満天の空
綺麗にベッドメイキングされた白いベッドその隣には木製の茶色い椅子が立っており、その反対側には小さな四角形の質素な机、上には羽ペンが置いてある
誰もが質素な部屋だという感想を抱くであろう部屋の中心でジョンは逆立ちしたまま両手でリズムを刻みダンスを踊っている、彼は暇なのだ。
そんな楽しいダンス教室の最中に無粋にも扉をノックする輩が現れる、正体はマリア、ジョンはダンスを中断し扉を開く、足で
「きゃ! 何!? 何で逆さなの!?」
「頭に血が上る感覚が大好きでね、マリアお嬢様もやります?」
「やらないわよ……」
呆れた表情でジョンの顔を見下すマリア
「で? 何の用です?」
「別に顔を見に来ただけよ」
「俺の顔が恋しくなったんですか?」
「違うわよ!」
「そうなんですか? まぁこんな所で立ち話もなんなんで中へどうぞ」
そう言われたマリアは失礼するわよと言い、ジョンのベッドにペタンと座る、その隣にジョンはドンと座る
「で、どうしたんですか?」
「お父様から聞いたの貴方の事、お父様のお仕事をお手伝いしたんですって?」
「手伝いと呼べるものではありませんよ」
マリアは片眉を上げ
「貴方が謙遜なんて止めなさいよ、似合わないわよ」
「そうです? じゃあ止めます、俺の天才的手腕でマリアお嬢様のお父様のお手伝いをさせて頂きました。どういたしまして、どうも」
「……そこまで言えとは言ってないわ」
「失礼、加減が分からないもんでしてね」
「まぁ、いいわ、それより貴方、私の為にお父様のお手伝いをしたと言うじゃない、何でそんな事をしたの?」
ジョンはマリアの眼を見つめ沈黙が流れる……喋りだす
「お嬢様、勘違いだ。俺はマリアお嬢様の為にやった訳じゃ無い」
「嘘よ、だって明日の私の誕生日にお父様が手が空くように貴方が頑張った。とお父様が言っていたわ」
お喋り野郎めと内心ジョンは思いつつ
「じゃあアーロック様の勘違いでしょう」
とジョンが言った時、マリアがジョンに行き成り抱きつく、ジョンは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で自分の身体に抱きつくマリア見る
「……ありがとう」
そう言ったと思うとジョンから一瞬で離れ稲妻の如く部屋から消え去るマリア、部屋には唖然としているジョン一人……半開きになっている扉から冷たい風が入って来るその冷たい風に当たりジョンは正気を取り戻す。
「何だったんだ……? 一体」
何でジョンに抱きついてしまったのかしら? 普段の私ならあんな事しない、お父様とお母様と一緒に明日出掛けられるという喜びで私、おかしくなってしまったのかしら? そうよ、そうに違いないわ、お礼を言おうとしただけなのに何故か抱きついてしまった自分の行動に自分で混乱する私
訓練場の中央で座り私は空を見上げる、空では能天気に浮かぶ星々いつもは綺麗だとか思う所だけど今は何処か憎らしい、あんな所に浮かんで何を考えているのかしら? などと意味の分からないいちゃもんを付け始める私、私のイライラは収まらない、見てなさい、今驚かせてやるんだから!
立ち上がり、空に向かって星に狙いを定め小石を投げる、私の真上を飛んだ小石はそのまま真っ直ぐ私の頭目掛けて落ちて来て、当たる
私は「きゃふ!?」という悲鳴を上げその場で頭を押さえながらしゃがむ、とても痛い
「……マリアお嬢様何やってるんですか」
聞き覚えのある声が聞こえる、当たり前である、さっきまで話していたのだから顔を上げるとそこにはジョンが立って居た。
「なんでもないわよ」
「そうですかね、座ってボーと星を眺めていたと思うと行き成り立ち上がり空に向かって石を投げる……まぁ訳の分からない事をしてみたくなる気持ちは分かりますがね」
そう言葉で言われると自分のした行動の異常性がよく分かる……何やってるんだろ私
「星に少し苛立っただけよ」
何を言っているんだ
「それで空に向かって石を? 成程、何も喋らぬ星に苛立ちを覚えるとは流石我がマリアお嬢様スケールが大きい」
「馬鹿にしてるでしょ?」
「そんな滅相も無い」
もう一度空を見上げる今度はジョンも一緒に
「前にも言った様に俺に礼は必要ありません」
空を見上げながらジョンがそんな事を言う
「あなたに命令される謂れはないわ」
だって私は貴方の主人だもの
「それもそうでしたね」




