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life and death a betting

作者: 葛沼純

 声が聞こえる。聞いたことあるような、ないような。


『――んで! どう――してなの!?』

『―――! ねえ―――――!』


よく聞こえない。耳を澄ましてみても、変わりがなかった。

あれ……?なんだか……体が軽くなって――――


『――――。また――――会いま―――』




 なんだ。眩しい。すごく、光が……まぶしくて……


「ん…………あ、あれ? ここは……?」


キョロキョロと辺りを見渡すと一面が白の世界。まるで世界から闇が消えたみたい。なにもない。家もビルも、人も。

いや違う。目を凝らすとうっすらと人のようなものが見えた。僕は吸い寄せられるようにそれに向かって歩いた。


そこもなんだか不思議な場所だった。

人がたくさんいる。けれど、みんなどこか虚ろで生きている感じがしない。それに――――


「あっ! 涼!」


不意に、後ろから肩を叩かれた。僕はビックリしつつ後ろを振り向くと、見知らぬ女性がニコニコとしていた。


「あなたは?」

「えっ……も、もうなに言ってるのよ涼! 私よ、私。瑠璃!」


瑠璃…………とても身近な言葉のように感じる。けれど……それがなにかは思い出せない。きっと、大切な、忘れてはいけない言葉なのに…………


「ごめん。思い出せない……」

「そ、そう――――うん。おかしくないよね。記憶が無くなる人も珍しくないし」

「え? なにか言ったかい?」

「ううん。なんでもないよ……それより、涼はここがどこだか分かってる?」


どこ。と言われても、僕はここに来たばかりだ。右も左も分からないのに、ここがどこかなんて知るよしもない。むしろ僕が聞きたいくらいだ。


「その顔じゃサッパリって様子ね…………うん、じゃあ私が教えてあげる! ねえ、涼は人が死んだらどうなると思う?」

「どうなるって、死ぬに決まってる。まさか輪廻転生して生まれ変わると答えた方がよかったかい? あいにく、僕は無宗教だから」

「そうね。転生ってのは半分当たりで半分間違いかな。人はね、死ぬと肉体からたましいが出ていって゛ある所゛に行くの。そこで霊は賭けをするのよ」

「賭けって…………賭けごとの事?」

「そう賭けごと。けどただの賭けじゃないわ―――――命懸けの賭けよ」


命懸け? 何を言ってるんだ? いや、そもそも肉体から霊が出ていくって所からおかしい。死んだらそのまま死ぬだけだ。その後も前もない。


「怪訝な顔をしないで。これがマトモな話ではないことは重々承知してるわ。けれど本当のことなの…………続けるわね。そこではルーレットが行われるの。カジノなんかにある赤と黒のやつよ。あれがクルクルと回る……そして玉が赤に入れば、生き返る事が出来る。けれど黒に入ると…………死よ」

「だから何を言ってるんだ!? ルーレットで生き死にが決まる? 中学生じゃあるまいし、そんな莫迦げた話を信じるわけ――――――――え? お、おい!」


 目の前で起きてる光景が信じられなかった。とてもふざけていて莫迦げていてまるで笑えない喜劇だ。


スッポットライトに照らされた男の頭上に現れたのは巨大なルーレットに道化の化粧にタキシードを着た不気味なディーラーが不適に笑っていた。


『ルーーーレット!! start!!!!!』


妙に甲高い声を合図に、ディーラーの手から玉がルーレットに投げ込まれた。


クルクルと回る玉を、大勢の人間が固唾を飲んで見てる。スポットライトの男も祈りのポーズをしながら何かを呟いている。


クルクルクルクルクルクル……クル…………クル…………


『ブラーック!!!! you're death!!!!!!!!!』


それは一瞬の出来事だった。耳をつんざくような声に苦悶してすぐ、目の前にいたスポットライトの男の姿は跡形もなく消えていた。

『ヘーイ。nextchallengere????』


「おい……今のは何だ?」

「言った通りよ。ここは命懸けの賭け場…………さしずめ、生と死の賭け。アイツ風に言えば、life and death are betting」

「ますます意味が分からない。いや、理解は出来た。目の前で起こったから。けれどこれはなんだ? ここはなんなんだ?」

「これ以上の説明はないわよ? そうね、事故とか病気とかで死ぬのは死んでないのよ。その時点ではまだ生きているの。確実に生か死かが決まるのはココ。ここで赤を引けば、すぐに目を覚まして現実に戻る事が出来る。けれど黒を引けば、現実に戻らずに永久の無を堪能することになるでしょうね」


ダメた。ダメだダメだダメだダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメダメ……………………

頭がおかしくなる。気が変になる。こんなことなら、いっそのこと殺してくれ…………


『nextchallengere―――――――――you!!!』


「うっ……え? 僕?」


スポットライトが照らすのは、間違いなく僕だ。爛々と眩しく、思わず目を瞑ってしまいそうだ。


『ルーレットーー!!!!!』


「あ、ちょ、待って――――――」


『start!!!!!!!!!!!!!!!』


僕の運命を決めるちっぽけな玉は、勢いよくルーレットに投げ込まれた……





「ん………………痛っ…………」


体の痛みで目が覚めた。痛むのは腕、胸、肩、足……くそ、全身じゃないか。


「誰か、助けて……」

「大丈夫かしら…………って涼くん!? 目が覚めたのね!!! お父さん、先生呼んできて!」

「お、おう分かった!」

「母さん……父さん…………」

「良かった……本当に生きているのね、涼くん……」


母さんの温もりが伝わってくる。痛みが消えていくようだ。俺は――――――生きている、のか。



「………………ええ、まだ傷などは残っていますが、気を使う程ではありません。心音も落ち着いてますし、もう心配はないでしょう」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」


医者は僕の体を色々見ると、病室から出ていった。病室には僕と両親だけだ。


「なあ母さん、父さん。僕は……」

「………………そうね。黙っていても始まらないわよね…………」

「そうだな。涼。今から話すことは、あまり良い話ではない。それでも、聞けるか?」

「あ、ああ」

「よし………お前はあの日、二人で出掛けていた。お前と、恋人の瑠璃ちゃんだ」


瑠璃……瑠璃……?


「車は海に向かって走っていた。けれど、悲劇とは突然起こるものだ」


瑠璃……どこかで、その名前を……


「お前たちが車を走らせていると、対向車線を走っていたトラックが急に進路を代えて、お前たちの乗る車に正面衝突したそうだ。車は全壊、二人とも酷い状態だったらしい」


『なんで! どうしてなの!?』

『涼! ねえ返事してよ涼!』


「直ぐに病院に運ばれたけど、瑠璃ちゃんは…………」


『…………涼。また……会いましょう……?』


「う、う……うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


「おい涼!?しっかりしろ涼!?」


「瑠璃! 瑠璃!! 瑠璃!!!! 瑠璃!!!!!!!!!!!! 瑠璃いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」


「せ、先生だ! 早く!!」


「ああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!! 瑠璃いいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!」








「―――しても災難よね瑠璃ちゃん。小さい――――に病気で生死をさ迷って――――奇跡的に病気は治ったのに、事故―――――――可哀想に」


ガラガラガラ


ひとり。ココにいるのは、僕ひとり。



「待っていてね……瑠璃」



側には果物とナイフ。僕はおぼつかない手でナイフを握った――――――――



「いま、会いに行くよ……………」






思いつきで書いてみたprat3


生と死の賭け。おー怖いよー

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