第38話 楽しい(?)調理実習 その2
小麦粉にまみれたミルクは何度もくしゃみをし続けており、その度に小麦粉は徐々に少なくなからず降ってくる。
「真っ白けに……くちゅん、なっちゃった……くちゅん……」
「ミルク、大丈夫?」
「うん……ココア、ありがとう」
彼女の近くにいたココアが速やかに濡らしたタオルをミルクに手渡した。
彼女はそのタオルを受け取り、手と顔についた小麦粉を拭き取る。
萌が「ミルクさん、エプロンとかの予備は持ってきてないんですか?」と訊くと、「実は持ってきてないのです……」と答えた。
「んー……私の服ならばサイズが合うと思いますので、着替えてきましょう。私のあとについてきてください」
「萌さん、すみません……」
「じゃあ、お兄ちゃん。ちょっと離れるね」
「分かったー。こぼれた小麦粉を片付けておくから」
萌はミルクを連れて2階に向かい、彼女から服を借りて着替える。
一方の蓮とココア達は彼女がこぼした小麦粉の後始末に入るのであった。
*
そして、彼らは再び調理実習を再開した。
先ほどのミルクが小麦粉をこぼしてしまったということがあり、ココアが彼女の代わりにその工程をやることに――。
ちなみに、粉ものの作業はマスクをつけてからやろうということになったのだ。
「じゃあ、今度はそのボウルに入った小麦粉をこのふるいを使ってふるおう」
「ところで、蓮?」
「ハイ」
「蓮が持っているものはなんだ?」
突然、木龍が蓮の手に持っているものを指さす。
彼が「これはクッキングシートというクッキーとかが焼きあがった時に速やかに剥がせるように使うものです」と説明した。
それを下に敷き、蓮が手本として見せながら小麦粉をふるいにかけていく。
「お待たせー」
「みなさん、すみませんでした」
その時、萌とミルクが厨房に戻ってきた。
彼女は常温でやわらかくなったバターが入った器をスプーンでほぐす。
「萌、ふるい終わったからバターと塩をひとつまみ入れてー」
「ハーイ!」
萌が蓮達とは違うボウルにバターと塩をひとつまみ入れ、すり合わせていった。
全体的にクリーム状になってきたタイミングを見計らって1回グラニュー糖を入れ、交替しながら混ぜ合わせる。
「そろそろ、卵の準備をしない?」
「そうだね。僕の方で準備しておくよ」
蓮が卵と小麦粉を持って彼女のところに駆けつけた。
最後にすべての材料を1つのボウルにまとめ、粉っぽさがなくなるように混ぜ合わせて、クッキーの生地は完成。
「萌、オーブンの準備は整ったから、生地を好きな形に作ってね。その時は生地と生地の間を開けてね」
『ハーイ!』
彼女らは自由な形に生地を敷き、オーブンに入れた。
「焼き上がりが楽しみですね!」
「私も!」
「さて、今度はマドレーヌだよ!」
「基本となるものはクッキーとほぼ同じですので、スムーズに作れるはずですよ」
次に彼らが作るのはマドレーヌ。
今度は先ほどのミルクのような失敗はないことを願って――。
2017/03/19 本投稿
2017/08/12 誤字修正




