良い人悪い人
次の日の昼だ。ジョンが行動に移ったのは
ジョンは先ずアルフ家の家に向かう、自分の身分の証明の為にエルと共に向かう
アルフ家の玄関前まで行き木製の扉を優しく叩く
そして「はい、どなたでしょうか?」という声が扉越しに聞こえたので答える
「領主の使いです」
と
そして嘘を付いた甲斐もあり、扉は開く、開けた主は黒髪の女性
「何か手掛かりが見つかったんですか?」
アーロックは前に一度この家に調査に向かって居た
「いえ、何も、だからもう一度この家の調査がしたくて」
「は、はい、宜しくお願いします……」
そう言って家に上がるジョン達、女性に案内されてベット三つが置いてある寝室の様な場所に案内される
「ネックレスは此処にあったんです」
アルク家の家宝というのは赤い宝石が光り輝くネックレス、それは寝室にある化粧台の引き出しの中で大切に保管されていたと言う
「で? それがいつの間にかに無くなっていたと?」
「えぇ、つい二日前の事です……」
女性は何処か暗い
「犯人に心当たりはありませんか?」
「いえ、全くネックレスの隠し場所を知っているのは私の家族ぐらいしか居ませんし……」
「詰り、家族が怪しいって訳ですね」
「!? 私の家族を疑っているんですか!?」
「家族しか居ないと貴方が言ったんだ」
「私の家族が犯人なんて、そんな訳ありません!」
女性は激怒する、内心冷や汗を搔き始めるエル
「何故あり得ないんです?」
「え、何故って……」
「理由はもしかして家族だから? てだけですか?」
「だけって……!」
「ま、まぁまぁ、アリエナさん、御免なさいこの人ちょっと人の気持ちとか考えられない人なんで」
憤怒している女性の名前はアリエナ・アルク
「……お茶を持ってきます」
不機嫌そうにそう言ってアリエナは部屋から出て行く
「どういうつもりですか? 先生」
「あの怒り方彼女は犯人じゃなさそうだな、エル此処の家族構成は?」
「質問の答えになっていませんよ? 何故あんな事を言ったんです?」
エルはジョンの横暴なやり方に珍しく苛立ちを覚えていた。
「彼女を怒らせて正常な判断をさせなくする為と言えば満足か? 人は感情が昂ると簡単にボロを出してくれる」
「……最低、探偵気取りですか?」
「ワオ、それはチョーショック心に来たぜ、それはさておきお前はあの女性を宥めろ、感情が昂り過ぎて会話にならなくなっちゃ困る」
「先生に何言っても無駄そうですね……」
「そういう事、一応化粧台を調べてみるかな、あぁそうだ、家族構成は?」
「アリエナさんにその夫のザラさんそしてその娘さんのネネちゃんの三人です」
化粧台とその周辺を調べ始めるジョン
その横でアリエナにどう話し掛けようか頭を悩ませるエル
「この引き出し鍵は掛からないみたいだな、て事は誰でも取れた訳だ。子供だろうがなんだろうがな」
「……」
何の反応も返さないエル
「エル、お前は夫と娘の居場所をアリエナから聞き出してくれ、俺じゃあ絶対答えないだろうしな」
更に気が重くなるエル
「お茶を持って来ました」
とジョンとエルにお茶が入ったコップを渡すアリエナ
ジョンがコップの匂いを嗅ぎ始める
「毒でも入ってるんじゃ無いでしょうね?」
「入ってる訳無いでしょう!? それを飲んで早く出て行って下さい!!」
アリエナは今にもジョンに襲い掛かりそうな剣幕だ。
ジョンはそれに無反応を返しエルがそれに怯える
ジョンは渡されたお茶を一気に飲み干し、どうもと一言言い残し部屋を後にする
残されたのはエルとアリエナのみ、吐き出してしまいそうになる程悪い雰囲気の中
「い、いい天気ですね……」
と引きつった笑顔で言う
そんな状況でも子供と夫の居場所を何とかエルが聞き出し、まず森で木を切っているであろう夫の元へ向かう
「どうも、こんにちわ」
「こんにちわ……貴方は?」
「領主の使いです。盗まれたネックレスについて聞きたくて伺いました」
「あぁ、どうも、それで何か?」
「家族さんの中でネックレスを盗みそうな人に心当たりはありますか?」
「……それは私の家族を疑ってるって事ですか?」
「嘘言っても仕方ないと思うんでハッキリ言います。その通りです」
「私の家族には盗みを働くようなのは居ません、領主様にもそれはハッキリと言いました」
「絶対に?」
「えぇ絶対にです」
「一応聞いて置きますが盗まれた時貴方はずっと此処で木を切っていたんですか?」
「えぇ、そうです」
「ネックレスの保管場所について誰にも話していないんですよね?」
「はい……でも家族は関係ありません」
「分かりました。では……浮気してます?」
「は?」
「いやだから浮気を――」
頬を摩りながら湖に向かうジョンそれにそんなジョンを冷めた目で見るエル
「流石木こりすごい腕力だな、まだヒリヒリしやがる」
「本当、何考えてるんですか? 行き成りあんな事言って……殴られても文句言えませんよ」
「あの男怪しいぜ、何か隠してる」
「ザラさんが犯人と言いたいんですか?」
「どうだろうな、ネックレスを盗んだかどうかは分からねぇ」
「……何で浮気をしてるか? なんて聞いたんですか? 怒らせる為?」
「それもあるが、あの男が持っていたハンカチを見たか?」
「確かハンカチで額の汗を拭いてましたね、あれが何か?」
「正確に言うと花柄のハンカチ、しかも刺繍入りZ・Lそれともう一個D・Tと刺繍されていた。
恐らく名前のイニシャルだろうなZ・Lはザラ・ラルクのイニシャルでもう一つは何だ? D・T少なくともラルク家の人間は関係無いだろうな、あんな花柄の刺繍入りハンカチをプレゼントする奴なんて妻か恋人しか居ない、だが妻は関係無いと来ると残るは恋人この場合は愛人と言った方が良いか? まぁそんな事はどうでもいい」
「つ、つまりそれであんな事を言ったんですか……?」
「楽しかったろ?」
次は子供のネネに会いに村の中央にある湖まで向かう
そしてそこで湖で遊んでいる黒髪の少女に出会う、彼女がネネだ。
「よぉ、嬢ちゃん何してるんだ?」
「え、だ、誰……」
ネネは小さな声で怯えながらジョンに問う
「俺はジョンこの村の領主の使いだ。お嬢ちゃんの家の盗まれたネックレスについて調べている」
「ヤッホーネネちゃん、こんにちわ」
エルの顔を見た瞬間ネネの顔に笑顔が戻る
「エルお姉ちゃん、こんにちわ」
笑顔になっても声は小さい
「嬢ちゃん、ネックレスについて何か知らないか?」
「うん、知らないよ」
「本当に?」
「う、うん」
「へ~嬢ちゃんが盗んだんじゃないの?」
「え!? 違うよ!」
今まで小さな声だったネネが行き成り大きな声で否定する
「おっと、何だ? 今のは何で行き成り大声を出したんだ? 動揺したな嬢ちゃん」
「えっ」
「ちょっちょっと待って下さいよ! ネネちゃんを疑ってるんですか!?」
「この反応を見たら誰でもそれを疑うだろう、お前もそうなんじゃないか?」
「ボクは疑ってなんかいませんよ!」
「じゃあお前はこの子の弁護をするんだな精々頑張れよ、俺は攻める」
ジョンとエルがネネを挟んで睨み合う
「ネネちゃんは何もしてません!」
「嬢ちゃん、今正直に話せばお前が怒られないよう俺がどうにかしてやる」
「何言ってるんですか!」
「しかしチャンスは今だけだ今話さなきゃ全部お前の所為って事になる、俺がそうする、どうする? 嬢ちゃん?」
「そんな事言っても無駄ですよ、ネネちゃんは何も知らないんですから、ね?」
そう言ってエルはネネの顔を見る……ネネの眼には涙が有った
「え? ネネちゃん、どうしたの?」
「本当にどうにかしてくれるの……?」
「あぁ、どうにかする、真相を話してくれよ」
「ほ、本当にネネちゃんが盗んだの?」
「盗む気なんて無かったんだよ? ちょっと借りただけなんだよ?」
「その借りただけのネックレスは今何処に有る?」
するとネネは顔を伏せ、湖を指差す。
「湖に落としたのか? マジ?」
「ワザとじゃないんだよ? みんなにあの綺麗なネックレスを自慢しようとしたんだ……そしたらミルルちゃんがネックレスを私から取って湖の中に落としちゃったんだ……」
「まさか、湖で遊んでたんじゃなくてネックレスを探していたのか?」
ネネは黙って頷く
それを見届けた後湖をまじまじと見つめるジョンとエル
「中には危険生物とか居ないのか?」
「居ないと思います。子供達も遊んだりしてますし……」
「ネックレスには赤い宝石が入ってるんだよな?」
「うん」
「エル、お前は浅瀬を探せ、俺は……潜る」
エルがそれを聞いてジョンを止めようとするが時すでに遅し、ドボンという音と共にジョンは湖の中に消える