南門
ジョンは致し方なくクァイケットを連れて行く事に決めた。
「大丈夫なのか? 連れて行って」
不安なのかジェイクはジョンに聞く
「知るか、奴を引き離すのに時間が掛かりそうだったから仕方なく連れて行く事にしただけだ」
「戦闘経験は有るのか……?」
「多少、ハッキリ言って当てにするな、自分を護るのに精一杯だろうよ」
「……マジかよ」
「おい、人の台詞を取るなよ」
「は? 何の話だよ」
ジョンは不機嫌に腕を組み「いや、やっぱ何でもない」と返す。
「今何処に向かってるんだ?」
今までの事を何も知らないクァイケットは今何処に向かって居るのかも分からない
なのでジョンが罵倒を加えながら説明する、苛つきながらも状況を理解するクァイケット
「なんだそれは! 王女の呪いを誰が掛けたのかなんてどうでも良いじゃないか!」
「良くない、この誘拐事件の首謀者の可能性が高いんだぞ?」
「首謀者を探すより、ニカエルを探すのが先では無いのか!? その方が早いだろう!?」
「ニカエル・シフォン、ナサル・パララグ、カーナ・ウルシテッド、ネールネーナ一家、全ての現場を調べて彼等が何処に捕えられているのか分かる手掛かりは捕えた二人の男だけ、しかもその内一人は口を割らない、もう一人はこの計画に詳しく無く何も知らなかった。つまり、”今”役に立つような手掛かりは何一つ見つからなかったという事だ。手掛かりがない今俺達は選り好み出来る程の余裕はない、王女の呪いと誘拐事件が関連しているのならば俺達は首謀者を見つけ出しそいつにニカエル達の居場所を吐かせる」
「そ、そんな事出来るのか……?」
「お前勘違いしてるぞ、するしかねぇんだよ、しなきゃ捕まった奴等は全員死ぬと思え」
ジョンの言葉を聞いてクァイケットの表情は強張る
「そ、そうか……そうだな、ジョン、私も出来る限りの事をするぞ!」
意気込んでいるクァイケットを無視してジョンは先に進む
「お、おい! 無視をするな」
「出来る限りの事はするんだったか?」
「あ、あぁ……」
「じゃあ静かにしろ」
「……分かった」
クァイケットを仲間に加え入れ一行は南門に到着する
「待ってろ、話して来る」
門とは少し離れた場所で待機するジョン達
十分後、ジェイクは南門の警備の責任者を務めている三番隊のハルカル・トーレドウ
「メイヴィス外に出たら研究所の偵察をしてくれ、中で誰かを見つけたら報告を、一人で大丈夫か?」
「問題無い、我に任せてくれ、心配してくれてありがとう」
「感謝しているならもっと腹から声を出せよ、感謝の念が伝わらないぞ」
「ふん、今のは社交辞令だ。心からの感謝では無いぞ、だから腹から声は出さん」
「恩知らず吸血鬼め」
「恩知らずで悪いか」
ジェイクが戻って来る
「門を開けてくれるらしいからとっとと行くぞ」
ジョン達は門を通るその狭間
責任者のニカエルがジェイクに言う
「必ず無事に戻って来てよね、団長ちゃんじゃなきゃ僕の責任になっちゃうからさ」
「その時はその時だ。頑張ってくれ」
「本当に護衛は要らないの?」
「必要ねぇ」
そう言ってジェイク達は草原の奥へ消えて行った。




