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デッチェ・イオルーク

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「……ザッラー神が私達の決闘を所望しているから、それで私達を呼んだという訳だね?」

「そうなるな」

「ごめんね、私達の問題なのに迷惑掛けて」

「いいえ、そんな事はありませんよ、カランダーン様の悩みは私達の悩みです」

「そう言ってくれると助かるよ、流石隊長さん」

「さて役者も揃った所でいいかな? 準備を始めて、さ、誰が初めにやる?」


 ステージは周りが気で囲まれているだけのちょっとした広場、その両端にカランダーン陣営とザッラー陣営が待機している

 その中心で司会のように場を仕切っている


「速く決めてね」

「こっちは俺が出るぜ! ジョン! 来い!!」


 そう最初に勢い良く名乗り出たのはデッチェ


「ジョン君、モテているようだね、良かったじゃないか、ハッハハ」


 と笑いだすジーク


「マジ、ご勘弁」


 と不満げに言いながらもジョンが前に出ようとすると白髪の女性・アーリンがそれを呼び止める


「待って、貴方が戦うのはデッチェじゃなくて私、ソッチの人は別の人にして」

「おい隊長! 邪魔しないでくれ!!!」


 彼女があの陣営の隊長だと知り驚くメイヴィスとジョン


「デッチェ、貴方はさっき三人で戦って負けてたじゃない、今回も負けるに決まってるよ、魔法も使う気無いんでしょ? 結果は分かってる」

「そういう隊長だって……」

「確かにあの少女には負けたけど彼とは一度も戦っていないわ、だから勝敗は分からない」

「どうかね……俺はもう一度アイツと戦いたいそしたら何か見えるかもしれねぇんだ」

「何も見えないよ、君の主も泣いているやめて置きなさい」

「分かったよ……クソ」

「おいおい、待て、こちらの出場者を勝手にお前等が決めるな、それは俺達が決める事だ」

「お! 良い事言うじゃねぇか! ジョン! 気が合うな俺達」

「だが今回はお前たちの意見に従おう! こいつはチェンジだ!」

「何だよ……フラれちまったみたいだな」


 気を取り直しジョンは自分の陣営に訊く


「誰が出る? 俺以外で」

「獣人が相手か……それにとても気性が荒そうだね」

「気性が荒いのは間違いない、だが斧の一振り一振りよく考えて振っている、あんな大きな得物を振り回すにはそれ相応の肉体と頭脳を有する必要がある」

「言動を見聞きしているだけだとよく考えて行動するタイプには見えないけど実際は違うんだね」

「斧を振る時はな、それ以外は気のままに動く奴だ。戦闘が長引くとすぐに興奮して前へ前へ踏み込んでくる癖もあるしな、アンタの観察眼も間違っていない」

「なら、彼はジークに任せるべきかな、此処は冷静を守れる人が行くべきだろうからね」

「おやおや、最初から私の出番か」

「だが奴は俺に魔法を見せなかった。魔法には気を付けた方が良いぞ」

「アドバイスありがとう、じゃ行って来るよ」


 ジークが前に出る

 対等するはジークの頭が胸辺りまでしか届かない程の身長差がある獣人の大男


「へぇ、アンタも中々みたいだな」

「おっと、私もソッチの趣味はないよ、ごめんね」

「ククク、始めようか?」


 双方構える

 デッチェは大斧を

 ジークは剣を片手で構える


(そういえばあの男が戦う所初めて見るな)


 と内心ジョンは思う


 決闘特有の静寂が流れる

 先に動いたのはデッチェ、斧をジークに素早く振り上げ叩き落とす。が当たらず地面が抉れただけ

 ジークは躱し反撃の突きを一撃入れるがそれを斧の柄でガードされる


(確かによく考えているようだね)


 その後も素早い突きが三回繰り出されたが全て防御されてしまう


「いいねぇ! いいぞ!!」


 デッチェの血が滾り始める

 そしてジョンの言った通り前へと出始め反撃を始めるデッチェ、非常に力強い一撃一撃だが当たらなくては意味を持たない


(ジョン君の情報は確かなようだね、彼は戦闘にのめり込みやすい、そして周りが見えなくなる)


 冷静さを欠く……ジーク相手にそれは禁物なのだ。

 デッチェはもうジークしか見えていない、斧を次から次へと振り反撃の余地も与えない

 だが彼は見えていない、いや見える方が不自然だろう、彼の顔の周りの酸素が徐々に無くなって来ていると言う事に一切気が付いていないデッチェ

 斧を振るたび大量の酸素を消費するデッチェだが徐々にその供給も間に合わなくなってくる

 酸素が薄くなり音を反響させるものも無くなり周りの音が遠く聞こえる様になった頃にようやく気が付く……


「ぜぇ……ぜぇ……お前、俺に何かしたな……? クソ、息苦しくて敵わねぇぜ」


 自分の異常には気が付いたが詳しい種については分かっていなかった。


「種を明かす気は無いよ、どうする? 降参するかい? 今の内にして置いた方が良いと思うけどなぁ」


 動きが明らかに鈍くなるデッチェ、勿論そこは見逃さないジーク一気に好転して突きを繰り返し胴と頭は防がれたが足を刺す。


「ぐぉ!?」


 そしてバランスを崩し跪くデッチェ、跪いてしまったデッチェの首元に突きを繰り出すジーク、これで最後かと思われたが違うジークの剣は弾かれる

 弾いた対象は見当たらないだがジークは何が自分の剣を弾いたか分かっている


(防御魔法か……)


「仕方ねぇ、余りこれは使いたくないんだがな」


 ジークの風魔法も防御属性の魔法に打ち消される


「さぁ! 第二ラウンドだ!! 来いよ! ジーク!!」

「やれやれ……て所だね」


 防御属性は風属性の天敵である、何故なら風属性の魔法は大抵ジリジリと相手を追い詰める魔法が多いトッリキーな属性、即効性はない分隠密性に優れ相手を術中に嵌め易い

 だが防御属性の魔法除去の魔法を使われればどんなに複雑な魔法でも一瞬で消え去る

 防御属性には即効性の強い魔法が最も効く


「オラァ!!」


 その掛け声と共に気が薙ぎ倒される、それを間一髪避けきるジーク

 反撃しようにも防御魔法で剣が弾かれてしまうのだ。

 だから避ける事しか出来ないのだ。


(無鉄砲な男だと思っていたが違うね、彼は防御属性を使えるだからこんな無謀とも言える攻めを繰り返す事が出来たんだろう……今それが分かった所で何にもならないけどね)


 防戦一方だったジークだがデッチェの足の痛みから生じた隙を見て、ジークはデッチェの射程距離外まで走って逃げる


(あー危なかったな……)


「足をやられたのが痛かったぜ、どうも踏み込みが甘くなっちまう……」


 足の傷の痛みの所為で踏み込みは甘くなっているがそれでも木を一撃で倒せる程の威力を出せるデッチェ

 それに治癒も既に始まっているが走る事は出来ない、そこまでの回復はまだしていないのだ。


「やれやれ、君は強いな……どうしたものかね?」


 とデッチェに質問するジーク


「いや、俺に聞かれてもなぁ」

「防御属性とは恐れ入ったよ剣を入れようとしても弾かれ魔法も同じ、ふーむ……悩むなぁ」

「まぁ、確かにな俺もアンタの立場なら悩むと思うぜ」

「だろう?」


 そんな風に会話を始めるジークを心配そうに見守るカランダーン陣営


「あの、おっさん大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思うよ……多分」

「多分を付けるな多分を」



 ジークは考える、勝つ為の軌跡を


(防御属性だって無敵じゃない、意識していない方向からの攻撃には無防備)


 ジークはデッチェに対して不意打ちを仕掛けなくては攻撃を加えられないのだ。その上速攻で相手にダメージを与えられる魔法でなくてはならない

 しかし風属性の魔法にそこまで強力で隠密性に優れた魔法は無い


「アンタ、魔法で攻撃して来ない所を見ると恐らく風属性だな? 確かにそれじゃあ、俺とはやり難いだろうな」

「バレたかい? そうなんだよ、どうしようかと今頭をフル回転中」


 足を引きずり徐々にジークに迫って来る

 風を刃の様に鋭くして相手に浴びせる魔法は無い

 風の風圧で相手の胸に風穴を開ける事は出来ない

 だが剣は飛ばせる

 物凄い突風と同時にデッチェの胸に剣が突き刺さる、目を見開くデッチェ何があったのか理解が追い付かない

 ジークはさっきデッチェから逃げる際剣だけ置いて来たのだ。そしてデッチェがジークに気を取られている内に風圧で剣を持ち上げ、デッチェに向かい風圧で投げたのだ。

 剣を風圧で持ち上げた時ザッラー陣営も見えていたが警告をしなかった。何故ならそんな事をしたらデッチェに余計な事を言うなと言われてしまうからだ。

 胸に穴が開いたデッチェ吐血もしている……しかし彼の顔は曇っておらず、笑っている、そして暫くジークを見た後デッチェは倒れる


「これは……私の勝ちという事で良いのかな?」

「首を落としなよ、そしたら文句なく君の勝ちさ」

「趣味じゃないよ」


 そう言って自分の陣営に戻って行くジーク


「ちぇ、なんだよ、つまんないの、ねぇ起きるまで暫く掛かりそうだからこの人ソッチ持ってて」


 とナイロンに言い、ナイロンはデッチェをザッラー陣営まで運ぶ


「次は誰にする?」

「次は私が行かせて貰いますね」


 手を上げた主は水色髪のエフィー


「では私が行かせて貰おう」


 相手は黒髪のナサル




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