湖の魔女
「何故か俺の言う事を聞かなかったアーリンは放って置いて何処にアルルとその変態医師が居るか推理してみるぞ、先ず最初に言って置くこの本には手掛かりになりそうな事は書いて居なかった。この部屋に何か無いか……」
ジョンは部屋をぐるりと見渡す。すると一つの絵画に目が向いた。
「これは?」
シルカとアーリンが絵画を見る
「これは……此処から東に行った所に有る、湖よ……」
「ふーん……彼女が書いたのか?」
「さ、さぁ……見て! 此処にサインが書かれているわ」
シルカが絵画の右下を指差す。
そこには筆記体でR・Aと書かれていた。
「ルーネ・アラウント……恐らく彼女の名前のイニシャルよ……」
「自分で描いた絵を自分の部屋に飾っているのか……余程ここが好きなのか、思い出深いのか……彼女が一番この村で信頼している人間は誰だ?」
「村長だと思うわ……」
「誰かが匿って居る可能性も有る、デッチェとアーリンとラライカルは最初に村長の家から順にこの村の家を訪ね歩け、俺はこの湖に行く他の二人は自分の家に待機良いな?」
「一人で大丈夫なのか?」
「当たり前だろ、お前等じゃ無いんだ。それとそのルーネの特徴を俺に教えてくれ」
「分かったわ、ルーネは白髪でゆったりとしたたれ目の女性よ」
それぞれがジョンの命令通り動く、ジョンが自分の所に誰も人員を割かなかった理由はシンプルで根拠が薄いからである、絵画一つでは貧弱過ぎるのだ。家に匿って貰って居る可能性の方が高いなので殆どの人員をそちらに回し自分一人で湖に向かう事にしたのだ。
ジョンは森の中に入る案内は居ないが川を追えば湖に着く筈なのである
走るジョンそして湖に着く
しかし案の定そこには誰も居ない筈だったのだが……湖で身体を洗って居る老婆の姿が有った。
「……よぉ、お元気かい? おばあさん?」
ジョンは彼女に声を掛ける
すると老婆はうら若き女性の様に胸と股間を両手で隠しジョンの方を振り向く
「……止めてくれよ、確かにこんな時に急に話し掛けたのは悪かったが別にアンタの裸なんざ見たかねぇよ」
「随分と無礼な男性の様ね貴方……今着替えます。見ないで貰えるかしら?」
「駄目だ。俺の目の前で着替えな、さっきも言った様に別に俺はアンタの裸体には興味無いぜ」
「……信じられない……」
老婆は観念しジョンの目の前で湖から出て身体を拭き服を着た。
「行き成りどういうつもりなのかしら? 何故こんな事を?」
彼女は間違いなく怒っているがその口調は穏やかであった。
「実はこの近くの村で少女が誘拐されてね、その犯人の特徴が老婆で有るという事なんだ。つまり俺はアンタの事を疑って居るという訳さ、分かるだろ?」
「何よそれは! ふざけないで! 私がそんなふざけた事をする訳が無いじゃない!!」
「それは俺が判断する事だお前がガヤガヤ言う事では無い」
老婆は腕を組みジョンを見て居る
「……どうやったら貴方の信用を得られるのかしら?」
「裸踊りでもしてくれたら信用するかもな」
「本気で言っているの?」
「まさか、本気にするなよ、冗談だ冗談、そうだなぁ、先ず最初にアンタの名前を聞いて良いか?」
「シルルク・サッチャーよ」
「偽名じゃ無いよな?」
「なんで私がそんな事をする必要が有るの?」
「……確かにな、シルルクさん、ここら辺にアンタと同じぐらいの年齢の老婆を見なかったか?」
「いいえ、見て居ません、とっとと何処かに言って頂戴」
「そんな怖い顔しなさんな、分かったよ少女も見当たらないしな……たくっ怖ぇばぁさんだこと……」
そう言ってジョンはその老婆の前から姿を消し森の中へ消えて行く
それを確認し、物音が聞こえなくなった途端に老婆は走り出し宝物の元まで向かう、その宝物とは少女である、彼女は震えている、口には布が巻かれているので叫ぶ事も出来ない、両手両足は勿論縛られている
「ごめんなさいね、失礼な奴に足止めされてね、でももう大丈夫よ、もう貴方は安全よ」
そう言って老婆が少女の頭を撫でようとした時
首元を何者かに捕まれ木に叩きつけられる
「よぉ、また会ったな、糞ババァ……」
居たのはジョン・ラムで有った。




