最悪の小悪党達
ジョン・ラムの左目を食い入る様に睨みつけるジャック
それを視たジョンは
(奴は俺の左目の謎を解こうとしている……もし解かれたら、奴がどんな作戦を思い付くかその作戦に俺が対処出来るか分からない危険過ぎる、解かれる前に何とかしなければ……左目だけのダメージじゃ済まなくなる、そう考えて間違いないだろう)
「君はもしかして二対三だと思って居るのかい? 私がそんな”公平”な人間だとはまさか思って居ないだろうね?」
「お前の性格の悪さは俺に似て最悪だって事ぐらい十分承知している、その言い方だとまだお仲間が居るみたいだな」
「仲間? クククッ気が付かないのかい? 私の仲間は人を操る魔法が扱えるんだよ? 此処まで言ったら分かるでしょ? 私の言いたい事」
「ナサル達を操って俺達を攻撃させるってハッキリ言ったらどうだ? 面倒臭い奴だ」
「そりゃすまなかったね、さてそれでは、ニーナちゃん、頼んだよ」
(正直これは使いたく無かった。三人を同時に操作するには大量の魔力が必要になるからニーナちゃんは持って一分ぐらい、一分でケリを付けなくてはジョンに負けるだろう)
「貴方達、ジョンを殺しなさい!」
そうニーナが命令するとナサル達はジョンに向かって動き出す。
「そ、そんな!? ジョン!! 逃げろ!!」
「何処に? 逃げ場なんて無いぞ」
「と、兎に角! 逃げろ!!」
「逃げて下さい!! ジョンさん!」
「い、嫌だ……動きが止まらない……」
そんな彼女達を視ながらジョンは思う
(ジャックを含め四対一か……さて、問題はその操作魔法とやらでナサル達に魔法を使わせる事が出来るか? 出来ないか? だ。出来るならニカエルに接近は出来ない、ナサルにも触れられたらアウトだ。カーナはどうだ? 治癒魔法だから問題ない……と言いたい所だが俺には”エラー”がある、何が起こるか分からない以上触れられるのは得策じゃない)
「あぁ、そうだ。カーナちゃんはさ、役に立たないから別の役をあげるよ」
とジャックはニーナに目線を送り何かの合図をする
「カーナ、貴方はそこから百八十度曲がって直進しなさい」
するとカーナの身体はジョンでは無く円盤の外の溶岩の海に向かって歩き出す。
「おっと、趣味が悪いね」
「クククッこれで君は私達を相手にしながらカーナちゃんを救わなきゃならない、さて私に勝てるかな?」
「ハンデはこれだけで良いのか? この程度のハンデでよ」
ジョンの表情は崩れない
「強がりは止した方が良いよ、君のすぐ後ろに死が迫っているのは分かっているだろう?」
「死が迫っている?」
ジョンは後ろを振り向く
「何も無いぜ? 幻覚でも見てるのか? クククッ」
ジョンはナイフを構える
「片目が無いからよく見えていないだけだよ」
ジャックもナイフを懐から一刀取り出し、構える
対面する二人、ナサルとニカエルはジャックの両肩に居てジャックと共にジョンに近付いている
カーラだけは断崖へ向かって歩みを進めている
ドルグノはニーナ達に睨まれながらジリジリと距離を縮められている
ジョンの空洞の左目からは激痛
「よく見てみなよ、見えるだろ? ”死神”が」
「クククッお前、焦ってるな? その人を操る魔法、どうやら相当な魔力を使うと見た。そんな長時間は持たない、だからお前は焦っている、当ててやるよ二、三分と言った所か? 図星だろ? その”程度”か」
自信満々そうに放ったジョンの憶測は若干ながら外れている
ナサル達の魔法が解けニーナが全魔力を使い果たし戦闘不能になってしまうまで残り、四十秒程
ジョンが思って居るよりジャックは切羽詰まっているだが慌てず余裕ぶるそうする事で相手を威圧し続けるのだつまりハッタリ、内心は冷や汗でダラダラになっている
そして反対のジョンも同じ、彼は操作魔法が最低でも二分間持つと思って居る、二分も猛攻を耐えれる自信は無くさっきから頭痛が止まらないが取り敢えずハッタリをかます。
ジョンもジャックも双方、小心者で有り、臆病者で有る、豪胆に見せているが何時も悩みの種は尽きないラライクの遺跡の時も二人共なんて事の無いと言った様な顔をしながら涼し気にしている様に周りからは見えていただろうが実は二人共遺跡から出るまで頭痛が止まらなかった、酒を飲んでも心配事が多すぎて酔えない、悩める頭を横にするとその重さで二度と起き上がれ無さそうなのでまともにベッドに横になる事すらも出来ない、人間嫌いなので勿論一生の伴侶を作ろう子孫を残そう相談出来る親友を作ろうなんて思った事も無い、感情が壊れ恐怖は殆ど感じない二人だがそれぞれ生存欲とは別の欲の為に死ぬわけにはいかないので思考を止めることは無い、最悪の小物




