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第2話 材料を買いに行ったら……

 (れん)達がパティシエの夢を追いかけ始めて10年が経った。


 2人は思春期特有の反抗期らしきものはなく、洋菓子店・フェアリーの手伝いをし、両親を助けてきた。


 蓮は高校、地元の製菓関係の学校を卒業式、プロのパティシエとして数年間の下積みを経て、この洋菓子店で働いている。


 一方の(もえ)も兄の蓮と同じように高校卒業後、蓮が通っていた製菓関係の学校に通いながらこの店で店番をしたり、新商品の製作に携わっている。


 いつもなら地域住民が購入することが多いが、この日に限って店内は賑わっている。


「いやー、今日はいつもより賑わってるなぁ……」


「そうだね」


 歩と蓮は厨房からその光景を眺めている。


「これは口コミっていうやつか?」


「いや、違うと思う。今日のは昨日放送されたうちの店を紹介された番組があっただろ? たまたま興味があって足を運んだんじゃないのか?」


「あー、なるほど! 報道の力ということか」


「そういうこと!」


 彼らは手を休めながら今の店の状態を話している。歩はお客様からの注文を受けた誕生日ケーキの飾りつけを、蓮はこの店の大人気商品であるシュークリームを作っている。


 歩が今作っている誕生日ケーキは小さな子供に向けたものだった。


 ふわふわに焼き上がったスポンジに生クリームを塗り、イチゴを挟み、その周りに生クリームをスポンジが見えないように塗る。


 クマの形のホワイトチョコレートに『くるみちゃん たかひろくん おたんじょうびおめでとう』と書かれており、仕上げにイチゴをのせている。


 蓮のシュークリームは焼き上げたシュー部分に少し穴を開けカスタードクリームを入れていく。


「あなた、蓮! 話してないで手を動かして! 今日はお客様がたくさんいらしてるんだから!」


 憂が少し起こり口調で言った矢先、


「おっ! 萌、おかえりー!」


「おかえり」


「ただいまー。うわー、今日はお客さんが凄いね」


と萌が学校から帰ってきた。その状況は分かったらしく、憂に


「バック片付けたら手伝いに入るね」


「分かったわ。疲れてるのにごめんね」


「いいよ。家族なんだから!」


「ありがとう」


 数分後、萌が店番に入ってくれたため、接客はスムーズだった。


「いらっしゃいませ! ご注文をどうぞ」


「誕生日ケーキを取りに来ました」


「あっ、くるみちゃん達のケーキですね! かしこまりました!」


「あなた、注文を受けた誕生日ケーキはまだなの?」


「もう少しで終わる! あとは箱に入れるだけだ」


 歩はケーキを箱に入れ、生クリームが溶けないよう保冷剤を備え付け、袋に入れる。


「大変お待たせしました。ご注文の誕生日ケーキです」


 彼はそのお客様に完成したケーキを手渡した。


「急がせてしまってすみません。ありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそ。よい誕生日パーティーになるといいですね」


 そのお客様は笑顔で頷き、店を後にした。


「そういえば、小麦粉と牛乳、砂糖の在庫が切れそうだ。蓮と萌で買ってきてくれないか? 材料費は2階の食器棚にあるからそこからもってけ」


「場所は業務スーパーだっけ?」


「そうよ。残りの店番はお母さんがやるから萌は行ってきなさい」


「さて、萌、暗くならないうちに材料を買いに行こう」


「うん!」


 2人は軽ワゴン車に乗り、業務スーパーに行き、小麦粉と牛乳、砂糖を購入した。


 材料で満載になった軽ワゴン車は店に向かって走り出した。その時の空は薄暗くなっていた。


 道は先程きた道と同じで途中にトンネルがある。


 そこをくぐった途端、


「あれ?」


「あれれ?」


 2人はワゴン車から降り、前後左右を見てみる。先程は薄暗くなっていた空は明るくなっており、くぐったトンネルはきれいになくなっていた。


 全くもって見慣れない街並み。人の様子を見ると鎧らしきものを着用した人間や獣耳の人物が2人を見てくすくす笑いながら歩いていた。


 そして、2人はあることに気づいた。


「ここはどこだ!?」


「ここはどこ!?」



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