星降る夜に
空を見上げる。
何千何万という星が煌めく中で、ただ一つ、青く鈍く輝く星から私は目が離せない。
「…もう時間が無い。」
あの日は星が降るような夜だった。
私はそんな星たちに紛れてこの星に降ってきてしまった。
この星で私はたった1人。
母なる星で仲間達が私を待っている。
私に大き過ぎる期待を抱いて。
きっと、私はそんな背負いきれない期待や責任に疲れ果ててしまったのだ。
だからこんなにも、母なるあの星にもう戻りたくなくなるような、戻れなくなるような、そんな心象を含む行動を起こさずにはいられない。
『…大好きだよ』
そうやって、私の正体を知らずに微笑むあの人を裏切るようなことをしたくないと思ってしまうのは、この星に長居しすぎたせいか。
[ビ…ビビ…ビッKikoeルカ…iManoZikoクha2senjyu9nenハチガツjyuiチniチ25zisanhun…]
頭の中で響くノイズがそんな私の邪念をかき消すかのように流れ始める。
星たちが送ってくる電波を、私は嫌でも受け取ってしまう。
「聞こえている.イマノ時刻ハ2019ネン8月11日25時3分ーーー」
私があの星にいた頃、こんな2進法の単純なやりとりだけで意思を伝えていたなんて信じられないい。
きっと私達は、文字の羅列だけでは伝えきれないもっと複雑な感情を抱えているというのに。
いや、私がこの星にきて、あの人と関わったことによってようやくその感情を手に入れたということなのだろうか。
今はもう、よくわからない。
ただ、あの人に会いたいと、そう願う気持ちだけは、はっきりとこの心に感じている。