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快刀乱魔を断つ

作者: 相野仁

 いずれの帝の御世であっただろうか、さまざまな怪異を引き起こして人々を苦しめる輩がいたそうな。

 時の権力者たちはその者どもを「妖魔」と呼び、人の世と相容れぬ邪悪と定め、討伐する為の戦士を抱えていたという。

 これはそんな国のそんな時代の物語と心得られよ。





 草木も眠る頃合、夏の夜空の下でうごめくひとつの影があった。

 大の男よりも一回りも大きいその影は、ある家屋の戸の前に立つとするりと戸の隙間から身をすべり込ませる。

 その異様な力の前では頑丈な木戸もしんばり棒も全く意味をなさなかった。

中には若い夫婦がふたり、質素な布団を並べて寝ている。

 どちらも規則的な寝息を立てていて、侵入者にはちっとも気づかない。

 影はのそのそと静かに彼らに近づくと、若妻の布団にすっともぐりこみ彼女に覆いかぶさる。

 奇妙なことにそれでも彼女も夫も目覚めない。

 そのまましばらく影はじっとしていたが、やがて離れた。

 残されたのは哀れ骨と皮だけになってしまった若妻のなれのはてのみである。

 若妻ひとり殺めたその影は、夫の方には見向きもせずにそこから姿を消す。

 やがて夜は明けて、鳥の鳴き声が朝の訪れを知らせる。

 目が覚めてようやく異変に気付いた夫はすっかり仰天し、騒々しい悲鳴をあげた。

 すわ何事かと集まってきた近隣の人々が目撃したのは、無残な姿に変わり果てた若い女である。

 たちまち人々は役場に訴え出た。

 武装した役人たちがやってきたのは、それから四半時ほど経過してからだろうか。


「これはまた妖魔の仕業か……」


 役人のひとりが渋面を作る。

 ただの死骸であればあるいは夫に疑いがかかったやもしれぬが、昨日の夜まで生存が確認されている女が一晩で骨と皮になってしまったのだから、尋常な所業とは思えぬ。

 さらに目撃者もなく、音を聞いた者もいないとなると、捜索しようにもやりようがない。


「これは我々の手には負えぬ。陰陽庁に知らせるしかあるまいて」

 

 最も地位の高い役人が、どこか忌々しそうな顔で言う。

 いずこの時代、組織にも閥というものは存在して対立するように、彼らと陰陽庁という組織もまたいがみ合っている。

 その仇敵ともいうべき手合いに譲らねばならぬとあれば、彼らが面白くないのも仕方あるまい。

 しかし、近年は妖魔の被害が目立ち、陰陽庁の権限が強化されているのだから他にどうしようもなかった。

 彼らも役人である以上、お上の決定には従うしかないのである。


「大体奴らがもっとしっかりしていれば、被害は減るのだ」


 役人がそう吐き捨てたが、誰も否定しなかった。

 そればかりか妻を殺された男が泣き顔で同調する。

 

「そうだ……化け物に対抗できるのは陰陽庁だけなのに、どうして何もしてくれないんだ! ちゃんとしてくれていたらおフネは……」


 嗚咽交じり語るさまは聴衆の胸を打ち、たちまち陰陽庁への罵倒がはじまった。

 それを遠巻きに見ている一人の男がいる。

 青い無地の布衣をまとい、ざんばら頭で年中困窮している下級のサムライとしか思えぬその男は、隣にいる町民姿の男に小声で話しかけた。


「ずいぶんとうちも嫌われているな。手がかりもなく妖魔を発見できると思っているのかね」


 この言葉から察せられるように、この男こそ陰陽庁の人間である。


「町民どもは何も知らぬのでしょうが、役人どもは知らぬはずがありますまい。所詮は不浄者にすぎぬということでしょうか」


 町民姿の男は悔しそうな顔で応えた。

 陰の努力を否定されているのが我慢ならないのであろう。

 刀を差している方が彼をたしなめる。


「その言い方はよくないぞ。だからおぬしらは奉行所の人間に嫌われるのだ」


 他人事のように咎めたのは「不浄者」と呼んだことであった。

 これは町奉行の役人やその配下たちをさげすむ言い回しである。

 

「ですがセイゴロウ様……」


 何か言おうとすると男を、セイゴロウは目くばせで制した。


「くっだらないことを言わないで何か美味いものでも食おう」


 彼はそう言うと、近くの小料理屋に入っていく。

 その後ろ姿を見ていた男は、肩を落として後に続いた。


「あらいらっしゃい、セイゴロウさん」


 料理屋の女中は笑顔で彼らを出迎える。


「いつもの」


 それだけ言うと、二人は今後について相談し合う。


「被害者はこれで何人目だ?」


「七人目。いずれも十代前半から後半の若い娘か若妻と言えるでしょう」


 セイゴロウはそこで一瞬考え込む。


「他に被害者に共通していることはないのか?」


「ええ。せいぜいこの街に住んでいるというくらいですね。もう少し絞り込めれば、何とかできると思うんですが」


 町民姿の男は悔しそうに唇を噛んだ。

 彼は陰陽庁が保有する戦力には大いに信頼を寄せているので、発見できさえすれば解決できると考えている。

 今回の妖魔は無力な女、それも寝込みを襲っているばかりなのだから、なおさらそう思えた。

 

「俺たちの仕事はあくまでも妖魔を倒すこと。妖魔の被害を出さないことじゃねえ。被害者たちに冷たいようだが、そこは勘違いしてはいけないぞ、ゲンゴ」


 セイゴロウが言うとゲンゴは神妙そうな顔つきでうなずく。

 妖魔の被害を出さないというのは理想だが、あくまでも理想に過ぎない。

 少しでも多くの手がかりを集めて、できるだけ早く妖魔を倒すこと。

 それ以上は神ならざる人の身には不可能と言ってよい。

 この点を勘違いしてしまった陰陽庁の人間は、大抵不幸な末路が待っている。

 彼はそれ故に僚友を戒めたのだ。

 料理が運ばれてきたので話を中断し、腹ごしらえをする。

 そこへ役人たちが四名やってきた。

 女中は特に驚きもせず、彼らを席に案内する。

 役人たちの方も慣れた様子であった。

 先客であるセイゴロウたちの姿に気づいておやという顔をしたものの、話しかけたりはしない。


「全く陰陽庁めが、いけ好かない奴らだ」


 彼ら開口一番陰陽庁への悪口合戦をはじめる。

 それを聞いたゲンゴは不愉快そうに表情をゆがめた。

 セイゴロウがそっと制止していなければ、食ってかかっていたかもしれぬ。

 ゲンゴもそれなりの手練だが、さすがに四対一では勝機はあるまい。

 セイゴロウはふっと席を立つと何とその役人たちのそばに寄る。


「朝から大変だなぁ。また、妖魔が出たのかい?」


「そうだが、何だおぬしは?」


 馴れ馴れしく話しかけられた役人たちは、ぎょっとしながら彼のいでたちを無遠慮にじろじろ見た。

 そしてその格好から、自分たちが敬語を使わねばならぬような相手ではないと判断する。

 さすがにこんなさえない風体でしかも愛想よく近づいてきた男が、よりにもよって陰陽庁の人間だとは夢にも思わなかった。


「いや、早いとこ妖魔が倒されてほしいと思っている男さ。聞いた話じゃ、今回のやつは若い女ばかり狙うってことじゃないか」


「何だ、もうそこまで広まっているのか。その通りだ」


 役人の一人が苦々しげに認める。

 人の口に戸は立てられぬと、彼らはよく知っていた。

 そのおかげで彼らが手柄を立てる場合もあるのだから、一概に文句を言うわけにもいかぬ。

 

「妖魔を倒せるのは陰陽庁だけなのだから、しっかりしてもらいたいものだ」


 さすがに刀差し相手に面と向かって陰陽庁への暴言を聞かせるのはためらわれたのか、口調も言葉の中身もだいぶやわらかい。

 セイゴロウは彼らの言葉にいちいちうなずいていたが、やがて言葉を放つ。


「あんたらで陰陽庁をだしぬいてやればいいんじゃないか?」


 これを聞いた役人たちもゲンゴも腰を抜かさんばかりに驚く。


「何を言い出すのか。わしらにできることなどほとんどないのだ」


 役人の一人がはき捨てるように言うと、セイゴロウは「まあまあ」と返す。


「しかし、襲われた被害者の共通点は何か。妖魔のねぐらがどのあたりなのか、洗い出せばいいじゃないか。そういうのは陰陽庁の連中よりも、あんたたちの方がずっと上手だろう?」


「それはまあ、そうだが……」


 役人たちは困惑して仲間同士、顔を見合わせている。

 妖魔との戦いならばいざ知らず、聞き込みなどをして情報を集め、セイゴロウが口にしたことを突き止める力は自分たちも負けていない。

 いや、化け物と戦う以外が能のない集団よりも上だ、という意識はある。

 だが、それを実際にやったら上からおとがめがあるかもしれないのが、役人という仕事であった。

 

「集めた情報を陰陽庁に提供するなら、職務違反じゃないだろう。陰陽庁の鼻を明かすことにもなるし、やってみる価値はあるんじゃないのかい?」


 役人たちはセイゴロウの口車にまんまと乗せられてしまい、やる気に火がつく。

 ただ、それでも彼に対する疑問は抱いたようで、一人がたずねた。


「何でおぬしはそのようなことを口にする? 陰陽庁に何か恨みでもあるのか?」


「恨みがあるわけじゃないが、早く事件を解決してもらわないと、おちおち女を口説けないのは困る」


 セイゴロウは前もって用意していた答えを返す。

 気が利いた冗談と受け止めたのか、役人たちからは笑いが起こる。

 笑いがおさまると役人の一人が言う。


「早めに解決しないと笑い話ではすまぬな。参考になった、礼を言わせてもらおう」


 それに対してセイゴロウは右手を軽く振って応え、ゲンゴのところへ戻る。

 その本来ならば彼に対して十や二十の指摘、嫌味を言わねばならないはずのゲンゴは、彼の言動についていけず間が抜けた顔をしていた。

 まさか自分たちを目の敵にしている役人連中をそそのかし、事件の調査を独自にさせるとは、もはやどう表現すればよいのか分からぬ。

 そんな相棒に声をかけ料理屋を出たセイゴロウは人の悪い笑みを浮かべて、


「これであやつらの動きを注視していれば、俺たちの調査もはかどるというものさ」


 と片目をつぶってみせる。


「セイゴロウ様の悪知恵、あきれるしかありませんな」


 ゲンゴはそう言うのが精いっぱいであった。

 それから数日後、事態は急展開を見せる。

 複数の町で若い女が殺されたばかりか、近くに町奉行所の役人たちの死体もあった。

 これに民衆は腰を抜かしたが、町奉行所の上役たちはもっと衝撃を受ける。

 陰陽庁の鼻を明かしてやるべく部下たちに調査をさせていたら、これが全滅してしまったのだ。


「まさか戦ったのではあるまいな……愚かなまねを」


 責任をとらねばならぬ立場の者たちが青ざめた顔で、舌打ちをする。

 彼らが妖魔との交戦を禁じられているのは、何も管轄の違いだからというわけではない。

 彼らではとても勝てぬ相手だからだ。

 偶然の遭遇からの戦闘になったかどうかはこの際関係なく、処分が下される。

 本来の役目を超えて情報収集にいそしんでいた点が、裏目に出てしまったのだ。

 この日お上からの通達で切腹を言い渡された者こそいなかったが、複数の免職者が出てしまう。

 それを聞いたセイゴロウは小さくため息をつく。


「何か悪いことをしたかもしれないな」


 彼が余計なことを言わなければ役人たちは死なず、責任を取らされる者も出なかったかもしれない。

 それを同僚が鼻で笑う。


「何を言う。おぬしはただ単にごろつき役人に道を示してやっただけではないか。夜こそ妖魔たちの領域であり、ごろつき役人どもは日が暮れる前に撤退すべきであった。その程度のことさえも分からぬ低能どもが屍になっただけなのに、どうしておぬしのせいになる?」


 辛辣ではあったが、彼を擁護してくれるのも事実だ。


「それはさすがに言いすぎだよ」


 それだけに彼としてもたしなめる以上は難しい。


「それに役人たちのおかげで一つはっきりと分かった。今回の敵は一匹だけじゃない。統率されているのか、同種が好き勝手に動いているのかまでは分からないが」


 そこへ壮年の男が口を挟んでくる。

 

「長官殿」


「長官」


 セイゴロウともう一人の男は、その男を職位で呼ぶ。

 眼光鋭い痩身の男こそが陰陽庁の長官であった。


「いよいよ上もうるさくなってきた。わしらの手で解決せよとな」


 そう言うと彼はセイゴロウに目をやる。


「対魔撃剣隊一番ジングウ・セイゴロウよ」


「はっ」


 長官の呼びかけにセイゴロウはかしこまって応えた。


「おぬしの受け持ちはこの町じゃ。何と言っても若い女が最も多いところだからな」


 それ故に最強の剣士を配置すると告げる。


「御意」


 彼が平伏して命令を受け取ると、長官は他の剣士たちにも命令を下していく。

 こうして陰陽庁が誇る対妖魔最大戦力たちが放たれたのだ。

 彼らの妖魔狩りの方法は一般的に秘匿とされる。

 何故ならば人の中に妖魔が溶け込んでいる可能性が想定されているからだ。

 妖魔に知られて対策を取られるようなことがあってはならないのである。

 セイゴロウはと言うと、いつもの服のまま一人でぶらぶらと街を歩いていた。

 見回りをしながら囮役も兼ねているつもりである。

 そういう建前で対魔撃剣隊の正装を避けていた。

 もっとも、今回の敵は若い女しか狙われていないので、彼自身あまり期待していないのだが。

 彼がぶらぶらしている中、黒花といわれる一隊が妖魔をあぶりだす秘香を町中に散布する。

 これは人間や動物には何の効果もないが、妖魔と呼ばれる生き物には猛烈な不快感を与えるものだ。

 伝説の大陰陽師アベセイメンが開発したという逸話は嘘か真か判別がつかぬが、効力は本物である。

 風向きを考慮しつつ、町全体を香が包むように撒いていく。

 しばらくすると低い獣の悲鳴のような声があちらこちらで発生する。


(どうやらこの町に群れが潜伏していたらしいな。舐められたものだ)


 セイゴロウの顔つきがのほほんとした貧乏サムライのものから、精悍な剣士のものへと変わった。

 彼が声がした方に足を向けると、鍛えられた聴覚がかすかな音を拾う。

 

(戦闘音か……?)


 黒花の役目は妖魔のあぶり出しと、その位置を捕捉して彼ら撃剣隊に知らせることだ。

 場合によっては妖魔と一戦を交えるが、彼らは時間稼ぎ以上のことはできない。

 駆け出したセイゴロウの嗅覚は、やがて血の臭いを嗅ぎつけた。

 そして地に倒れ伏す黒装束の人間たち、黒花の隊員たちを見つける。

 絶命していることはひと目で分かってしまう。


(弔ってやりたいが許せ)


 セイゴロウの役目は妖魔を討ち果たすことである。

 黒花隊員の遺体は同僚がそのうち実行するであろう。

 遠くから聞こえる生存している黒花隊員の合図を頼りに、彼は走った。

 町を抜けて森へと行くと彼の接近に気づいていたのか、一人の黒花がやってくる。


「セイゴロウ様、お待ちしていました」


 抑制が効いた声からは安どがにじみ出ている。

 それでよほど苦戦したらしいと推測できた。


「ヤスノシン様が戦死、ケイゴ様とトウマ様が重傷を負われました」


「何?」


 しかし、これは計算違いである。

 ヤスノシンは八番、ケイゴは六番、トウマは九番。

 いずれも一ケタ番台の手練れたちだ。

 まさかこの者たちから犠牲が出るほどの強敵だとは、誰も想定していなかったに違いない。


「後は俺任せろ」 


 それでもセイゴロウは力強く言い切る。


「はっ」


 黒花の隊員もまた、信頼を込めた返事をした。


「やつらはあちらに八匹います。ケイゴ様とトウマ様が二匹ほど倒したのですが」


「まだ大半残っているわけか」


 セイゴロウはゆったりと教わった森の方へ歩を進める。

 中に入るといくつもの立派な木がなぎ倒されていた。

 同僚たちとの戦闘の後であろうか。


(何人もの女を食らったことで大いに力をつけたか)


 そのような存在複数と同時に戦ったのであれば、同僚が返り討ちにされてしまったの分からぬ話ではない。

 そう思ったセイゴロウはさっと後方に飛びのく。

 その直後、異形が彼が立っていた場所を殴りつける。

 異形が自身の攻撃をかわされた事を悟るよりも早くセイゴロウの白刃が閃き、妖魔を斬り滅ぼす。

 撃剣隊の剣士が使う武器は、斬るだけで妖魔に大きな打撃を与える神秘刀である。

 それでも一撃で倒せたのは、セイゴロウの腕が傑出しているからだ。

 

(さて?)


 セイゴロウは油断なく暗い森の中を見回す。

 仲間の奇襲が通用しなかった挙句、逆に一撃で倒されてしまったのを見れば残りの輩は警戒するだろう。

 これまでに戦った人間とは比べ物にならぬほど強い。

 そう判断した怪物たちは、果たしてどう出るであろうか。

 セイゴロウはそう思いながらもゆっくりと前進する。

 己の力量に自信を持つ彼は、あえて四方から囲まれる位置につく。

 無謀極まりないと妖魔たちも判断したのであろう。

 咆哮をあげながら五体の影がとびかかってくる。

 

 ──秘剣・煌円龍牙


 それを迎え撃ったのはセイゴロウの奥義であった。

 簡単に言うなれば敵をぎりぎりまでひきつけて、円を描くように斬撃を放つのである。

 常人がこれをやっても全ての敵を倒すより先にやられてしまう。

 敵に倒されるよりも速く全ての敵を斬り伏せてしまう、神懸かりの剣速が必要不可欠であった。

 現に撃剣隊の剣士の中で、これを使えるのはセイゴロウのみである。

 

「さて、これで六匹か」


 五匹をまとめて葬り去った彼は、特に疲れた様子もなくつぶやいた。

 彼の研ぎ澄まされた感覚が、かすかな怯えの感情を察知する。

 どうやら残りの妖魔どもは完全に怖気づいたらしい。


「人を食らわず、危害を与えぬものまで斬ろうとは思わぬが、貴様らは既に何人も食らっていよう。見逃してはやらぬぞ」 


 セイゴロウは冷ややかに断言する。

 これで腹をくくったわけでもないだろうが、妖魔たちは前後から同時に襲ってきた。


(愚か者め)


 彼はまず前方の敵を斬り、そのまま反転して背後から迫っていた者を斬り捨てる。

 煌円龍牙を放てる彼にとってこの程度は朝飯前であった。

 全て敵を仕留めた彼は森の外に出て、待機していた黒花に処理を頼む。


「さ、さすが……神剣のセイゴロウ様」


 息一つ乱さずに生還したセイゴロウを出迎えた男は、畏怖を込めて称賛した。

 ……このようにして、人の世は守られているのである。


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