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1.開幕――出会い

自作カードゲームをせっせと考えていたらいつの間にか書いていた作品です。

プロローグ部分(三話くらい)だけ書きあがったので投稿させて頂きます。

「クソッタレが! どいつもこいつも……ッ!!」


 肉食動物の毛皮で編まれたコートを着る無精ひげの男は毒吐いた。脇腹を鋭い刃で斬られ、未だに血が流れ続ける。

 鬱蒼とした森の中に命辛々逃げ込んだ。そんな風に見える。


「南の連中ヤツラめ、龍のご機嫌取りの為だけにこっちをメチャクチャにしやがって――!」


 龍とは集う人間の旗印だ。それは龍印シンボルという言葉が作られるほどに定着している。

 龍はその強大な力で庇護する代償として自分の好物を献上させる。そうして龍と人間は共存してきた。

 龍なくして人間は集まらない。それはこの世界の常識だった。そして龍に供物を捧げるためならば同類と殺し合う事も躊躇わない。

 自分たちの為に、我らが龍の為に。殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して――そして歴史を積み上げてきた。


【お~、メのマエにニンゲンがヒトリ】

「あん?」


 足に力が入らなくなったのか、野に倒れた男に話しかけるのは一匹の龍。白磁のような美しい鱗に覆われた巨龍が音も無く男の傍に顕現していた。


【フカいキズ。アナタもうすぐシぬよ】

「……だろうな」

【シにたくない?】

「もうどうでもいい。龍を殺されて、俺らの氏族クランも潰れちまった。……今更、他の氏族クランに降れるかよ」


 龍を中心とした人の集まりを氏族クランと呼ぶ。同じ氏族クランに所属する者は家族も同然であるが、余所の氏族クランに所属する者への風当たりは相当厳しい。

 唯一の例外が氏族クランへと降った――つまりは明確に下へつくと約束した者達だ。但しそれらの者達の扱いは氏族クランによって様々だ。

 家族のように扱うも、家畜のように扱うも全ては氏族クランの長次第である。


【ジブンのクランをツクらないの?】

「……ハッ、お前が龍印シンボルになるなら考えてもいい」


 人間と龍は価値観が違う。龍を龍印シンボルとして担ぐのであればそれに見合うモノを龍に提示しなくてはならない。

 死にかけの人間が龍に提示できるものなど何もない。だから男の言葉は冗談の類であったのかもしれない。


【うん、いいよ】


 だから、この龍の言葉は予想外のものに違いなかった。


「は?」


 間の抜けた声と共に、脇腹の裂傷が消える。突然起こった変化に戸惑うばかり。


【シンボルにしてくれるんでしょ?】

「……何が望みだ?」

【キンギンザイホウ?】

「ふざけんな」


 氏族クランが潰れた男にそのような財などあるわけがない。男は龍の言葉を切り捨てる。


【さすがにジョウダンだけど。でもタべモノならホしいかな】

「食い物ねぇ……例えば?」

【ニクとかタべたい】

「それが供物で本当にいいんだな?」

【うん!】

「……後で宝石が欲しいとか言わねぇよな?」

【タべモノイガイモラってもしかたないし】


 どうやらこの龍にとっては食べ物以外に価値を見出せないらしい。

 金こそ全て。人の悪意が素晴らしい。書物が至高――龍は好奇心の方向性が定まっており、それ以外には見向きもしない個体が多い。人間にとっては石ころ以下の価値でしか無いものでも、龍にとっては垂涎の品であることは日常茶飯事だ。

 龍が龍印シンボルに甘んじるのは自信の好奇心を満たすためでしかない。氏族クランを容認するのも、効率よく自分の欲するものを手に入れる手段だからだ――と言われている。


【ホカのヒトタチはどうしたの?】

氏族クランに降った」

【ナカマハズれにされたんだね!】

「嬉しそうに何言ってんだテメェ!」


 あながち間違っていないだけに男はそれ以上何も言えなかった。男以外の者は相手に屈した。血の気の多い彼は屈することをよしとせず最後まで抵抗した。その結果が今だ。


「まぁ、ともかくだ。まずは拠点と人手だな。いつまでも一人氏族クランじゃ笑い者だぜ」

【ワタシもイッショにワラう!】

「テメェは当事者だろうが!」


 全てを奪われた男は白い龍と出会ったことにより戦乱の中心へと導かれる事になる。その切欠となる魔法の言葉が白い龍から紡がれるまで、あと少し。

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