の武器を元に戻せば俺が君にその乱れた精神を正常に戻してあげるよ」
「アンタなんかに頼らなくたってもそのぐらいのこと私1人で出来る」
「ほんとー? そうか……余計なお世話だったようだね、仕方ないここは尻尾を巻いて退却するとしようか、みんな」
そうダーテエルウィンが笑顔で言い終えると同時に赤き竜は頭を抱えながら床に頭を叩き付けた。
「! 貴方、彼女に何をしたのっ!」
その光景を目の前にしてマリアはダーテエルウィンが赤き竜に何かしらの攻撃をしたのだと判断した。
がダーテエルウィンは首をよこに振る
「言ったでしょ? 君たちと事を荒立てる気は更々ないってさ、そんな君が怒るようなおっそろしい所業を私がやるわけないでしょ?」
「だからアンタなんか信用出来るかっての」
「……」
ダーテエルウィンがマリア達の目の前に現れ、彼が赤き竜の説得を試みると提案してきたダーテエルウィン
マリアはダーテエルウィンのその提案をリスクを見越した上で呑むことにした。
(彼は一体何の目的で私達に接近してきたのかしら? 本気で私達の手助けをする為に此処に来たとは思えない……)
ダーテエルウィンと共に行動することによって彼の本当の目的を探れるのではないか? と期待しているマリアだったが今の所ハッキリとしたことはわかっていない
(遺体をドサクサに紛れて奪うためにやって来たのだと最初は思った。でも最初から遺体が目的だと決めつけて考えるのは危険、この男の場合は特に……)
ダーテエルウィンの目的を見誤り出し抜かれでもしたら自分がどれだけの損失を被ることになるのか予想もできない
なのでマリアはダーテエルウィンの行動をよく観察し考察しなければならなかった。
(彼の目的以外にも気になる点はある彼は私が閃光の力を失ったということを知っているのかしら? もし知っているのなら彼は校長の防衛策を突破してきて何かしらの力でその情報を得たということになる、もしそうなら校長にその事実を知らせ対策を練る必要があるわ、もし知っているのならね……)
マリアはダーテエルウィンが何処まで知って何処まで知らないのかを知りたいが下手な探りはダーテエルウィンには無意味、それ所か不利な状況に追い込まれかねない
なのでマリアは次にどう動き何を語るのか慎重に吟味している所なのである
「まぁこうなってしまったからにはこの私が? 彼女を救ってしまっても構わないよね?」
と言ってダーテエルウィンは苦しみ地面に伏せている赤き竜に接近しはじめる
「もし貴方のその治療が失敗して貴方までおかしくなってしまった場合は私が貴方達の治療をすることになるけど構わないかしら?」
「勿論、その時はお手柔らかに頼むよ、こう見えても繊細でね、俺」
(この反応は精神魔法を奪われたこと知らないフリをしているのかしら? ……やはり駄目ね、反応や仕草で嘘を見破れるほど簡単な相手じゃないか……ダーテエルウィンは赤き竜に触れて力が奪われることはないのかしら? もしこのまま赤き竜に触れ正常に魔法が使えたならダーテエルウィンは赤き竜の記憶を覗けてしまう、それでは赤き竜の記憶を覗いたから私の能力が奪われたことを知ったのか校長の防衛策を突破して情報を得たのか分からなくなってしまう……なんとしても止めるべき? いえ、彼がこのまま力を奪われれば彼は赤き竜のことを知らなかったことになる、それなら私の奪われた力のことも知らないという事になる、彼が私達のことを監視する術はなく校長の防衛策はまだ機能している証明になる、心配事の1つが消える上にダーテエルウィンの力も消える、もし私の思惑通りに動けば一石二鳥……下手なことは発言せずここは静観しましょうか……)




