礎
「ニーナちゃんさ、彼女達になんか言ったのかな? 凄い怖い顔してるけど」
「いえ、何も」
ニーナと呼ばれた女性はドルグノと接する時はナサル達に取っていた態度とは変わり腰を低くし言葉も丁寧になる
「またクローン人形とか酷い事を言ったんでしょ?」
「まさか」
「ごめんね、ナサルちゃんにニカエルちゃん、彼女は少し気難しくてね、まぁそれよりさ君達に何故ここへ来て貰ったのかを話すとしようか」
そう言うとドルグノは部下達であろう人物を呼び椅子を五つ用意させた。
「さ、立ち話も何だからさ座って座って!」
椅子を木で出来ている、座ろうとしない三人
「別に罠なんて仕掛けて無いよ、僕は君達にこれからの事を説明する義務があると思って居る」
「誘拐犯が義務を語るだと?」
反抗するはナサル、しかしそんな反抗に怒りを覚えるどころか男は両手を叩き大笑いする
「確かに、ナサルちゃんの言う通りだね、犯罪者が義務を語るなんて筋が通っていない」
「……」
ドルグノは一頻り笑うと笑いすぎで出た涙を拭き取り、笑顔を取り消し無表情になる
「でもさ筋とかそういうのは抜きにして聞きたくないかい? これからどうなるかをさ……」
そう言ってドルグノは語りだす。彼の目的を
「ナサル、君はデリオスノールの研究所出身だよね?」
デリオスノールとは昔エスカルドの王都の近くに有った村の名前、現在は存在しない
「実はあそこでクローンについての研究をしようとしたのは僕が初めなんだ。途中で降ろされちゃったけどね僕が担当したのは一番最初の子を作った時だけ、その最初の子も生まれてすぐに死んじゃったから、この事を知らなかったのは無理は無いよね、あの後態々あの研究所の前任の責任者の事なんて調べないだろうし」
「お前も関わってたのか……」
「初耳でしょ? いやぁ僕もあの研究所が破壊されたと聞いた時は驚いたよ……ま、当然と言えば当然だよね、生き物をまるで道具のように扱って居たんだ殺されたって文句は言えない……僕だってそう思ってるさ、君に罪は無かった」
ナサルは研究所脱出の時、誰も殺さなかった。周りの姉達がナサルには綺麗なままでいて欲しかったので姉達だけが手を汚したのだ。ナサルは何もしなかった。
「ふざけるな! なんだそれは!! 私がそんな事を言われたぐらいで心を開くとでも思って居るのか!?」
「いいや、思って居ないさ、ごめんね気を悪くさせてしまったみたいで」
ドルグノは足を組む
「それでさ、此処からが本題なんだ。今そこに座っている女の子なんだけど、ナサルちゃんは知ってるよね?」
一目見た時からナサルは分かっていた。彼女はサシャ・ネールネーナ、マリアの友人だ。しかしナサルはドルグノの問いには答えなかった。これがこの時この状況で出来る精一杯の反抗
「応えてくれないけど知ってるはずだから話を進めるよ? あぁでもニカエルちゃんとカーナちゃんは知らないか、この子の名前はサシャ・ネールネーナと言ってね、とても無口な子だけど悪い子じゃないんだ仲良くしてあげてね」
ドルグノはサシャの頭を撫でる
しかしサシャは喜びも嫌がりもしない、只々無反応、その様はまさに人形の様
「サシャちゃんはね、ナサルちゃんやニカエルちゃんと同じ人造人間なんだ。でもクローンでは無い三賢者の遺体を全て合わせ生み出したある意味オリジナルの人造人間さ」
「な、なに!?」
「驚いたかい? ナサルちゃん?」
「き、貴様……! あの後もやはり研究を続けていたのか!!」
「王にも知られない様に極秘にね、だから一人生み出すにも多額の費用と時間が掛かったよ……そしてもう既に遺体も無い、全て使い果たしてしまった……でもサシャちゃんには問題があってね、まだまだ完成には程遠いんだ」
三賢者の遺体は各地の研究者によってバラバラにされてしまった。ドルグノが持って居た遺体の一部は一人は右手、一人は左足、一人は頭部の三つ
そしてその遺体を少しずつ研究に使っていたのだがそれも底が着き研究が止まってしまった。
「だから新たな子を生み出す為に君達の身体が欲しかった。カーナちゃんは遠い子孫だからダメかと思って居たけど調査してみたら君も治癒属性みたいだから悪いけど協力して貰うよ」
「協力……? その後に私達を殺すつもりの癖に……」
「ニーナちゃんそんな事まで言っちゃったんだ……まぁでも仕方が無いか……それは事実だしね、今回の実験には君達の脳を取り出す必要が有る、脳を取り出せば……君達は死んでしまう、残念ながらね」
ドルグノが立ち上がる
「この国の未来の為に死んで貰うよ、君達には」




