第46話 楽しい(?)調理実習 その8
全員で交代しながらボウルの材料をかき混ぜている。
「まだ粉っぽいですか?」
「あともう少しかなぁ……ちょっとボウルを貸してもらってもいい?」
「どうぞ」
蓮はミルクにそう言うと、ボウルと泡立て器を差し出し、泡立て器についた小麦粉を落とした。
彼は少しだけかき混ぜ、そこに先ほど木龍が沸騰直前まで混ぜておいてくれた牛乳とバニラビーンズを加え、さらにかき混ぜた。
「ボウルに入っているものをこし器でこしながら、小鍋に戻していくよ。ここは少し難しいから、僕と萌でやるね」
「お兄ちゃん、ボウルを持てばいいの?」
「うん」
蓮は萌にカスタードクリームの材料が入ったボウルを持つよう頼み、彼はコンロを中火にし、それをこし器でこしながら、小鍋に戻していく。
その時は手を止めずにずっとかき混ぜているため、蓮の額に汗が滲む。
「はぁはぁ……この……くらい……かな……?」
彼は途切れ途切れに言いながら、萌に泡立て器を渡した。
「うん。ちょうどいい感じ」
彼女はそれを受け取り、軽く混ぜ、コンロの火を消した。
少しだけ混ぜたあとが残り、艶が出ているため、カスタードクリームの原型はある程度整ったが、まだただの液体である。
「あとはバターを小鍋に入れて、よく混ぜて……」
「ハイ。って、また、かき混ぜるんですか?」
「そうだよ。シュークリームはかなり体力を消耗するから大変なんだよ……」
軽くぐったりしている蓮はココアに指示を出した。
彼女はそこにバターを入れ、萌にこのくらいでよいかどうか訊きながらかき混ぜていく。
「うん。大丈夫そうなので、これに入れましょう」
彼女はココアにバットを差し出した。
中身が入ったそれをラップでしっかり覆い、あら熱を取る。
「萌さん、バットが冷たくなってきましたよ?」
「では、それを冷蔵庫に入れて冷やしましょう」
ココアは返事をして、バットを冷蔵庫にしまった。
木龍は冷蔵庫の近くにいた萌の肩を「なぁなぁ」と言いながら軽く突っつく。
「萌ちゃん、蓮が寝ちゃったけどいいのか?」
「今回は手を止めずに頑張ってかき混ぜてしまったので、疲れてしまったんだと思います。お兄ちゃんには少し休ませておきましょう」
「お菓子の生地じゃないんだからさ……」
「そうですよね。木龍さん、上手いです」
「それはどうも」
彼女は蓮の肩にブランケットをかけ、少しの時間ではあるが、彼を休ませた。
「さて、お兄ちゃんがぐったりしている間にシュークリームの生地を作り始めましょう!」
『ハーイ!』
「おう!」
彼女らは疲れて眠っている蓮を全員で喫食スペースに移動させ、調理実習を再開するのであった。
2018/01/03 本投稿




