雪の中
読んでいただきありがとうございます。
話を幾つかまとめてみました、何かミス等があったら伝えてくれたら嬉しいです。
ジョンが現れた所は雪の中、呼吸が出来ず必死にもがくジョン
まだ浅い所だったので何とか脱出が出来た。
必死に息継ぎをするジョン
「ゲホッ! ゲホッ! なんじゃこりゃ……どうなってやがる」
当たりを見渡すジョン、一面真っ白な風景を見てジョンの頭も一瞬、真っ白になる
「え? マジ?」
ジョンはまず雪に埋もれている身体を引きずり出し、辺りを歩く、足場は悪く油断したらまたさっきの様に埋まってしまうだろう
「誰か居ないのか!!」
何も帰って来ない
「……寒いな」
勿論気温も低くジョンの身体から容赦なく体温を奪っていく
仕方なく前に進もうと足を一歩前に進めた時何か雪で無いものを踏む
「!?」
バランスを一瞬崩すが立ち直るジョン、自分が何を踏んだか確かめる為地面を見る
それが何か瞬時には分からなかったジョンだが分かるようになる、それは白い人の髪だという事に……そうジョンが踏んだのは人の頭だったのだ。
ジョンは雪を必死に掻きだし人の頭を出す。
「おい! 大丈夫か!? ゲッ」
顔を出したのはさっきまでジョンと戦っていた白髪の女性、アーリン、ジョンの表情が凍り付く
「おい! おい!」
だがアーリンは意識が無く目を瞑ったまま動かない
そんなアーリンの頬を引っ叩き何とか起こそうとするジョン、今は敵味方言っている場合ではないとジョンは判断したのだ。兎に角今は人手が居ると
頭だけでは無く身体を引きずり出す。
心臓は動いている声を掛け続けるジョン
「馬鹿女! 白髪! ブス!! アホ! ボケ! ナス!! 起きろ!」
ムスッと目を開けるアーリン
「起きてるよ、声を掛けてくれてどうもありがとう」
「おっと、気が付かなかったな」
アーリンは上半身を起こしジョンを見る
「此処は?」
「俺が知るかよ、アンタの所の神がやらかしたんだ。アンタは何か知らないのか?」
「さぁ? 知らないわ」
雪の上で胡坐をかき頭を掻くジョン、アーリンはそれを眺めている
「どうせ、ザッラーが思い付きでろくでもない事をしたんだわ」
「自分の神に随分な言い方だな」
「私が信仰しているのは我が主のみ、それ以外はどうでもいいの」
そう言い優しい瞳で自分の剣を見る
それを険しい表情で見るジョン
「それより何か暖になる物を探そう、このままじゃ俺達凍死する事になる」
「……私達の他に誰か居ないのかしら? それに君は私の敵でしょ? こんな簡単に協力し合っていいものかしら?」
「こんな状況でいがみ合ってどうするんだ? 戦いの為なら何でも差し出しちゃうタイプ?」
「私はデッチェやキザシみたいな考えは持っていないわ、そうね協力し合いましょう、こんな所にずっと居たら主も悲しむわ」
「暖を探すついでに他にも誰か飛ばされて来ていないか、探そう、いいな?」
「でも、もし雪の下に埋まって居たら分からないわね」
「その時は諦めて貰おう」
そう言い二人は人と木それと有ったら食料を探す旅に出た。
しかし歩けど歩けど何も見つからない、火も無いまま夜が来たら間違いなく二人は死ぬ
「白白白、目がおかしくなりそうだ」
「そうね」
「こんな雪だらけで何もない所なんてあるのか?」
「世界は広いんだから、有っても不思議じゃないわ」
「そうかもな……」
ジョンは溜息を吐き再び前方を見るすると雪の地に穴が空いているのを発見する、それも一個では無い
「なんだこれ? 何かの動物の巣か?」
「もしそうだとしたら相当大きな動物ね……」
穴の大きさは人が一人入れる程度の大きさ、穴の中は暗く底は見えない
「此処から離れた方が良さそうだな、動物だったら餌にされちまう」
「そうね、でもこれはチャンスでもあるんじゃないかしら?」
「その巨大動物を狩れば食料も確保出来るしこの穴の中を寝床にも出来ると言いたいのか?」
「その通りよ」
「リスクが高すぎる、その動物がどんな形状かも分からないし毒でも持ってたらどうする?」
「でもそれを恐れていたら私達凍死しちゃうよ」
ジョンは辺りを見渡すが確かに何もない、日も傾き始めている時間が無い
ジョンは穴を見つめこの穴を掘った者の痕跡を探す。そして発見する
穴の側面の一部に凹凸があるのだ。そしてその凹凸をよく見ると引っ掻き傷の様な跡が見える
「アーリン、これを見てみろ」
凹凸を指差すジョン
「なんだろう? これ」
「……この穴の主はこれを利用してこの穴に出入りしてるのかもな、要はこれを梯子変りに使っている訳だ」
「もし貴方の推理通りなら、この穴の主は道具を扱える程の知能を持った動物という事よね?」
「そうなるな、それにその凹凸に付いている引っ搔き傷から推測するに俺達が思っている程の大きさの動物では無さそうだな……ちょっと呼んでみるか」
「呼ぶ? どういう事?」
「おい! 誰か居るのか!!」
穴に向かってそう大声で話し掛けるジョン、行き成りの大声で驚くアーリン
そして暫くの沈黙……の後、何かが穴を登って来る音が聞こえる
ザクザクッザクザクッと
身構える二人
そして穴の暗闇から二つの煌めきが見える、それが声を発する
「どちら様ですか?」
と、明らかに人間の声だ。
そしてその姿が露わになる
その人物の正体は毛に覆われた獣人の子供
「……だ、誰?」
「俺の名前はジョン隣のはアーリンと言う、一応言って置くが危害を加えるつもりはない」
「何で毛が殆ど生えて無いの? 病気?」
毛の生えた生物から見れば毛がほぼ無いジョン達は異常なのだ。
「そう、病気で死にそうだから中に入れて貰えないか?」
「そうなんだ。いいよ、じゃあ入って来て」
子供はそう言うと再び穴の闇へと消えて行った。
「良かったな何とかなりそうだ」
「子供に嘘なんて感心しないわ」
「お前と抱き合って震えながら夜を過ごすのと子供に嘘を付く事を比重に掛けた結果こうなった。お前が俺好みの容姿だったら俺も子供に嘘を付かないで済んだんだがな」
アーリンは冷たい瞳でジョンを見る
「そんなに俺を見詰めたって俺はお前に惚れないぞ」
呆れるアーリン
ジョン達は氷で出来た冷たい梯子を使い下に下りる
下には開けた空間が出来ておりこの子供はそこを家にして住んでいる様だ、蝋燭で灯を取っている、家具は氷で出来ている訳では無く普通に木で出来ている
「ね、本当に大丈夫なの? 近くにお医者さん居るよ? 行く?」
「いや、時間が経てば元に戻る、だから心配は要らない」
「そうなんだ。良かったね」
そう言い子供はニコッと笑う
「父親か母親は居るのか?」
「居ないよ、今は、お父さんは外で一生懸命働いてるんだぁ」
「ふーん、お父さんは何時帰って来るの?」
「分からないな……もう出て行って一年は経つから……お手紙も出すって言ってたのにくれないし」
「一年!? まさか、今は一人で暮らしてるのか?」
「うん」
「そりゃ凄いな」
「えへへ、そんな事ないよ、あ! そうだ今お茶出すね」
「構わなくていい、此処に入れてくれるだけで十分だ」
「そんな事言わないでお茶を淹れるの好きなんだ、私」
「……だったらいいんだが、でアンタの名前はなんて言うんだ?」
「キャロ・イオルークって言うんだ。よろしくね、ジョンさんアーリンさん」
「イオルーク……?」
アーリンがイオルークという単語に反応する
「キャロ、父親の名は何と言う?」
「デッチェだよ、デッチェ・イオルーク」
「……デッチェ? 確かアンタのお仲間にそんな名前の奴居なかったか?」
「君に夢中になっていたあの獣人の名前だよ」
「この子があの変態の娘だって? 嘘だろ……」
そう言ってジョンが唖然としている頃マリア達は……
震える手を自分で握って止める
暗い森の中をネルヒムとジェシカと一緒に歩く
あの神様が指を鳴らした後、私達三人はさっきとは違う森の中でただ立って居た。
「ここどこなんだろう?」
ネルヒムが私にかどうか分からないが問いかけて来る、ネルヒムの姿は後ろなので見えないが声だけで不安に感じているのは分かる
「分からないわ……」
「そうだよね、分からないよね? ごめんね」
「いいわよ、別に」
そう冷たく言ってしまった……
私も不安だもの、あなたの気持ちも分かるわ
そう素直に言えないのは私の悪い癖ね……
空気が悪い、どうしよう? 私のせいよね、何か話し掛けようかしら……?
「みんな、帰ったら何したい? 私はご飯が食べたいわ」
「……私も食べたいな」
「私も……」
ネルヒムのお腹が鳴る、それを聞いて思わずネルヒムの顔を見てしまう、顔を真っ赤にしてそのまま俯いてしまう
こんな事言うんじゃなかった。自分がお腹を空かせているという事を思い出してしまいますますお腹が減って来る
どうしよう……このまま何も食べなかったら死んじゃうわ
「何か食べ物を探しましょう? いい? 二人共?」
「うん」
「喉も乾いたな……」
「水も探さなきゃね」
目標は決まった。良し! 食べ物と川を見つけよう!
しかし、いくら歩いても川も食べ物も何も見つからない
私達は時が経つにつれ焦りが見え始める
「どうしよう……」
不安なんだろう、ジェシカまで暗い顔をし始める
どんどん空気が暗くなってくる
「大丈夫よ、きっと誰か来てくれるわ、そんな顔しないの楽しい話をしましょ、ね?」
「うん、ごめんね」
ジェシカまで謝り始める
そんな事言われたら私だって不安になってくるじゃないのよ……
次にネルヒムが泣き始めてしまった……
「ひっく……ひっく……かえりたいよぉ……」
「だ、大丈夫よ大丈夫」
「そうだよ、私達が居るわ」
私とジェシカはネルヒムの暖かい手を握る、とても柔らかい
「マリアちゃん……ジェシカちゃんありがとう」
「礼には及ばないわよ」
「そうよ」
「えへへ……」
ネルヒムに少し笑顔が戻る
大丈夫よそう大丈夫……よね?
しかし大丈夫では無かった。
結局何も見つからず、夜が訪れる、もう探索も止めて焚き火をして夜を明かそうという話になったので焚き火用の木を集める
私は必死に昨日ジョンがやっていたみたいに火をつけようとするがつかない
いくらやってもつかない……ジェシカやネルヒムがやっても同じ
とうとうジェシカまで泣き始めてしまう
「二人共泣かないで! 今火をつけるから……」
私まで泣いてしまうわ……
必死に手を動かすが煙も立たない……
どうしよう……どうしよう……
ここで死んじゃうのかな……? 私達
そう考え始めた途端視界がぼやけて来る、気が付いたら私も泣いていた。
そして次の瞬間茂みからカサカサという音が聞こえた。
泣きながらでもその音は聞こえ私達三人は泣き声を止めピタッと止まる、音が聞こえた茂みを見詰める私達
そして音の主が現れる
「何か聞こえると思ったら子供かよ……」
その毛むくじゃらの事を私達は知っている、それもそのハズ何故ならさっきまで敵として対等していた人物なのだから……
私は思わず身構える
「デッチェ、何か見つけたのか?」
「カランダーンのガキ共だ」
「本当か?」
「嘘付いてどうするんだよ」
「それもそうだな……どうする?」
「そうだなぁ」
デッチェと呼ばれた男は私達を見て怪しく笑う
私はそれを見て震えてしまう、我ながら情けないと思う、私は剣の稽古や魔法の稽古をしてきて多少戦えるつもりになっていたがそうでは無かった。
ジェシカとネルヒムを守れる気になっていた……けど違った。
私はその二人をみた途端既に心が折れてしまった。
戦う前から負けていたんだ。
獣人の大男は私達を捕える事はしなかった。それどころか火をつけてくれて食べ物まで用意してくれた。
この人達……最初は悪い人だと思っていたけど違うのかしら……? でもジークやローラと戦っている時は怖かったし……
「いいのか? ザッラーに何か言われても知らんぞ」
「別にいいだろアイツに何か言われても関係ねぇ、おう、この蛇焼けたぞ食え」
私に串に刺した焼けた蛇を差し出して来る、これ、食べられるのかしら……?
受け取って焼けた蛇をまじまじと見つめてみる、蛇なんて食べられるの?
ジェシカとネルヒムにも同じものが渡される、二人共私と同じような反応をしている
「何してるんだ? 食わねぇのか? うめぇぞ?」
「蛇なんて食べた事が無いから困惑しているんだろう」
「蛇食った事ないのか? 今まで何食って生きて来たんだよ……お前等」
「……毎日蛇や虫を食べている俺達の方が異常だと思うがな」
そう言いながら眼帯を両目に着けている男の人が蛇をむしゃむしゃと食べ始める
「それもそうか」
そう言い獣人の人も食べ始める
二人共それはそれは美味そうに蛇を食べているのでこれはとても美味しいものなんじゃないのかと思え始めたので一口パクッと食べてみる
美味しい! これはうまいわ! 私はパクパクと夢中で蛇の頭から尻尾まで全て食べてしまった。こんな美味しいもの初めて食べたわ……
私に続き二人もパクパクと美味しそうに蛇を食べ始めた。
「な? 結構いけるだろ?」
「う、うん」
「もう一本食うか?」
「いえ、もういいわ、ありがとう」
「何だもう食わねぇのか、まぁそうか子供だもんな、まだそんな食えねぇか」
そう言い獣人の人はガハハッと大声で笑う
その頃一方メイヴィスとカタリナとエルは灼熱の太陽が照らす砂漠の中を歩いていた。
汗だくのエルを放ってカタリナとメイヴィスは睨み合っていた。メイヴィスは両手を失っている、カタリナは生首の状態だ。
「ねぇ……もう止めましょうよ……こんな暑いときに喧嘩なんてバカみたいですよ」
「先に行ってろ、お前には関係ない」
「消えろ小娘」
「……」
そしてそのもう片方のジャック、ナイロン、ジーク、ローラの四人はとある洋館の中に移動させられた。
洋館の内部は汚れており誰も人が住んでいないようである
ジークとローラはジャック達に剣を向ける
「おっと、待ってよ、今回の事は私達も予想外だ。みんな見つかるまで停戦って事にしない? 私達を殺すよりも利用した方が良いと思うけど、どう思う?」
「利用? 君は何が出来るの?」
「そうだな、色々だよ、色々」
「色々じゃ分からないなぁ」
「意地悪な言い方するね、そんな喧嘩腰にならないでよ、私だって戦いたくないし君等だって不死の人間とは戦いたくないだろ?」
「……分かったよ」
ローラとジークが剣を収める
「で? これからどうするんだい? どうやら此処はどこかの部屋の中のようだけど……」
「もしかしたら他にも飛ばされた人間も居るかもしれない、探してみよう」
そうして四人は館の捜索を開始する
そして戻ってジョンとアーリン
「え!? お父さんを知ってるの!?」
キャロは驚きの余り尻尾を大振りに振り大声を出す。ジョン達が自分の父親、デッチェ・イオルークを知っていると言ったからだ。
「同姓同名の別人という可能性があるがな」
「ううん、きっとその人は私のお父さんだよ! お父さん元気にしているの?」
「元気だったな、色々と」
「良かったぁ」
キャロは安心したように目を瞑り余韻に浸る
「ありがとうね、ジョンさんお父さんの事を教えてくれて、最高のプレゼントだよ」
「喜んでもらって光栄だな、アンタもそう思うだろ?」
剣の手入れを始めていたアーリンを見てジョンが言う、アーリンは剣の手入れに集中しており返事を返さない
「悪いな、あぁなると長いんだ。暫くは話し掛けないでやってくれ」
とアーリンをよくも知らない癖に知ったような口を利くジョン
そうしていると上の方から声が響いて聞こえて来る
「おい! キャロ! 今日は当番の日だぞ! 何をやっている!!」
何者かの叫びが部屋中に響いた所でキャロが飛び立ち
「あ! 村長さんだ! いけない、今日は当番の日だった!! 二人共ごめんね、少しの間部屋を空けるけど好きに使っていいからね」
そう言いキャロは氷の梯子を使い上に登り始める……