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名無しの羊



 カタリナを縛り付け話を進めるジョン達


「メイヴィスの姉だと……? そんな話は聞かなかったな」

「まぁ、まだメイヴィスもそこまで君の事信用してる訳じゃないって事だね」

「悲しすぎて血涙が出てきそうだな、で? メイヴィスの姉もメイヴィスと同じように神から力を授かったという訳か?」

「そうだよ、でもカーヌはお姉ちゃんの方はそこまで好きじゃ無かったみたいだからそこまで強力な力は与えなかったみたいだけどね」

「神一体に対して巫女が二人いる事があるのか?」

「本来は一人だけど神が我が儘を言って裁判を起こして勝訴したら二人とかになる時はあるよ、たまにね」

「聞いてるとその法律とやらも結構緩そうだな」

「そうかな? まぁ異世界人から見ればそう見えるかもしれないね、話は逸れたけどその子の名前はカタリナ、詳しくはメイヴィスに聞くと良いよ」


そう言いカランダーンは後ろを向く


「アイツ来てるのか?」

「うん、メイヴィスと一緒に来たからね、メイヴィス! 出て来たらどう?」

「不必要に人と会うのは好かないって言ってたからなこいつ等と会いたくないんじゃないか?」

「あ~そんな事言ってたね、情が移るとか言って嫌がってたね」


そう言うとカランダーンは意地悪そうな笑顔を浮かべ、後ろに走り出す。

そして悲鳴が上がる


「いや! カランダーン様放して下さい!! 止めて!」

「いいじゃないか、いいじゃないか」

「良くないです! 本当にいやなんです!! いや!!」


そんな風景をみてジョンは呆れ顔、唖然とする子供達


(何やってんだ……)


無理矢理カランダーンに連れて来られたメイヴィス、彼女は半泣きだ。


「や、やめろぉ、そんな目で我を見るな……」

「あはは、泣くな泣くな」

「これはイジメだぜ……」

「カ、カランダーン様……」


困惑するジョンとネルヒム


「やぁやぁ君達」


そして子供達に話し掛け始めるカランダーン


「この子の名はメイヴィス、寂しがり屋の可愛い子だ。仲良くして上げてね、三人共」

「は、はぁ」


呆れた様な顔でカランダーンを見るマリア


「……」


ジェシカも冷たい視線をカランダーンに送っている


「カランダーン様、何だかいつもと違う……」


困惑するネルヒム

泣き始めるメイヴィス


「おいおい、もう止せよ、話を進めよう」

「それもそうだな」

「で? 何故そのメイヴィスの姉が俺に襲い掛かって来たんだ?」

「恐らく君と同じように神に命令されたからだろう、そしてその神はこの結界を張った神だろうね」

「その神について見当は付いてるのか?」

「付いてるよ、まぁでも君には関係無いと思うから話さないよ」

「あっそう……敵の人数は分かるか?」

「それは分からないね、君が倒したのはカタリナともう一人の大男で二人だっけ? まさか人間を率いてまで巫女ちゃんを手に入れようとするなんて予想外だったよ」

「予想外ねぇ、そういうの勘弁して欲しいな、さっきだって運が良かったから勝てた様なものだ。次も勝てるなんて保証は何処にもない」

「大丈夫だ。私達が居る」

「でも力が使えないんだろ?」

「言っただろ? メイヴィスは不老不死だ。それに私もな力は使えないがそれは変わらない、もしピンチにでもなったら私達を肉壁に使って逃げればいいさ」

「……恐ろしい事をさらりと言うなアンタは」

「私達を置いて逃げたって恨みはしないさ、そこは心配しなくていいよ」

「敵は俺達の居場所に気が付いているのか?」

「大まかな位置はバレていると思うよでもちゃんとは見えて無いだろうね、だからすぐに敵がやって来なかったんだろうしね」


そうカランダーンが言った所でジョン、メイヴィス、カランダーンは早速敵の気配を感知する


「なぁんだ。見つかっちゃったのか……面倒臭いな」

「カランダーン様、この子達はどうします?」

「う~ん、今は私達も魔法が使えないしなぁ、子供たちは私達の後方で待機しててよ、マリアちゃんは魔法が使えるよね? 万が一の事があったらその魔法で巫女ちゃんやジェシカちゃんを守ってあげてね」

「は、はい」


マリアは行き成りの指名に戸惑いながらも服にしまっていた杖を握り出し、構える


「敵はそっちに居ませんよ」


ジョンにそう指摘されて顔を赤くする


「さぁ、来るぞ、全員準備はいいかい?」


前衛にはジョン、メイヴィス、カランダーン

後衛にはマリア、ジェシカ、ネルヒム

その陣で敵を迎え撃つ




 「カランダ~ン君が直接来てくれるとは思わなかったよ、君がそこまで人間に興味がある奴だとは知らなかった」


ジョン達の目の前に現れたのは宝石が散りばめられた白い仮面を被った男、その後ろには部下であろう五人の人間が立っている


「久しぶりだね、ザッラー、やっぱり君が犯人だったんだね」

「う~ん、ボクに目星を付けていたという事はこの結界の事も予想していたって事でいいんだよね? 予想していたなら臆病者の君が何の対策もしない訳がない……助っ人でも呼んだのかな?」

「どうかな?」

「まぁ、でもその助っ人はまだ到着していないようだけどね! してるならとっくに結界を破って逃げてるだろうしね! あぁボクは幸運だなぁ! 流石神!」


ザッラーと呼ばれた神は忙しい神で踊りながら喋るのだ


「相変わらず騒がしいね、君」

「で、そこに居る見慣れない服を着た君が異世界人だね」


ザッラーはジョンを指差す。


「どうも」

「久しぶり、元気そうだね」


ザッラーの後ろに立って居た男がジョンに手を振る


「何だい? 君達知り合いだったのかい?」

「えぇ、そうですよ、ザッラー様、彼は私の友だ」

「俺は一度もお前を友だと思った事は無いぞ、なんせ俺はお前を殺そうと元の世界でお前を探し回ってたんだからな、”ジャック”」

「怖いねぇ、君のお友達は」

「ふふふ、怖いでしょう? 実際怖いんで気を付けた方が良いですよ」

「へー、君がそこまで言うのは珍しい、少し楽しみだね」

「で、君はこの世界では何と名乗っているんだい? ジョン・ドゥ? ツァーリ・ボンバ? タロウ・タナカ?」


とジャックはジョンに質問する、何故こんな事を質問したのかと言うとジョンは元の世界ではコロコロと自分の名前を変えて生きていたからである

とある国ではポピュラーなジョン・ドゥ等の名前を使い時にはマサカ・インディアン等悪趣味な名前を付ける事も多かった。

そしてまた別の国では山田 太郎から始まり次には忍者 侍になり次は天ぷら 寿司、最後には第六 天魔王と名乗っていた。

彼に名は無い、普通なら帰るべき本名と言う名の家があるのがこの男にそれは無かった。だからその場でてきとうに思い付き口に出した名前がこの男の本名となる

彼がこの世界で名乗っている名前は……


「ジョン・ラムだ」

「また変な名を付けたね」

「俺は気に入ってるんだがな」


お互い睨み合う


「あ、言って置くけど私は戦うつもりないよ、だってこの通り私には片手が無いからね、君と戦っても勝負にならない、戦うのは彼等だよ」


そう言いジャックは後ろの四人を見る


「私に復讐したくば彼等を倒す事だね、ジョンそれともラムと呼んだらいいかい?」

「ジョンで良い、まぁ、待ってろよ、すぐに行ってやるからよ」

「楽しみにしてるよ」


そう言いジャックは後ろに引いて行く


「君たちの感動の再会も終わったようだし、そこの子供達退かしてさ戦おうか?」

「……ふーん、本当に戦う気なんだ? 君、どうなるか分かってる? ここで勝ったって君は逃れられず最後には裁判で裁かれる事になるよ、今大人しく引くと言うならこの事は黙ってて上げるんだけどなぁ?」

「ボクは最初から無事でいるつもりは無いよ、最初から裁かれる覚悟ぐらい出来てるさ、ボクは退屈しちゃってね、このまま現状が続くぐらいなら裁かれた方がマシさ、その方が楽しそうだしね」


カランダーンはため息をつき


「何言っても無駄そうだね」

「その通り、さぁ、始めよう! 諸君! 子供達に手を出す様なつまらない事はしないようにね」


ザッラーがそう言うと後ろの四人がジョン達に向かって歩き出す。


「よっしゃぁ! 暴れるぜ!! そこのジョンとかいう奴! 相手になれ!!」


とジョンの事を指差す大男、だが普通の男では無い、全身に狼の様に毛が生えており顔も狼の様になっている、片手には斧を持っており眼には闘志が燃え滾っていた。

そんな男を見てジョンは驚く、当然だろう彼はあんな生き物を初めて見たのだから、そこでカランダーンに質問をする


「あいつは何だ?」

「獣族だね、見たのは初めてかい?」



「そんな力むなよデッチェ、暑苦しいぞ」


そう獣族の隣で不機嫌そうな顔を浮かべているのは両目に眼帯を付けている青髪の男、腰に刀を携えている


「これから力を合わせて戦おうという時に喧嘩なんてしないでくださいな」


水色の長い髪を携えた女性がそんな二人を優しい瞳でそう諭す。


「主よ、御守り下さい……」


と抜いた剣にキスをする白髪の女性

そんな四人がジョン達に向かってやって来る

徐々にジョン達に迫る四人の敵、獣族のデッチェと呼ばれた男は最初からジョンしか見ていない


「ありゃいい男だぜ、あの男の眼を視れば戦闘経験豊富なのは分かるしな! よっしゃ! 燃えて来たぜ!!」


斧を両手で天に掲げ雄叫びを上げるデッチェ

迷惑そうな顔をして耳を塞ぐ眼帯の男


「勘弁しろよ……」


そんなデッチェを見てジョンも顔が引き攣っている


「俺はあんなのと戦わなきゃならんのか?」

「頑張ってね、私は神だから人間を攻撃する事は出来ないけど盾になる事は出来るからね、まぁ「ここだ!」と思った時に飛び出すよ」

「うげぇ……」

「そんな顔をするなよ! ジョン!!」

「何で俺なんだよ」

「お前が”いい男”だからさ」

「おえぇ、やめろよ、そっちの趣味は無い」

「ククク、さぁ! やろうぜ!」


デッチェがその大きな斧でジョンに襲い掛かる

それを避けナイフで斬りかかろうとするが眼帯の男に刀で阻止される


「速いな、お前」

「やっぱり、俺が見込んだだけあるな!!」


デッチェがジョンに向かって大斧を振る

それをメイヴィスがデッチェに飛び掛かる、そしてメイヴィスがデッチェの息の根を止めようとするが水色の髪の女性が水魔法でメイヴィスを吹き飛ばそうと杖をメイヴィスに向けるジョンは眼帯の男の相手をしながらも震えた手でナイフを水色の髪の女性に投げるそれを当たる直前に祈っていた女が剣でナイフを叩き落とす。水色髪の女性の水魔法は無事発射されメイヴィスは吹き飛ばされる

 

「ぐおっ!」


カランダーンのすぐ傍に飛ばされる


「あ~あ、情けないね、メイヴィス」

「面目ありません……」


メイヴィスが戦線に復帰しようとする、ジョンは三人の敵の猛攻を何とか躱して生き長らえている状態

眼帯の男の速い斬撃に加え力強い一撃を入れて来るデッチェそれに加え水魔法も飛んでくるのだ。とんでもない状況なのは間違いない

しかしジョンもやられてばっかりという訳にはいかない避ける動作の中に攻撃を入れる、どういう事かと言うと例えば相手の攻撃を側転で避けた時に靴に仕掛けているナイフを出し、足で攻撃を繰り出すのだ。相手は攻撃が来る訳がない所で攻撃が来るので対応できず攻撃を喰らってしまうのだ。

実際眼帯の男の右手にこの方法で傷を付ける事が出来た。


(ぐっ!? こいつ……まさかこの状況で攻撃を仕掛けて来るとは思わなかった。やられたな、利き手を潰された……)


そう右手は眼帯の男の利き手、一対一の勝負なら勝負は決まっている


「クソ!! お前とはサシで殺り合いたかったぜ!! こんな状況でお前と出会ってしまった事が悔しくて堪らない……!」


そう言いながら斧を振り回すデッチェ


「気色悪い事を言うなよ! 狼男!」

「待たせたな! ジョン!!」


そこでようやくメイヴィスが戦線に復帰する、メイヴィスは己の爪を伸ばし水色髪の女性に斬りかかろうとする、がそこは白髪の祈りの女性に止められる

そこで何回かメイヴィスが白髪の女性に攻撃を繰り返すが全く通用しない


「貴方の太刀筋とても汚いわ……それではその手に宿った貴方の主も泣いている」

「何を訳の分からない事を……!」


メイヴィスは本来、魔法を主体にして戦う吸血鬼、なので慣れていない肉弾戦を主体にしてしまうと一気に戦力がダウンしてしまう

簡単にいなされるメイヴィス


「見るに堪えないわ」


そう言いさっきから反撃して来なかった。白髪だがそこで一太刀を入れる、その一撃はメイヴィスの両手を切断する、両手から吹き荒れる大量の血

飛び散る返り血は白髪それに水色髪の女性にまで付く

勝負あった……普通ならそうである、両手を落とされれば勝負は終わる、だがメイヴィスは違う彼女は吸血鬼なのだ。


「付いたな……」

「……?」


メイヴィスのその一言の意味が分からなかった白髪だが次の瞬間その意味を理解する

水色髪と白髪に付いたメイヴィスの返り血が形を変え刃の形に成り二人の首や胴に向かって走る、行き成りの事態それに血の刃は自分の首元すぐ近くで発射された。避ける暇は無い、一切、貫く血の刃


「な……!?」

「驚いているな? 此処では魔法を使えない筈とな……不思議な事もあるものだな?」


何故彼女は使えるかと言うとこれは魔法ではない、これは彼女の自分の血を自在に操れるという彼女の特異体質なのだ。







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