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第35話 実は彼女らは『洋菓子』を作ることに関しては皆無でした。

「ところで、今日の調理実習で何を作るのですか?」


 ココアが蓮に問いかけた。

 彼はニタッと待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべている。


「今日はね、この店の人気商品のクッキー、マドレーヌ、シュークリームをみんなで作ろうと思うんだ!」


「簡単なものから難易度が高いものを実際に作ってみましょう!」


 ミルクとココアはえっ!? と言いそうな表情でそのまま固まっている。


 そうなることは仕方がないことだ。

 ベルディには『洋菓子』は広がりつつあるが、「食べること」ができるようになったとしても「作ること」に関しては認知は低い方……むしろ皆無に等しい。

 実際に『洋菓子(それ)』を作ることができる者は現段階では蓮と萌しかいないのだ。


「つ、作り方は僕達が教えるから安心してね!」


「今日は接客ではなくて、作る方の勉強ですので、楽しく学んでください!」


 彼らはやはりそうだったかと少し肩を落としたが、彼女らにフォローらしきものを入れる。

 ミルク達は不安そうに返事をした。



 *



 その時、店の厨房の方から「こんちゃー!」と野太い声が響き渡る。

 萌が返事をし、そこのドアを開けると、そこにはガタイのよい男性がリアカーにたくさんの小麦粉を積んで待っていた。


「オーイ! って、あれ? 萌ちゃんか。小麦粉を持ってきたぞー」


「おはようございます、木龍さん。お忙しい中、届けていただきありがとうございます!」


 木龍と呼ばれたガタイのよい男性は材料庫に新しいものを下に前からあるものは上に積んでいく。


「いやいや、いいんだよ。俺もこの店のために貢献してると思うと嬉しいし。今日は貼り紙がしてあるとおり休みか?」


「そうなんです。今日は急遽、臨時休業になりまして……」


「なんだぁ……珍しく金貨(コイン)を準備してきたのになぁ……」


 彼が臨時休業の貼り紙を見たらしく、残念そうな表情を浮かべた。

 その表情を見た萌は「すみません……」と頭を下げて謝る。


「いや、萌ちゃんは謝らなくていいんだよ。店が開いてる時ならいつでも買うことができるしな! ところで、蓮はいないか?」


 木龍はペコペコと頭を下げている彼女に優しく声をかけ、蓮がいないかを問う。


「僕ならここにいますが……」


「お兄ちゃん、いつの間に!?」


 萌が後ろを振り向くと、蓮がペンを片手に待っていた。


「2人には少し待ってもらっているから大丈夫だよ。木龍さん、いつもお世話になっています。伝票のサインですよね?」


「おう。その通りだ!」


 蓮は彼から伝票を受け取ると、手早くサインをし返す。


「ところで、木龍さんも僕達と一緒に『洋菓子』を作りませんか?」


「『ヨウガシ』? 普段売られているそれを作るのか? 萌ちゃん、それは料理しか作ったことがない俺にも作れるのか?」


 彼に突然誘われた木龍は萌に対して、質問責めだ。


「えぇ。料理の経験があるならば、作り方を覚える必要はありますが、材料を揃えていただければ作ることができます。それをあそこにいる学生さんと一緒にみんなで作るのです!」


 彼女は厨房にある丸椅子に腰かけているミルクとココアを指差しながら答えるのであった。

2016/11/27 本投稿

2017/02/10 話数の誤字修正「第34話→第35話」

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