第15話 ベルディ国立勇者学校高等部の職場体験とは? 〜あなた達はその学生を引き受けますか?〜
あれから、4人は職場体験の話を続けていた。
「お願いします!」
「私達の単位にかかっているんです! 若い店長さん!」
「お願いしますって言われても……」
『そこをなんとか……』
蓮が渋っている間もミルクとココアは粘っている。
「んー……。少し考えさせてくれませんか?」
萌が彼女らに静かに言った。
「実は僕達はベルディにきてまだ日数が経っていなくて、まだまだ分からないことが多くて……」
「そうですか……」
「突然、押しかけてすみませんでした! 一応、考えてほしいのです」
『分かりました』
「明日の開店日を楽しみにしてますね」
「今日はこれで失礼します!」
彼女らは店を出、それぞれの家路についた。
その頃、蓮達は、
「ベルディ国立勇者学校高等部の生徒が押しかけてくるなんて驚きだよな。まさか、この店で職場体験させてくれなんて……」
「そうだね。職場体験があの子達の単位に関わるなんて……」
「そのことについてショコラさんに訊こうかなと思ってて……」
「分からないことがあったらショコラさんに訊いた方がいいよね」
と2人で話していた。
彼らは軽ワゴン車に乗り、ショコラが経営しているホテルまでそれを走らせ、駐車場らしきところに止めた。
「いらっしゃい……あれ、蓮さん達、どうしたんですか?」
ショコラが目を丸くしながら2人を見た。
「こんにちは。突然、押しかけてすみません。早速ですが、今日は少し訊きたいことがありまして……」
と話を切り出した。
ショコラはいつもの営業スマイルで、
「ここにきたということは分からないことがあるんですね?」
と2人に問いかけると、
『ハイ』
と返事をした。
「先ほど、ベルディ国立勇者学校高等部の生徒が2人、きまして、僕達の店で職場体験をさせてほしいと言ってまして……」
「それで、そのことについて説明してほしいと思い、ここにきました」
と返事のあとに続けるように言った。
「職場体験ですね……。ベルディ国立勇者学校に限らず、ベルディにあるほとんどの学校は職場体験の制度を導入しています」
「それはなぜですか?」
「たとえ、勇者になれたとしても強くなければ意味がないのです。弱い勇者や勇者以外でもいいですが、彼らはなんでもいいから仕事に就かなければなりません」
「ハイ」
「今の私達みたいな立場ですね」
「そうですね。仕事をしなければ生活を営むことができないので、勇者として活躍できなくなった時のために勇者以外にもたくさんの職業が存在しているんだよということを知ってもらうというものです。職場体験は単位に確実に影響されます」
「なるほど」
「だから、あの子達がこの店で職場体験をやらせてほしいと言ったんだ……」
「そういうことです。よって、職業の視野を広げるというか、これからの人生で困らないようにと言った方がいいですね。それで、蓮さん達はその学生を引き受けるんですか?」
とショコラは蓮達に相槌を打たれながら、説明をし、彼らに問いかけた。
「職業職場がどういうことか理解できていなかったので、少し考えさせてほしいと萌から言いました」
「だから、私に説明してほしいと言ったんですね?」
「ハイ」
「では、私から訊きます。あなた達はその学生を引き受けますか?」
「ハイ」
「引き受けようと思います」
「では、明日にでもその学生に結論を告げた方がいいですね」
『ハイ! ありがとうございました!』
「いえいえ。帰るときは道中に気をつけてくださいね!」
「お忙しい中、説明していただきありがとうございました」
「失礼します」
ショコラが見送る中、蓮達は軽ワゴン車に乗り、自分達の店に戻ったのであった。
【作者より】
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2015/06/17 本投稿
2015/06/17 後書き欄追加