幸せショッピングモール
零太君に連れられてきたのは、ブランドのお店がたくさん入った高校生の私にはなかなか入れない大型ショッピングモールだった。
「これとかどうかな?」
零太君が真っ先に入っていったのは高級ジュエリーアクセサリーショップ。
勉強を頑張る雪に何かプレゼントしてあげたいらしい。
雪の誕生日も近いしそれも含めて、私に一緒にプレゼントを選んでほしい、ということだった。
「すっごい綺麗…特にこの星のキラキラのところが!」
「満天の星空をイメージした、誕生月の石がはめられたネックレスです、だって。」
「…あ…でもこれ…ものすごく高いよ…??」
雪にあげるプレゼントだと分かっているけどさすがにこんなに高いのなんて大学生のお財布に厳しいんじゃないかと心配する。
「ん~まあ、バイトしてるからそれなりに貯まってるし使うこともないから大丈夫。」
「そ、そうか〜」
なんて言いつつも他のもう少し安そうなジュエリーを探す。
「あ!」
雪の結晶の形に沿って宝石がはめられたブレスレットを見つける。
「これなんか、すごい雪にピッタリじゃない??」
キラキラして綺麗だけど、甘すぎず、サバサバした雪に似合うと思う。
「ほんとだ。これ、いいね。」
チラッと値段を確認すると、これまたものすごい値段。
こんなに小さいのに…!ゼロの数間違えてるよ…。
その後もいくつかいいと思うのを手に取っては値段を見てすぐ戻すというのを繰り返した。
零太君はさーっと店内を回って見ていたけど、女の子は何が喜ぶか俺分かんないなーなんて笑っていてちょっと可愛いな、と思ってしまった。
「お待たせ。」
お店の出口で待っていると、小さい可愛らしいジュエリーケースをもった零太君がでてきた。
どうやら、プレゼントは決まったらしい。
「よかったね、プレゼント決まって。」
「うん、一緒に選んでくれてありがとう。」
はぁ、私もこんな優しくてカッコ良いお兄ちゃん欲しい。なんてしみじみと思った。
しばらくぶらぶらとモールを回っていると、
「あ、ショコラトリーだ!ここにも入ってるんだ〜」
有名なチョコ専門店を見つけた。
私が前々から密かに食べたいと思っていたチョコのお店。
思わず「美味しそう…」なんて願望が口から出た。
「ふふ、見てくる?」
「…い、いや、大丈夫…」
あそこのお店もきっと高いし、きっと入ったら零太君はご馳走してくるし悪いと思い、ぐっとよだらをこらえて我慢する。
「ほら、行こう」
「えっ、零太君!」
零太君は私の手を引いてお店の方向に歩き出した。
「あ、ありがとう…」
悪いなぁ、と思いつつも、憧れのあのチョコを食べられると思うと頬がゆるんだ。
「…ゆうな?」
「えっ。」
自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、サッと振り返ったけどそこには誰もいなかった。
「ゆうちゃん?」
「な、なんでもないっ」
なんだきのせいか。
それにしても、知り合いにこんなとこ見られたら彼氏いるのにほかの男といる、なんて思われちゃうな。
零太君の手を、失礼だとは思いつつもゆっくりと離した。
のだけど、零太君は不思議そうな顔でまた私の手をつかみ直した。
くっ、上手くかわせなかった…。
掴まれた手を恨めしそうに見つめる。
だけど、
「全部美味しそう…!」
1面に並ぶツヤツヤのチョコたちを見て、そんな心配はどこかに吹き飛んでしまった。
「好きなの選んでいいよ」
なんて、言われたからもう幸せ過ぎてヨダレが…
「これにする!」
迷った挙句、生チョコが何層にも重なった、上に可愛らしいハートのチョコが乗ったチョコケーキにした。
ショコラトリーのチョコとスポンジ生地どちらも味わえる贅沢なひと品だ。
「いただきます…!」
「どうぞ。」
店内のテーブルで早速ケーキを頂く。
「おいし~~っっ!!!甘い!チョコが濃厚!!しあわせ〜〜!!」
自然と感想がこぼれる。
もう、これはほっぺたが落ちちゃうなぁ〜。
「そう、良かった」
幸せそうに食べる私を見て零太君はふわりと笑った。