第13話 いざ、ベルディに『ヨウガシ革命』を!
前日ギリギリまで蓮達は『異世界洋菓子店・フェアリー in ベルディ』のプレオープンの準備をしている。
「カスタードプリン、いい感じでできるといいね」
「そうだな。他の洋菓子もいつも通りに作れればいいんだけどね」
「お客様は喜んでくれるかなぁ?」
「それ! 僕も同じことを考えてた。『洋菓子』を知ってもらえるかが不安だな……」
彼らは話しながらプリン型がたくさん置いてあるトレイを冷蔵庫に入れて固める。
「美味しくできますように……」
2人は冷蔵庫のドアを閉め、美味しくできるようにお祈りし、1人ずつ風呂に入り寝床に着いた。
翌日……。
「おはよう……。お兄ちゃん、早いね」
萌が起きてくると、蓮がクッキーを焼きながら、シュークリームを大皿に乗せていた。
「おう。朝ご飯は喫食スペースに置いておいたよ」
「うわーっ! リゾットだー! いただきまーす!」
萌が今食べているリゾットは蓮がパソコンで調べて作ったものである。
見た目からすると赤いため、おそらくトマトベースにしたものだろうか。
「美味しい! あれ、お兄ちゃんは食べないの?」
「僕は萌が起きてくる前に食べたから大丈夫だよ」
「ふーん。なら食べちゃおう!」
彼女がリゾットを食べている間に、クッキーが焼き上がり、彼はそれを大皿に盛りつける。
「クッキーも焼きあがったんだね! カスタードプリンは?」
「それは2人で見よう」
「うん!」
彼らは冷蔵庫に向かって歩き始めた。
そのドアを開けると……。
「凄い! 全部、きれいにできてる!」
「よかった。これで安心して他の洋菓子を作れる!」
マドレーヌやチーズケーキなどを作っているうちに、開店の時間になった。
外にはすでに何人かのお客様とショコラ、チョコが混じっていた。
彼らは自動ドアから姿を現し、
「いらっしゃいませ! 『異世界洋菓子店・フェアリー in ベルディ』へようこそ!」
お客様から意外にも拍手が起こる。
「では、お入りくださーい!」
あまりにも意外すぎたため、少し照れながら彼らも店内に戻る。
「これがウワサの『ヨウガシ』というものか!」
「美しいわ」
「これ、可愛い形してる!」
「美味しそう!」
「あっ、食べるところもあるよ! なんか買って食べよう?」
「うん!」
ベルディの人々が各々気になる商品を選んでいる。
「本日限定でこちらにある商品を無料で提供させていただいております。とった商品はあちらの喫茶店食スペースで食べることができますので、是非はじめて食べる『ヨウガシ』を味わっていってください!」
蓮がそう言うと、
「む、無料!?」
と彼らは揃って素っ頓狂な声を上げた。
「ハ、ハイ」
「じゃあ、お兄さん、全部1個ずついただくわ!」
「ありがとうございます!」
ある小さな女の子を連れて来店した親子は……。
「ねぇ、ママ、これ食べたい! シュー……? おねぇちゃん、これなあに?」
「今日は特別よ? あっ、こちらは金貨何枚かしら?」
「これはシュークリームです。中のクリームが美味しい食べ物です。今日はプレオープンということで、ベルディの人々に『ヨウガシ』を知ってもらうことを目的に本日限定で無料にて提供させていただいております」
萌はその親子に丁寧な対応をしている。
「おねぇちゃん、いいの?」
「いいの! 私からも特別だよ!」
「無料ならば私も何かいただこうかしら」
「どうぞ。もしよろしかったら入口付近にアンケートもありますので、是非ご協力お願いします」
「ありがとう」
すると、ショコラ達が蓮達に声をかけてきた。
「蓮さん達、凄いです! 広告だけなのに、お客さんがひっきりなしにきてますよ!」
「僕も驚いていますよ! 全然こないかなと思ってましたもん!」
「ショコラ、大げさだよ。無料だから食べてみようと思ったからじゃないの? そうだ、萌のオススメを訊こうかな?」
「私のオススメはあちらのシュークリームです! 他の商品も美味ですよ!」
「じゃあ、全部1個ずつ買おう!」
「私も全部1個ずつ買います!」
「ありがとうございます!」
こうして、暗くなる頃にはすべての商品がきれいになくなり、その日はこれで閉店した。
「なんか、久々に楽しかったな……。洋菓子を作って、売って、お客様の笑顔が見られて……」
「そうだね。いつもならお父さんとお兄ちゃんが作って、お母さんと私がレジ打ちだもんね」
「あっ、そういえば、アンケートでも見てみよう!」
蓮がアンケートの回答箱を持って調理場に駆けつけた。
その回答は……
『どのヨウガシも美味しかった』
『見た目の美しさに感動した!』
『店主は若いのにしっかりお客さんに対等に接していたので、これからも変わらない接客態度で維持していってほしい』
などという意見や感想が寄せられた。
「なぁ、萌」
「何?」
「僕達はここで洋菓子店を始めてよかったと思わない?」
「私も始めてよかったと思うよ? お兄ちゃんは?」
「僕もそう思う。さて、『異世界洋菓子店・フェアリー in ベルディ』プレオープン、大成功だ!」
「ワーイ! 大成功! また明後日からも頑張ろうね!」
「うん!」
『異世界洋菓子店・フェアリー in ベルディ』のプレオープンは大成功で幕を下ろしたのであった。