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超能力同盟

作者: Aki.

参考。Wikipedia『超能力』

 あなたは超能力を信じますか?


 世の中にはありとあらゆる不思議で満ち溢れているものなのです。


 このお話はそんな不思議な力を使うことができる少年少女達のお話……






………


「ふぁ〜……眠…」


 現在、8時27分。この物語の主人公である『二宮晴希ニノミヤハルキ』が起床した。


「あと3分で門閉まっちまうな…」


 晴希はとある町のとある私立高校に通っている。その私立高校の授業開始時刻は8時30分である。晴彦の家から学校までは徒歩約10分。現在パジャマである晴希が間に合うことは無いだろう。


「……」


 ベッドから起き上がり制服に着替える晴希。この時点で29分なので遅刻は決定である。しかし急ぐ様子はまったく見せず、のんびりと家の玄関で靴を履いている。


「じゃあ行くか……」


 そう言った瞬間、晴希の姿が家の玄関から消えた…





「キンコンカーン」


 この音は学校のチャイムである。


 現在、8時30分。二宮晴希は学校にいた。自分の下駄箱から上履きを出して、履き替えていた。


 ここで謎が一つできないだろうか?…晴希は29分まで家にいた。学校まで徒歩約10分かかるというのに遅刻もせずに登校出来ている。Why?


 そうこうしているうちに晴希は自分の教室である1年A組にたどり着いた。


「二宮晴希」


「へぇ〜い」


 担任の出席確認したと同時くらいに晴希は教室に入った。


「二宮…遅刻だ」


 担任の『滝川恭平たきがわきょうへい』は溜め息を吐きながら晴希見た。


「はぁ? なんでだよ? 普通に門通れたらセーフしょ?」


「30分までに教室だ。二宮」


「ぶー」


「わかったら早く席に着け」


 ぶーぶー言いながら自分の席に座る晴希であった。


「今日も遅刻だね」


 晴希が席に着き、透き通った声が晴希の後ろから聞こえてきた。


「うっせぇ」


「君の『力』を持ってして、どうやって遅刻できるのか理解出来ないね」


 晴希の後ろの席の少年…色素の薄い金色の髪に深海を彷彿とさせる蒼い瞳、そして英国の王子とも思える甘いマスク。これだけ聞けばわかるだろう。彼はイギリス人の母を持つハーフ。名前は…


八雲玲央ヤクモレオ


「はい」


「せんせ〜い。八雲くんの髪は校則違反なんじゃないですかぁ?」


「二宮。お前は入学してから何回同じ質問をするんだ?うちの高校は頭髪に特に規定はない。第一、お前の髪色だって人のこと言える色ではないじゃないか」


 晴希の高校は珍しく髪の毛の色、長さには規定はない。よって、この学校の生徒は髪型は個性豊かである。ちなみに晴希はキャラメルブラウンの9トーンである。


「確かに君の髪色は隣の高校なら違反になってるだろうね」


「金髪のお前に言われたくねぇよ……」


「欠席は四条恵シジョウメグミだけか…。」


 そう言いながら、滝川は出席簿を閉じる。


「連絡なんだが、最近、学校で立て続けに起こっているボヤ騒ぎのことだ。昨日も音楽室近くでボヤ騒ぎが起こった。火を放ったやつはまだわかっていない。そういった怪しい人物を見かけたり、心当たりがあるやつは、すぐに先生に連絡しろ…以上。それじゃあ、一時間目の準備しとけよ」


 滝川はそれだけ言って教室から出ていった。


「今の話…気になるね」


「うぁ?」


 八雲玲央は口元に手を当て考えている表情をしていた。


「ボヤ騒ぎの話だよ」


「別に気になるとこなんてなくね?」


「これが、ただのボヤ騒ぎならね」


「はぁ?」


「最近、頻繁に起こってるボヤ騒ぎには色々と不可解な点が多いんだよ」


 わからないという顔をした晴希は口を挟むことができず、八雲玲央は話を続ける。


「まず、どうやって火を着けたのかわからない。なぜなら、昨日、音楽室近くで燃えていた木製の柱には火を点ける火種すらなかった。意味がわかるかい? 木を燃やすなんてことは、ライターのような着火物だけでは簡単にできないんだよ? ということは、その柱自体から燃え始めていたんだよ」


「意味わからねえよ。それに、どうして音楽室近くの柱が燃えたことを知ってんだ?」


「それは、その現場を今朝見たからだよ」


「あっそ」


「とにかく、このボヤ騒ぎには普通ではない何かが関係しているはずだよ」


「考えすぎだと思うぜ…」


 そうこうしているうちに、一時間目の教科の先生が教室に入っていた。


「それでは授業を始めま〜す」


 今年、赴任したばかりでまだまだ慣れていない若い女の先生が元気良く言ったが、すでに晴希は夢の世界へ旅立った後であった…






「キンコンカーン」


「むはっ!?」


 よくわからない声を出しながら目を覚ました晴希。


「もう学校終わったよ」


 八雲玲央は呆れながら言う。学校に来て、1日中寝ていた晴希は何のために学校に来ているのだろうか?


「出席点をもらうためだ」


「君は何を言っているんだ? まぁ、そんなことより早く行かないかい?」


「どこにだよ?」


「ボヤ騒ぎがあった現場」






………


 晴希達は音楽室近くの柱の前にいる。ボヤ騒ぎがあったとされる場所には焼けた後の黒い煤が付いていた。


「ちょっと不自然な気がしないかい?」


「うっ、う〜〜ん…」


 八雲玲央の言葉にあまり納得できない晴希であったが、思い出したように八雲玲央にこう言った。


「思うんだけど、お前の力を使えばすぐに犯人がわかるんじゃないか?」


「その通りだね」


 不適な笑みを浮かべた八雲玲央は、黒い煤の付いた柱に左手をかざした。


「集中するから静かにしてね」


 じゃあ、俺を誘うなよ。と晴希は言ったが、八雲玲央は聞く耳持たず、静かに目を閉じた。


 それから、十数秒後…


「…やっぱり……でも何で彼女が? ………『力』がまだ充分に扱えないのか……それとも……」


 八雲玲央は顔をしかめて、ブツブツとよくわからないことを呟く。


「………」


「で、何がわかったんだよ?」


 目を開け、晴希の方を見た八雲玲央は、笑顔でこう言った。


「全部わかったよ。犯人も、どうやって柱が燃えたのかも…ね」


「サイコメトリー……か。便利な『力』だな」


 サイコメトリー…物体に残った人の強い思念を読み取ることができる力。つまりは、その当時の情景などを詳しく知ることができる。


「そうでもないよ。必ずしも、残留思念を読み取れるわけじゃないからね」


 鼻で笑い、肩をすくめる動作をする八雲玲央。


「それよりも、君の『力』の方がよっぽど便利だと思うけどね」


「ばぁか。俺の『力』は一回使うだけでもかなり体力を消耗するんだぜ?」


「僕の『力』もそうだよ。それより、いつも寝てる理由はそれなんだね…」


「そんなとこだな」


 凛として言う晴希に、八雲玲央はため息を吐いた。


「そんなことより、犯人をどうするかを決めないとね」


「そいつ捕まえて、自分がやったって、先生に自白させればいいんじゃないか?」


「そんな簡単なことじゃ……」


 言葉の途中で八雲玲央は窓の外を凝視する。


「……あれ、見て」


「んあ?」


 八雲玲央が指差した方向にはマンションがあり、煙が上っていた。


「火事か?」


 晴希はいつになく真剣な声色になっていた。


「みたいだね。それより、あのマンションには……」


 何かを思い出そうとするように、考えこむ八雲玲央を晴希はじっと見つめていた。


「あのマンションがどうかしたのか?」


「思い出した!! あのマンションにはクラスメイトの四条恵さんが住んでいる!!」


「四条は確か……今日欠席だったよな。それだったら、あの火事に巻き込まれてるかもしれないな」


「巻き込まれてるよ。なぜなら、あの炎は彼女が起こしたはずだからね」


「どういうことだよ?」


 言葉の意味がわからず、すぐに聞き返す晴希。


「それよりも、早く彼女を助けに行こう」


 八雲玲央は晴希の疑問には答えず、救出の意を唱える。


「…そうだな。じゃあ、行くぞ」


 晴希は手を差し出し、八雲玲央はその手に触れる。


「…『力』を使うんだね」


「あぁ、緊急事態だからな。早く助けに行こう」


 そうして、晴希達はその場から姿を消した。






………


 燃え盛る炎が立ちこめる部屋に晴希達は姿を現した。


「四条!!」


「四条さん!!」


 晴希と八雲玲央は熱さに負けず大きく叫ぶ。


「四条!! くっ……熱いな。早く見つけ出さなきゃ、俺達もあぶねぇ」


「そうだね。早く四条さん見つけ出そう。四条さん!!」


 叫び続ける晴希達だが、一向に四条恵の姿を見つけることができない。


「クソッ!! どこにいんだよ…」


「あの部屋じゃないかな!?」


 探し続けた晴希達は1つの部屋を見つけた。


「この部屋なのか!?」


 そう言った晴希は扉を蹴り破った!!


「四条!!」


 その部屋には、布団に包まった四条恵の姿があった。


「私は……何もやってない……私のせいじゃない………私は」


「四条!! 落ち着け!! とりあえず、こっから出るぞ!!」


 何かに怯えた様子がする四条恵の手を掴み、晴希は『力』を使った…






………


「はぁはぁ……危なかった〜〜」


「危機一髪とはこのことだね…」


 部屋から学校の屋上に『力』を使って移動した晴希達。


「二宮くんと八雲くん? あれ? 私、なんで学校の屋上にいるの?」


 状況がまったく読み込めない四条恵。


「四条さん。落ち着いて。それは今から僕が説明するよ」


八雲礼央は額の汗を拭いながら、宥めるような声色で言った。


「とりあえず、今ここがどこだかわかるね?」


「えっと……学校の屋上だよね?」


「じゃあ、四条さんはさっきまで、どこにいたかわかる?」


「えっ?…」


 消防車のサイレンの音が街に鳴り響いていた。それに気付いた四条恵はバッと振り向いた。


「…私の…家?」


「そうだよ」


「じゃあ、あれは夢じゃなかったの?」


 四条恵は燃えているマンションを見て、何とも言えない表情をしていた。


「でも、何で私はここにいるの? 私はあの炎の中にいたはず……」


「それは俺達が助けたからだ」


 膝に手をついて休憩していた晴希がついに口を開いた。


「どういうこと?」


「俺達があの炎の中まで行ってお前を助けたってこと」


「詳しく話すと、彼の持つ『力』を使ってね」


「えっ?」


「『テレポーテーション』つまり瞬間移動だ」


 テレポーテーション…物体を離れた空間に転送したり、自分自身が離れた場所に瞬間的に移動することができる。


「その力を使って、俺達はあのマンションに行き、あんたを見つけだし、脱出した」


「納得できたかな? 四条さん」


「う、…うん」


 簡単な説明ながらも、四条恵は納得できたようだ。


「それより…四条さん」


「なっ、なに?」


「最近、学校であったボヤ騒ぎとあのマンションの火災…全部四条さんが引き起こしたもので間違いないね?」


 八雲礼央の言葉に動揺した四条恵。その様子から察するに図星のようだ。


「だって……だってしょうがない!! いきなり色んな場所から炎が出てきたんだもん! 恐くて意味がわからなくて……それでさっきも突然炎が出てきて…」


 四条恵は自らが持つ訳のわからない力に戸惑っていた。


「………」


「私……どうすればいいの?」


 困惑するにはしょうがなかった。ある日突然身に付いた謎の力…その力があらゆるところで災いに変わる。四条恵は、まるで自分が人に害なす悪魔だと思ってしまったのだろう。


「俺もさ…ある日突然自分の力に気が付いたんだよ」


 晴希は俯きながらも、淡々と話し始めた。


「小6ぐらいだったかな? 家族はみんな家にいて、俺は自分の部屋でゲームをしてた。そしたら、急に大きな音がなって、気になってリビングの様子を見たら……」


「…見たら?」


「父さんと母さんが血塗れで倒れてた」


「……ッ!!」


「横には顔に傷のある大柄な男が立っていて、俺は恐くなって押し入れに隠れた。そして、リビングからこう聞こえた…『この家にいる奴は皆殺しにしろ!!』俺は今までにない恐怖を感じたよ。それで願ったんだ…『ここから逃げたい』 …で、気が付いたら俺は近くの公園にいた。それで俺は無我夢中で警察に駆け込んだ。そのあとは警察が全部解決してくれたよ。俺の家にいた犯人を捕まえて、家族みんなを病院に連れていって……父さんと母さんは助からなかったけどな」


 余りに痛々しい話に誰も声を発することが出来なかった。


「俺はこの事件をきっかけに自分の力に気付いた。そして、思ったんだ。この力で人の役に立とうって」


「…二宮くん」


「今はまだ四条はその力を使いこなすことが出来ないかもしれない。俺も最初はそうだった。力を使うたびに思ってもないところに飛ばされたりしたしな」


「ほんとに?」


「あぁ、だから四条も諦めんな。絶対に大丈夫だ。いつか、その力が四条のためになるときがくるから…」


 晴希は四条恵の瞳をじっと見つめて、自分の思いを伝えた。


「ありがとう。二宮くん」


「いいって……それより礼央後は頼んだ。俺はもう無理みたいだ…」


「わかった」


 八雲礼央が頷いたと同時に晴希は地面に倒れた。


「えぇーー!! 二宮くん大丈夫なの!?」


「大丈夫だよ。寝てるだけ。彼の力は物凄くエネルギーを使うんだ。使い過ぎるとこうやって強制的に寝てしまうんだよ」


「そう…なんだ」


 そうして、八雲礼央は倒れた晴希を背中におぶった。


「じゃあ、今日はもう帰ろうか」

「あっ、私の家燃えちゃったんだよね…」


 そうであった。四条恵のマンションは彼女の力によって燃えてしまっていた。


「大丈夫だよ。ほら見てみて」


「…?」


 屋上から見えた四条恵のマンションからはもう煙は立っていなかった。…が。


「あれ? なんともなってない?」


 綺麗そのまま、コゲ跡ひとつないマンションだった。


「なっ……なんでー!!?」


「八雲財閥の力を総結集したら、火災なんてなかったことにできるんだよ?」


 八雲礼央は不気味な笑顔でそう答えた。


「…ハハ」


 その話に乾いた笑いしかできない四条恵であった。


 この物語で一番すごい力は彼の財力なのかもしれない…。






………


 翌日。


 今日はいつもよりかなり早めに登校する晴希。その理由は八雲礼央の呼び出しであった。


『明日朝7時半に学校の屋上集合だよ。遅れたら……わかってるよね?』


 こんなことを言われたら晴希は遅刻することはできない。


 そうこうしてる間に晴希は屋上に着いたようだ。


「ちーす」


「5分前か…君にしては上出来だね。やっぱり、力を使ったの?」


「バーカ。今日は普通に登校してきたっつの」


「まぁ、今からする話に寝られたら少し困るからね。今日は大事な話がある」


「……?」


「彼女ももうそろそろ来るだろうね」


 八雲礼央は腕時計を見ながら呟く。


 次の瞬間、屋上の扉が勢いよく開いた。


「ごめんっ!! 遅れちゃった?」


「ギリギリセーフだね。四条さん」


「よ、よかったぁ」


 肩で息をしている四条恵は安堵の溜め息を吐いた。


「で、まぁ朝早くから来てもらったわけだけど、話っていうのは四条さんのことだよ」


 あんな事件があった昨日の今日である。四条恵の力について八雲礼央は色々と調べたようだ。


「四条さんは『パイロキネシス』という力があるみたいだ」


「「『パイロキネシス』?」」


「発火能力のことだよ」


 パイロキネシス…念動力により分子運動を激しくさせることで、火を発生させることができる。


「使用すればここら一帯を火の海にすることができる力だ」


「マジかよ…」


 現にマンションの火災はその一例である。何とか死傷者は出なかったが、次も大丈夫とは限らない。


「だから、四条さんには力をちゃんと使いこなしてもらわないといけない」


「…うん」


「だから、これから毎日特訓して力の使い方を理解してほしい。その時にはもしかしたら晴希、君の力が必要になるかもしれない。その時は力を貸してくれるか?」


「当たり前だろ! 難しいかもしんねぇけど、がんばれるよな? 四条」


「私、がんばるよ!」


 四条恵は二人を見て、大きく頷いた。


「それじゃあ、ここに『同盟』結成ってことでいいかな?」


 八雲礼央は二人の前に手を差し出した。


「とーぜん。四条が力を使いこなさないとたくさんの人が危険にさらされるかもしれないし、四条自身も危ない」


 晴希は八雲礼央の手に自分の手を乗せた。


「ありがとう。私がんばるから」


 四条恵も二人の手に自分の手を差し出した。


「なんかクセェな俺たち」


「いいじゃないか? こういう時ぐらい」


「そうそう。気にしたら負けだよ? 二宮くん」


「そうかよ…じゃあいくぜ!!」


「「「オォー!」」」


 屋上に三人の声が響いた。


 ──……きっと大丈夫だよ──


「ん? なんか言ったか?」


「何も言ってないけど、どうかしたの?」


「いや……」


 誰かがそっと囁いた気がした。

少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。by.Aki.

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