起床
「おい、ニーナ姉妹、仕事だ。この娘を警護しろ」
「は!? 何よ! 私達に命令できる様な立場だと思ってるの?」
「龍の威を借る羊と呼んでくれ、従わなきゃダイヤがお前らの顔を腐らす……いや、もう腐ってるか、ハハッ」
その後ジョンの頬に鉄拳が一発入る
「また負傷箇所が増えたぜ……」
と切れた唇から出る血を抑えながら言うジョン
「自業自得よ」
「で? 引き受けて貰えるのかな? お嬢さん達」
「ふん、まぁ良いわ、引き受けて上げる」
「そりゃどうも」
とジョンがニーナにシーナを引き渡そうとするがシーナはジョンの手から手を放さなかった。
「おい、何やってんだ。放せ」
「ん……いやだ。お兄さん一緒に居て欲しい」
「あら、モテモテじゃない、貴方」
「勘弁しろ、この美人のお姉さんの方が良いだろ?」
「お兄さんが良いの」
「ま、私達に出来る事はなさそうね」
「おい! 何処に行く! 待て!」
ニーナ姉妹はジョンの元を去って行く
「何考えてるんだ? シーナ」
ジョンに抱きつき泣き始める
彼女の表情をあまり変化が無く、あの様な事があっても何も感じて居ないと勘違いされ易い子供だが実は違う
恐怖も痛みもしっかり感じている、しかしそれを心の奥に隠してしまうのだ。誰の心配も掛けないように……
ジョンの事を甘えられる人間だと信用したシーナは今ジョンに甘えている
「おいおい、嘘だろ? 堪忍やで……」
その場で呆然とするジョン
その頃ドルグノはこの村にやって来た不審者が寝ているベッドの近くで彼の見張りをしていた。
そして男の眼が覚める
男はゆっくりと揺らぐ意識の中まぶたを開き部屋を青色の眼がギョロギョロと見回す。
「やぁ、お目覚めの様だね」
声のした方に目を向ける、するとそこには初老のガタイの良い男が立っていた。
「どうだい? 痛い所とか無いかい? 後お腹空いてる? 喉は渇いていない?」
「此処は……何処だ」
そういえばこの村の名前を聞いて居なかったと思い出すドルグノ
「ん~村だよ、ちょっと変わってる村だね」
「変わった村……子供だけが住む村か?」
ドルグノは眉を顰める
「何で知ってるんだい?」
「……そんな事は知らなくていい、私は此処のあの黒い龍に用事が有る、会わせろ」
上半身を起こす男、ドルグノを睨みつける
「要件は?」
「お前に関係無い」
「その目を視れば分かるよ、穏やかな事じゃ無いんでしょ? 意地悪言わないで聞かせてよ要件でなきゃ会わせられないなぁ」
「俺の邪魔をするのなら……殺してやる」
「武器も無いのにかい? 正気だとは思えないね、止めて置きなよ」
ドルグノの腰には一応、剣を差している、しかし彼には剣の心得は無い
脅しの道具でしか無いのである
その剣に手を掛け、脅すドルグノ、しかし彼には扱えない
「素直に僕に従いなよ」
「嫌だね」
男は立ち上がる
(うわぁ……不味い)
見張りなんてしなければ良かったとドルグノは後悔しているのであった。




