第39話 マドレーヌを作ろうとしたらクッキーが焼きあがってしまった!
厨房に置いてある調理器具は片付けられ、少しずつではあるが、マドレーヌの材料が作業台に乗せられている。
「さて、今度はマドレーヌを作っていくよ!」
蓮がこう言うとミルクとココアは元気よく『ハーイ!』と返事をした。
「あのー……」
「ところで、木龍さんと萌さんは……?」
彼女らのすぐ近くには萌と木龍の姿が見当たらない。
「あぁ、木龍さんはオーブンの方を少し見てもらってるんだ。せっかく作ったクッキーが焦げてしまって食べずにゴミ箱送りになっちゃうからね」
「蓮、焼き加減はどうだ?」
「あー……微妙なところですね。もう少しといったところです……」
蓮は彼に呼ばれてオーブンに駆け寄る。
クッキーはあと少しで焼き上がるようだ。
「もう少しで焼き上がるんですか?」
「早いですね!」
ココアとミルクはわぁと嬉しそうな表情を浮かべる。
「萌はマドレーヌの材料を準備してもらってるんだ」
『本当だ!』
作業台にはほとんどの材料が並べられていた。
「これで終わりだよ」
「分かった、ありがとう!」
萌が牛乳パックを業務用の冷蔵庫から取り出しながら、作業台にドンと置く。
「あっ! 木龍さん、クッキーが焼きあがってますよ?」
「萌ちゃん、本当か?」
「私も見たいです! 焼きあがったクッキー」
「私も!」
彼女がオーブンの近くに駆け寄ると、クッキーはこんがりキツネ色に焼きあがっていた。
それを聞いたミルク達もそこに向かう。
「ええ、いいですよー。お兄ちゃん、焼きあがったクッキーを取り出してもいい?」
「いいよ! オーブンは熱いから気をつけて取り出してね」
「うん」
萌は木龍やココア達がいる前で両手に鍋つかみをつけ、クッキーをオーブンから取り出す。
その間に蓮は冷えたタオルを作業台に乗せ、その上にクッキーを置いた。
「凄い!」
「美味しそう」
「きれいな焼き目だな!」
『コレが「ヨウガシ」と呼ばれているものなんですね!』
「蓮と萌ちゃんはさすがだなぁ……!」
「洋菓子」を作って食べたことがない3人は焼きあがったクッキーを見てそれぞれの感想を口にする。
木龍は「洋菓子」を頑張って作って販売している彼らに感激し、男泣きを始めてしまった。
「も、木龍さん……」
「感激し過ぎですよ……」
このことに関しては蓮と萌はなんとも言えず、呆れた表情を浮かべている。
「あ、あのー……」
ミルクが喫食スペースに置いてあったボックスティッシュを木龍に差し出すと、彼は一心不乱に鼻をかみまくった。
2017/08/13 本投稿




