厄介な女
ジョンは何の準備もする事が無いので広場で胡坐をかいている
空を見上げて雲が流れる様を観察していると誰かの視線を感じる、ダイヤである
「俺のストーカーでも始めたのか?」
「い、いや……どうも君の様子がおかしいと思ってな……」
ダイヤもジョンの隣に座る
「シーナの事だが……」
「君に告白をしていたな、愛の」
「それも有るんだが問題はアイツがこの村で住み難くなっているという事だ」
ダイヤが目を伏せる
「私も色々考えてはいるんだが……どうにも良い案が浮かばなくてな、あの子達はまだ子供だ。妥協も許容も上手く出来なくて当然なのだが……困った」
「あの告白だってこの村を出たいから無理矢理、恋をした事にしただけだろうしな」
「……君と一緒に行きたいと言って居るんだろう?」
「あぁ、言ってたなそんな事、だが俺は反対だ。あの女の面倒を見る気は無い」
「……そうか……」
うーんとそう二人が悩んでいるとあっという間に三十分が経って居た。
そこでジョンが一つの事を思い付く
「俺はとある館で働いている、その館はとある領主の館で館のすぐ目の前にある村を治めている、そこには勿論子供は居るし大人も居る、普通の村だ。あの村でなんとか働ける様に俺が取り計らう」
「そこにシーナを……?」
「あの子は別に大人に対してそこまで強い抵抗意識は無いんだろ?」
「なるほどな……彼女に聞いてみよう、旅支度も済んでいる様だしな」
広場に旅支度を済ませたニーナ姉妹、ドルグノそれにシーナが現れた。
「わお、俺の言う事は全く聞かなそうだなアイツ」
ジョンに以前、愛の告白をしたセルフィというエルフの娘もシーナと同じ様な言葉で告白して来たがその中身はまるで違う、ジョンの拒否を素直に聞き入れ号泣したセルフィ
しかしシーナは違う、ジョンの言った事を受け止めずそれに反した。
素直に厄介な女だとジョンは思った。
そしてその厄介な女は二人に増える
その女の名はカランダーン、彼女が行き成りジョンの目の前に現れたのだ。
「やぁ」
「うっひょー、行き成り現れるの勘弁」
「カランダーン……!!」
ダイヤはカランダーンに向かって敵意殺意を剥き出しにする
「久々だね、えっと君の名前はメイヴィスの御付きのダイヤモンド……だったけ? 怖い顔しないでよ、今回は大事なご主人様を奪う様な事はしないからさ」
「……」
「でさ、此処はなんなの? こんな村あったっけ?」
「この女が作ったらしい」
「ふーん、慰めの為にかい?」
「なんだと!!」
ダイヤモンドがカランダーンの胸ぐらを掴む
「何か私間違った事を言った?」
「言った事が間違ってるか分からんが言う場面を間違えてるのは間違いないな、こんな所で喧嘩したら俺どころか此処の子供達まで消し炭だぜ?」
ダイヤはそれを聞くと悔しそうにカランダーンの胸ぐらを突き放す。
「相変わらずの良い子ちゃんみたいだね、君メイヴィスの時もメイヴィスの言う事をすんなり聞いてたよね?」
「黙れ、喋るな癪に障る……」
ダイヤの瞳にはさっきまで有った優しさの欠片も無くなっていた。
「散々挑発してたがこいつ俺の命の恩人なんだけど」
「ふーん、そうなの」
カランダーンは一切興味なさそうに生返事を返す。
「うわぁ、嫌な女って感じだぜ? オタク」
「だって嫌な女だもん、良いんだよそれで、それにしたって驚いたよ、私が戻ったら君が消えた! と騒がれてるんだもん、必死に探したんだからね?」
「そりゃありがとよ」
「はいこれ」
カランダーンがジョンに緑色の宝石が通してあるネックレスをジョンに差し出した。
「なんだこれ?」
「これを着けてれば私とパーラ以外からの転移魔法は無効化されるよ、それが例え神のモノでもね、つまり今回の様な事にはならないという事だね、これを私が必死に作っている時にまさか誘拐されるとは思わなかったけど……」
「いやー嬉しいね、全く、これは俺が着けても大丈夫なのか? エラーでおかしくはならない?」
「大丈夫、その為にそのネックレスの緑色のその石に丈夫なガラスでコーティングを施したんだからね、直接その石にさえ触れなければ大丈夫、多分」
ジョンがネックレスに触れ持つ
しかし石が依然として緑色に輝いているのでカランダーンは安心する
「良かった。変異していないみたいだね、後それどんな時も外さないでね、これは君の命綱でもあるんだからさ、今回みたいなのはもう御免でしょ?」




