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昔の思い出
「こっち向いて」
カシャッ
「あ、ちょっとー手どけてよ」
彼は写真に撮られるの嫌がる。
「もう、別に今撮らなくてもいいだろ」
「今じゃなくても撮らせてくれないじゃない」
それに、なんでもない日常のこの瞬間の彼をレンズに収めておきたいのだ。
メモリを漁ると彼の写真が山ほど出てくる。
「ほら、前はいっぱい撮らせてくれたじゃん」
初めてのデートで撮った写真。
一緒に遊園地に行った写真。
彼の寝ているところを勝手に撮った写真。
たくさんある。
懐かしいなぁ。
「あっ、これとか覚えてる?あの時は、わたしが初めてハルにお弁当作ってあげたらすごい喜んじゃって、『一緒に撮ってー!』なんて、ハルから言ってきたんだよ。可愛いかったなぁ」
ね、とハルに向かって笑いかけたけれど、目をそらされてしまった。
「ハル?」
「写真は好きじゃない…」
やっぱり、昔とは違うんだね。
「そっか。」
ハルが嫌がるから、もうハルの前で写真を開くのはやめよう。
「…。」
ハルは私の方をじっと見つめていた。
どうしたんだろう。
私は、聞くことができなかった。