第32話 反省会
厨房の作業台を囲むように蓮とミルク、ココアと萌が隣同士に向かい合って座っている。
「さて、ここからが本題だよ」
「今日1日、このお店で職場体験をやってみていろいろと大変だったと思います。先ほどと同じように自由に意見を言ってくださいね」
蓮と萌が彼女らに話を切り出した。
『ハイ!』
彼女らは返事をしたが、ミルクが「……あの……」と申し訳なさそうに手を挙げる。
「ミルクさん、何かな?」
蓮はミルクに問いかけると、彼女はもじもじしながら、答えを導こうとする。
ココアはもちろんのこと、萌も蓮もミルクが話し始めることを待っていた。
「えっと……なんて言えばいいのかな……。蓮さんが言った臨機応変に接客をしなければならないと聞いてなんかこの仕事って奥が深いのかなと……」
彼はココアが話しているところを思い出した。
その時、ミルクは頷いているだけであり、何も話していなかったのだ。
「そうですね。このお店はお客様は子供からお年を召した方までいろいろな方がいらっしゃることを知ったと思います。なので、接客パターンを考える必要があることは確かですね」
「意外と接客業とか営業とかは奥が深いよ。僕が小さい頃の話になるけど、母さんはいろいろなお客様とたわいのない会話とかしたりしてたからね」
「そうなんですか……。いつかは蓮さん達のお母さんみたいな人になりたいです」
「でも、奥が深いと言ってくれて、僕は嬉しいな。その仕事のよさを見つけることはいいことだしね」
「ありがとうございます!」
蓮達にそう言われて嬉しくなったミルクは営業用の笑顔になった。
その対角線上にいるココアもニコニコ微笑んでいた。
*
「ところで話は変わるけど、お兄ちゃん、まだ所見を話してないよ?」
「あっ、忘れてた! 突然でごめんね。所見がまだだった」
蓮は萌に言われるまで、ココアとミルクにずっと所見を話すことを忘れていた。
「2人とも、基本的なことはできていました。しかし、忙しくなるにつれて、手を抜いているところもかなり見うけられました」
萌が彼女らに伝えると、2人ともハッとした表情を浮かべる。
「確かに、私は忙しくなると慌ててしまって、適当になってしまいました。すみません」
「私も……すみません」
ココア達が彼らに頭を下げて謝ってきた。
これには蓮達も驚きが隠せないようである。
「2人とも、頭を上げてください!」
「そうだよ! 忙しくなるとバタバタするのは仕方ないよ。それでも頑張ったんだから偉いよ。ねぇ、萌?」
「うん。最初は誰でもすぐに慣れるわけではありませんので、ゆっくりと慣れていってほしいですね!」
彼らは彼女らをフォローしているのだろうか?
蓮達は接客がはじめてなのだから仕方ないと思っていたからだ。
「と、特にミルクさんの聖剣を出すのは癖なのかな? そこをなんとかしてくれれば、もっとよくなるのにもったいないな……」
彼がそう言うと、ミルクは「それは癖じゃないですー」と拗ねたように答え、全員で笑い合った。
2016/07/23 本投稿




