5.運営――人集め(後)
「んで?」
「はい?」
「分かってんだろうが」
「えぇまぁ」
ディードがカザにどう言う事だと説明を求める。数ヶ月と言う短時間で氏族の人数を108人にまで集めたその方法を。
「とは言え、特に特別なことをしたわけではありません」
「ほう」
「食うに困った人々を受け入れた。それだけです」
戦を望む龍が少ないとは言え、争いなど大小合わせれば日常茶飯事だ。氏族に受け入れられなかった人間も多い。
だからある程度の人数まで集めることは決して難しい話ではない。難民を受け入れるだけでいいのだから。
「問題はここからです。今はまだ食料を自給できています。しかし、人数が増えると当然このままでは限界が来る」
「畜産を大規模にしようにも、そもそも数がいないって事か」
「そうですね。加えて農業関係の知識も不足していますので――」
「まぁ、人材を探す、育てる、奪う……くらいしかねぇわな」
ディードは無精髭を撫でながら呟く。
「育てるのは論外だ。元の知識がねえんだからな。となると探すか奪うかだが」
「同盟を組むのも選択肢に入れておきたいですね」
同盟の不安要素は龍の供物だ。そう考えるとディードの龍印は非常に危うい。
世界の全てが欲しいなどという戯言に龍達がどのような反応を見せるか未知数であるからだ。
「よく考えると俺の龍印って厄介だな」
「さほど頭を回さなくても厄介です。全ての供物と競合すると言ってもいいでしょう」
考えようによっては全てと競合しないよう妥協できる供物でもあるが、それに関してはあの白い龍の胸先三寸で決まる。
「見つかると思うか?」
「無理です」
カザは即答した。同盟を視野に、そう言った矢先にこれである。
「いっそアレだ。人材育ててバラせばどうだ?」
「そんな都合よく龍を捕まえることが出来ますか?」
勿論無理である。普通であれば。
「あの追い出した龍はどうだ?」
「エンカルヴィ様ですか? また無茶苦茶な事を言いますねぇ」
言葉とは裏腹にカザの瞳が爛々と輝き始める。面白い、そう言外に告げていた。
「しかし無償で、と言うのは無理です。最低でも供物を差し出さねばなりません」
「食い物か」
「そうですね。燻製、卵……それに屠殺前の家畜を少々と言ったところでしょう。ただし」
「俺らの龍印がそれを許すか、だろ?」
「その辺りは長である貴方に投げますね。あの白い龍は底が知れない」
あの龍はディ-ドの言葉しか聞かない節が見られる。元氏族の長であるカザは白い龍の性格をある程度見抜いていた。
生まれて間もない龍であり、しかも氏族を作ったのはこれが初めて。加えてその方法が氏族の乗っ取りである。
おそらく敗者の言葉など価値すらないとすら考えているだろう。無邪気であるがためその気が強いと言っても良いかもしれない。
今はいい。ディードは氏族の運営について何も知らないのだからカザの言う事を信じて実行するしかない。
しかしある程度ディードが運営のコツをモノにすると今度はカザをどう扱うのか。そしてあの白い龍はどういった行動を取るのか。
覇を唱えられる器かどうか、見せて頂きましょうかね。カザの呟きは誰の耳にも残らなかった。
遅くなり申し訳ありません。
仕事の合間に少しずつ書き溜めています。
とりあえずアリフェレットの時のように全て書き直す事にならないようにしますので、気長にお付き合いして頂ければと思います。