第37話 楽しい(?)調理実習 その1
「みなさん、準備ができましたよー」
萌が店舗にある喫茶店食スペースでミルク達と木龍は楽しそうに談笑をしていた。
彼女は彼らを呼ぶと、『ハーイ!』、「あいよー!」と各々の返事を返す。
「みんなで何を話してたの?」
蓮も厨房からひょっこりと顔を出し、興味津々な視線をミルク達に向けた。
「木龍さんの昔のお話ですよ」
「おいおい、ココアちゃん。そこはあえて「秘密です」で済ませようぜ」
「なんか蓮さん達にも教えたくなりました!」
「あとで最初から話しますね!」
「へぇー。それは楽しみだなぁ」
「私も知りたいですね。木龍さんの昔話」
「おいっ!」
木龍は恥ずかしそうに顔を赤くしながら蓮と萌の視線が突き刺さってきたが、彼は気にせずに「調理実習というものを始めようではないか」と彼らに促すのであった。
*
5人は厨房の中に入ると、1人ずつ石鹸で手を洗う。
作業台には先ほど蓮と萌が準備しておいた材料と調理器具などが置いてある。
蓮達は普段見慣れているものであるが、異世界人であるミルクとココア、そして、木龍の3人ははじめて見る調理器具があったのかどうかは不明だが、小首を傾げていた。
「まずはクッキーを作ろうか」
『ハイ!』
「確かレジの隣に置いてあるやつだよな?」
まず最初に作るものはクッキー。
それは先ほど木龍が言った通り、この店の「レジの隣」に置かれている商品である。
「バターは事前に室温に置いておいたので、やわらかくなっています。たくさん作る時は電子レンジに入れて温めた方がいいですね」
「なるほど……」
萌が説明すると、ミルク達はメモを取っていた。
それを見た蓮は感心したように見守っている。
「次にはかりで小麦粉を120gはかろうか。ちなみに、ボウルの重さは引いてあるからそのまま入れてね!」
「おっ、ここで俺の小麦粉が出てくるんだな?」
「ええ。では、この行程はミルクさんにやってもらいましょう」
蓮が「小麦粉」と言った途端に木龍の目がキランと輝いた。
一方、突然の萌からの指名でミルクは「私がやっていいんですか?」と不安そうに問いかける。
「ハイ。やっていいですよ」
彼女は調理用ハサミで小麦粉の袋を切り、ボウルに入れている時に悲劇が起きた。
「なんか、鼻がムズムズしてきた……」
「はっ!」
ミルクが鼻をヒクヒクさせており、他の4人は何かを察する――。
「ハ、ハ、ハクションっ!」
彼女はくしゃみをし、小麦粉まみれになってしまったのだ。
蓮達はやっぱりやらかしてくれたと思い、ほうきとちりとりを掃除用具入れから持ってきた。
2017/03/18 本投稿




