第25話 緊張する待ち時間と所見をまとめる時間
蓮達が厨房に行ったあと、ミルクとココアはどこか落ち着かないようだ。
「うぅーっ……緊張する!」
ミルクが椅子から立ち上がり、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
「なんか、テストが帰ってくる時と同じくらいの緊張感だよ……」
隣に座っているココアは声を震わせながら言い、頭を抱え始めた。
「あと、何人かでパーティーを組んで実践練習の時も同じ感覚があるよ」
「そうだねーっ……」
「ここで何を言われても前向きにならなきゃだね!」
「うん!」
「せっかく蓮さん達がフルーツタルトを準備してくれたんだから、それを食べて気持ちを落ち着かせよう?」
「賛成!」
彼女らは萌によってきれいに8等分に切り分けられたフルーツタルトをひと切れずつ皿に移す。
『いただきます!』
彼女らはフォークを片手に蓮が作ってくれたフルーツタルトをゆっくり味わいながら食べ始めた。
*
一方、厨房にいる蓮達はそこ隅に申し訳なさそうに置いてある丸椅子を作業台まで運び、向かい合うような形で腰かけている。
「萌はメモっていたのか……」
蓮は萌のメモ帳をパラパラと見ながら感心したように言った。
「うん。そうしないと忘れるからね!」
「なるほど。僕は感じたことをストレートに言うけど」
「うっ、私の数年前の悪夢が……」
萌がボソッと呟く。
蓮はそれに気がついたようだ。
「ん? なんか言った?」
「な、なんでもない。お兄ちゃん、相手は勇者学校に通う高校生なんだからね?」
「あっ、そうだった! すっかり忘れてた!」
蓮がミルク達が勇者学校に通っていた存在を忘れていたらしい。
「私が言うまで忘れてたでしょー。聖剣だか分からないけど、刃物を向けられたらどうしようもないんだからね?」
「そ、そこは分かってるよ」
「本当?」
「本当だから! じゃあ、改めて所見をまとめよう。ココアさんからだ。彼女は……」
彼らはココア達の所見をまとめ始めた。
*
一方のミルク達はフルーツタルトをひと切れずつ食べ終えた。
しかし、フルーツタルトを食べたとしても気持ちが落ち着かないため、彼女らはぬるくなりかけた紅茶を少しずつ飲んでいる。
「まだかな」
「もうそろそろ、結果がきてもいいよね……?」
ミルクとココアはカップに残った紅茶を飲み干した時、
「2人とも、お待たせ!」
と蓮の声が彼女らの耳に飛び込んできた。
2016/05/02 本投稿




