協力関係
カーナが攫われたメイヴィスが目を離した隙のことだったらしい、その後カーナを捜し回ったが見つからずジョンに泣きついてきたのだ。
すまないすまない私の所為だ。と唇を噛み締め泣いているメイヴィス、セルフィもショックを受けている様で両手で顔を隠しながら涙を流している
「どうしてこんな事に!? おかしいわよ……こんな連続で誘拐が起こるなんて……」
「その通りですね、マリアお嬢様、此処まで重なればこれは”偶然”誘拐事件が重なったとは考え辛い、誰かが計画的に人を攫っている……それもクローンに関係する人々を」
この場で唯一精神を乱して居ないのはジョンのみ
「ねぇ、ジョン、さっきから言っているそのクローンとは何なの? 教えなさい」
「教えると長くなるので嫌です。どうしても聞きたければローラから聞いて下さい」
「ローラ……」
「ごめんなさい、お嬢様……今その事を話す気分になれないのです……」
ローラはクローンの話をジョンからされてから酷く心に傷を負ってしまったようで今は話す気にも何か行動する気にもならないようだ。
「私は隊長なんだからちょっとやそこらでへこんでいられないとか言ってた奴は何処のどいつだ? しっかりしろ」
「ジョン止めなさい!」
マリアがジョンの発言を咎める
「いえ、お嬢様、ジョンの言う通りです。ジョン御免ね」
「ローラ無理しないで……ナサルは大丈夫よ、絶対に」
マリアは必死に泣きたいのを我慢してローラを励ます。それを察してしまったローラは自分を情けなく思う
(本来なら私がこの子を勇気付けなきゃいけない筈なのに……逆に言われちゃったな……ごめんね……)
マリアの頭を撫でてマリアを抱き上げる
「ごめんなさい、お嬢様……」
「良いのよ、お互い様よ」
マリアもローラを撫で返す。それを見ていたジョンはうんざりした様な顔で
「いい雰囲気の所悪いな、実は今はそんな事をしている場合じゃないんだ。傷の舐め合いは後で頼むぜ」
ジョンは何時もこの調子なので二人共別に腹を立てる事も無かった。
「メイヴィス、拐われたのはカーナだけか?」
「あぁ…‥」
「カーナは三賢者、ローラ・ウルシテッドの末裔……一応クローンの関係者という事になるのか?」
「おい、アスミ隊長が呼んでるぜ? ジョン」
レイがテントから姿を表した。そんなレイの首に腕を掛けてローラ達に声が聞こえない所まで行く
「丁度良い所に来たな、レイ、カーナ・ウルシテッドは誘拐対象だったのか?」
「違うね、あの子が持っていた聖剣は対象だったが彼女自身は違った。ブリーフィングでもカーナの名前は出なかったな、名前が出たのはニカエル、ネールネーナ一家だけだ残りは知らねぇ」
(ローラは誘拐対象じゃなかったのか? いや否定するのは早い、ローラはジェイク元に行かせるべきだろう、いや待てよ……? そもそもジェイクは信用出来るのか……? 奴が態々此処からワルクルス邸まで行ったのはローラ、ナサルを此処に来るように誘導するため? 嫌ないな、ナサルは兎も角、ローラが此処に来ることになったのは完全に偶然、ローラを王都に連れて行こうとする素振りも見られなかった……こんなモノだけでは完全に白とは言えないが……仕方がない)
そうジョンが思考を終えた時丁度その時、騒ぎを聞きつけ多くの騎士と共にジェイクが現れた。
ジェイクはジョンを見ると物凄く不機嫌な顔をして
「げぇ……団長じゃねぇか……」
「てめぇ等……此処でなにしてやがるんだ?」
「ボンクラ君は一から十まで全部説明しないと分からないのか? 仕方がない教えてやるよ俺は一客として純粋に此処のサーカスを楽しんでいた所お前のお仲間に邪魔されて今に至る、分かったかな? それとももう少し噛み砕いて言ったほうが良いか?」
「その必要はねぇ」
「それは良かったよ、で? お前は此処で何が起こったか知ってるのか? それともまた教えて欲しい?」
ジェイクはこの時、ナサルが拐われた事はローラの報告で知っていたがカーナとニカエルの事は知らなかった。サーカステント内でチャンバラ騒ぎをしている奴らが居ると聞いていただけだがジョンに詳細を聞くのは非常に癪なのでレイに聞く
「なんだよ、幾ら悔しいからと言ってそりゃ無いぜ、クククッ」
「サーカスの団員が誘拐されただと……?」
「それと此処に来ていたローラ・ウルシテッドの末裔も誘拐されている、全員三賢者或いはクローン繋がり奴らだ。偶然だと思うか? もしこれが偶然じゃなかったとすればローラも危ない、もしその他にもクローンや三賢者に関係する奴らが居ればそいつ等も保護しろ、だが五番隊の奴らには任せるなよ? 今回の犯人はどうやら五番隊の奴ららしいからな」
ジェイクはその時ジョンの口から五番隊の名前が出たことに驚いたと同時に自分の力量不足を呪った。
行動が遅かった。俺がもっとしっかりしていれば防げる事態だった……と
「おい、ジョンその五番隊の話本当なのか……?」
「本当さ、その話は元五番隊のレイから聞いてくれよ、俺は詳しくない」
「俺に丸投げかよ……」
「俺も実は五番隊の隊長がどうも怪しい動きをしている事は知っていてその真偽の為に奴を捜していたんだが見つからず行方不明でな、俺達も必死に探してるんだ。レイお前は知っているか?」
「いえ、全く」
「そうか……そういえばお前は裏切っていないのか?」
「まぁさっきまでキール隊長の指揮下だったんですけど色々あってさっき裏切りました」
「色々って何だよ……」
「話せば少し長くなります」
「お前が関わってるのか?」
ジョンを見るジェイク
「バリバリ関わってる、バリバリな」
「はぁ……そうか、まぁいい、ローラは俺達が保護する、ジョンお前には迷惑を掛けたな後で何かしらの賠償はするもう帰って貰って構わない、レイお前には話がある、此処で待機しろ」
頷くレイ、しかしジョンは頷かなかった。
「どうした? ジョン?」
ジョンの眼には敵意が有った。それを察知するジェイク
「この誘拐事件にお前は関わっていないという確証も無いなと思ってな、実は五番隊を操っていたのは隊長に見せかけてお前だった……なんて可能性も有り得る」
此処ではあえて今思いついたかの様な言い回しをするジョン
「俺を疑ってるのか?」
「疑われて当然の立場だろ? 五番隊の奴等を動かすのに一番苦労しないのはお前なんだからな」
「……俺は違う」
「じゃあ信用させてくれよ、これでローラまで奪われたら、笑えねぇからな」
「調査は俺達の仕事だ。お前は関係無いだろ?」
「この国のルールなんぞ知るか、俺は俺の判断に従う、もし国のルールを優先して俺のルールを疎かにするのならば、この場でお前らを殺すその後無関係の民間人も襲う」
ジェイクの顔が険しくなる
「は!? 俺もかよ!!」
レイは驚く
「連帯責任さ、クククッ」
「此処まで法治国家に向いていない奴も始めてみたぜ……全く」
ジョンのやり方はとても正しいとは言えない方法だがローラを心配して自分を疑った事やマリアに対する接し方を見て志す道は一緒だと感じたジェイクはジョンの事を一部分的にだが認めていた。それに自分たちが長い時間を掛けて分かったことをジョンは此処へ来て数日で見破った。彼の能力は間違いなく必要だと感じたジェイク
だからジェイクはジョンの言った事に従う
剣をジョンに差し出す。一体ジェイクが何を考えているのか分からなかったジョンは疑問を顔に浮かべる
「今から俺は弁明をする、それを聞いて犯人だと思ったのなら俺をその剣で斬ってくれ」
「……まぁいいぜ、だが此処は止めようマリアお嬢様達も見てるしな」
「お前は時々常識的な部分を見せるな……さっき俺達を殺して云々言ってた奴の台詞だとは思えんぜ……」
「クククッそうか? そこがチャーミングだろ?」
「何処がだよ……」
ジョンはジェイクに剣を突き返す。
「弁明は要らない、実を言うと俺はお前の捜査許可が欲しかっただけだ。許可が有れば捜査がしやすくなる」
「捜査の許可をしたつもりは無いが……」
「捜査させるつもりが無いのなら俺に対して弁明なんてしない、違うか?」
「たくっ分かったよ、好きにしろ」
「クククッそりゃどうも、サンキュー、ローラの事は任せたぜ」
と言ってジョンはジェイクの元を立ち去る




