エピローグのプロローグ
暇つぶし程度に御覧ください。
後日談、要するに事件が終わった後のお話。今回は一風変わった事件が解決された後の、少年少女の普通の後日談をお楽しみください。
◇◇◇
普通なら暇で暇でしょうがない病室のベッドの上、ただ今回は違った。なんというか、めちゃくちゃ面倒くさい事件の調査に駆り出されて、ズタボロになるまで駆け巡って、やっとの事で事件を解決した後の入院なら、暇だのなんだの言う前に二度と仕事なんて御免だという気分だ。
「まだ体中が痛いぜ…」
呟きは虚空に消えていき、目が覚めてしまったことを深く後悔する。一週間経って多少マシになった程度で、激痛であることには変わりないこの傷の痛み、ナースコールして睡眠薬か痛み止めを打って貰おうかと思うほどだ。更に、ここにはおそらく誰も見舞いには来ない。というか来れないだろう。この病院は機関が経営していて、このフロアは機関の人間が入院しているところ。来れるのは仕事を持ってくるお偉いさんの使い、もしくはーーー
「何考えてるんだ俺は…」
自分勝手な妄想をありえないと捨て去る。元々あいつは機関の人間ではなく魔術課の幹部クラスの娘というだけだ。これでいい。このまま元の生活に戻れることがあの少女にとっても幸せなのだ。
「やっぱ痛み止めだけでも打って貰うか。」
感覚が鈍い右手の方にあるであろうナースコール探そうとして気がつく。布団が妙に盛り上がっている。嫌な予感がしながら布団を捲ると、
「…」
「あらー、ばれちゃたかてへぺろ☆」
上司がいた。
「おいクソ野郎、なんで俺の布団の中にお前がいるんだよ。」
「それは君と新しいステップにって、魔術はダメよ!?」
ばれないように殺ってやろうかと思ったがばれてしまったようだ。まあ、殺ってしまえばこいつは俺の布団から簡単に排除できるであろう。が、それよりも先に聞きたいことがあった。
「お前、あいつをちゃんと元の生活に戻しただろうな?」
俺の上司は元々の糸目をより細めてから、
「君たっての望みだったからね。権力と話術をフルに使って元の高校に通わせることに成功したよ。まあ、流石は僕だね!」
「そうか。それならいい。ああいう人間はこっちの世界に来るべきじゃないからな。」
「うーん、でも…まあいっか。」
「他になんかあるのか?」
「いや、べっつにー。」
そう言うと変態上司は薄ら笑いを浮かべながらドアに向かい、ドアを開けると振り向いて、
「ナースさんに痛み止め、注文しとくね。」
そう言って窓から去って行った。窓ガラスを突き破って。
「…どうすんだこれ。」
俺は初夏になろうとする風を受けながら途方に暮れるのであった。