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No.9  作者: セルフィ
2/7

優しい彼氏

金曜日の7限目、化学の授業。


この一限が終われば今週の学校はこれでおしまい。

2日間という小さな休みが待っている。




「…ふぁ~」



あなたは窓際のよく陽が当たる席で、眠そうに欠伸をしている。




カチカチ



授業終了まであと10分。



10分という、短いようで長い時間。



私にとってこの時間が一番きつかったりする。





時計の針がやけに遅く進む気がする。

あぁ、もどかしい。



カチカチ


あと5分。




窓際の彼は、黒板になんて目も向けず、ただ窓の外を見ていた。




「…はい、じゃあ今日の授業はここまでー。

号令よろしくー」



先生も1週間の疲れが溜まっているようで、教室にだるい号令が流れていた。




「なに見てるの。」



授業が終わればすぐさま彼の席に行く。



「ん?…空だよ」




「空か…。今日は曇りだね」



彼の見ている方向と同じ方向を見る。


暑い雲に覆われたどんよりとした灰色の空。



あまり見ていて心地の良いものではないけれど、


彼はじっと、暗い空を見つめていた。




あなたにはそこに何が見えるの?




「…雨が降らないうちに帰ろうか」



「うん」




彼は窓の外から教室の中に視線を戻し、帰る準備を始めた。




それと同時に、小雨が降り出した。




今日は朝、天気予報を見て傘を持ってきていた。



降ってきちゃったね。




そんなことを言いながら彼は笑った。




「傘もってきた?」


「うん、持ってきたよ。君は?」


「忘れちゃった。入れてくれる?」


本当は持ってきているんだけど、ね。





「もちろん。」




彼は優しい。




彼と過ごす日々は幸せで穏やかで、こんな日々がずっと続けばいいと思う。





「…」




帰り道、決して大きくない傘を私の方へ傾けている彼の肩は雨に濡れていた。



「あなたは本当に優しいよね。」




私は帰り道、彼のおかげで全く濡れることなく帰れた。




そんな時、彼は曖昧に笑ってこういうのだ。





「君のためならね。」

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