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とある週末の過ごし方

こんにちわ、白カカオです。今日は会社で暇を貰って家にいます。いやぁ…親父の会社で働いてると、楽。では、今回のお話どうぞ。

「ヒロっ。烏賊取って烏賊、あと焼酎も」

「ヒロを使わないで。自分でとりなさいよ」

 今、いつもの四人で飲み会の真っ最中です。僕はシフトに休みを入れてもらい、春花とヘイタは仕事帰り真直ぐ僕の部屋に。ハジメは…残念ながらこの後仕事だそうです。ハジメの職場には、僕のアパートから徒歩十分といったところですが…いつもタクシーを呼んでいます。なんでも、出勤しているところを誰に見られるかわからないから…だそうですが、僕にはそれのどこが拙いのかさっぱりわかりません。ホストの世界にも色々あるようです。

 春花とヘイタは僕の部屋に着替えを置いていっているので、今はスーツを脱いでくつろいでいます。ヘイタは市役所の公務員さん、春花はウエディングプランナーで事務所で働いています。スーツが似合う仕事って、格好いいですよね。

「おぉこわ。恐妻を持つと大変だな、ヒロ」

「ヒロには優しくしてるもん」

 微妙に矛先が僕に向かっているようですが、向かいに座っているヘイタと顔を見合わせ、苦笑で乗り切ることにします。この二人のやりとりは、遠くで傍観してるくらいが一番ちょうどいいんです。

「それよりハジメ、ここでそんなに酔っ払っていいの?」

 ハジメがさっきのくだりで作った焼酎をもう飲みきり、ビールに手を出しています。

「いいのいいの。俺は酒入ってから仕事でた方が、トークが軽快に弾むから」

「アンタのは空回りじゃないの?空気読めないし」

「馬鹿、お前とヒロがしたそうな空気出してるときはお暇するだろ」

「いっ、いつうちがそんな空気出したのよ」

 春花が顔を真っ赤にしていますが、僕は助け舟は出しません。春花が酔っ払うと、所構わずキスしてくるのは事実だし。

「ハジメだって、昨日僕のとこでレジ前でキスしてたじゃん」

 やっぱり何も言わないのは春花が可哀想なので、一言ネタを言っておいてあげます。

「アレは仕事だっつうの。俺だってしたくてしてるわけじゃないの」

 世の中の男が聞いたら全員敵に回しそうなことを、平気で言っちゃいます。あんな美人、したい人五万といるでしょうに。

「枕ホスト」

「うるさい。俺は客のニーズに応える、立派な仕事してるの。それに人前で平気でチュッチュするのはお前の方が酷いぞ」

「…春花には悪いが、それは俺も同意だな」

 ヘイタが苦笑しながら追い討ちをかけます。この後の展開は、もう大体お約束のようなものなのですが…。

「えーんヒロぉ。二人が虐めるー」

 やっぱり、春花は泣き真似して僕に甘えてきます。よしよしと頭を撫でてあげると、嬉しそうに僕を見上げ、キスしてきます。全く、いつも通りの流れです。

「…そういうことするから、言われるんだと思うよ?」

「でも無理ー」

 胡坐をかいて座る僕の膝に、頭を乗せて膝枕の状態になる春花。僕はもう苦笑するしかありません。

「てゆーか、二人とも確信犯でしょ、ねぇ?」

 僕が抗議の眼差しを向けても、二人は無視してつまみに手をつけます。なんなんでしょうか、この仕打ち。

 いきなり、ハジメの電話から着信をつげる音楽が流れます。

「はい、お疲れ様です…えぇー新規?俺今日は大事な用で出勤ずらしてもらったんですけど…いえ、大丈夫です。俺はいいです。あっ、俺の客来たら連絡ください。そしたら行くんで」

 そう言って、溜息をついてハジメは電話を切ります。

「いいのか?新しいお客さんゲットするチャンスじゃねぇの?」

 顔を既に真っ赤にしている、ヘイタが言いました。ヘイタはあまりお酒が強くないので、たぶんあと少しすれば潰れて寝てしまうと思います。その割りにいつもペースが速いので、困ったものです。

「割引キャンペーンしてるときに来る客なんて、細いのばっかだし。そういうのは、まだ売り上げない下の子にあげるさ」

 ちなみに、細いとはあまりお金を使わないお客さんを指す言葉だそうです。ハジメに教えられ、そっちの世界の用語も少し覚えてしまいました。ハジメはお店の売り上げでナンバーツーをずっとキープしているそうです。ハジメが働いているお店は、立川では名前が通ったお店らしいので、街を歩いていると結構振り向かれる程有名人なんだとか。

「だからあんたはナンバーワンになれないのよ」

 春花が膝枕の姿勢のまま口撃します。そろそろ、足が痺れてきたのは我慢することにします。

「俺は無駄球打たないでここまで来たの。このスタイルを変えるつもりはねぇ。好球必打ってやつさ」

「…そこで打つとか使わないでよ」

 打つとは、枕する。つまりお客さんと寝ることです。ハジメ曰く、じらしてじらして、タイミングを見て打つのが売れる人間のする手法だそうですが、僕にはさっぱりわかりません。ホストの世界は難しいです。

「なぁヘイタ。お前ならわかるだろ?」

 ハジメが話をヘイタに振りますが、いつのまにか丸まって寝てしまったようです。別に話に入れずにつまらないとかではなく、お酒が入ると睡魔に勝てないんだそうです。介抱する僕としては、随分楽な相手でいいのですが。

「…今日はまた一段と早くないか?寝るの」

 ハジメが呆れたように溜息をつきます。

「疲れてるみたいよ?ヘイタ。市役所がお引越しするとかで、バタバタしてるんだって」

「へぇ…大変なんだな。じゃ、そろそろ俺も出勤するわ」

 そういうと、ハジメが掛けてあるジャケットに手をかけます。キラキラした光沢を放った生地に、胸元にコサージュという、花を模したブローチをつけています。

「えっ?もう行っちゃうの?」

「あぁ。ヘイタ寝ちゃったし、お前の膝の上にいるペットがそろそろ発情しそうな頃合いだからな」

「しないわよ。別に気を使わなくていいから、ゆっくりしていきなよ。別に遠慮するような間柄じゃないでしょ、うちら」

 春花がそういいますが、姿勢は一向に直そうとしません。

「別に遠慮なんかじゃねぇよ。空気読むのも、良いホストの条件さ。あっあと、来週は久しぶりにカラオケ行こうぜ?ちゃんと休み取るからよ」

「取れるといいけどね。ヘイタにも言っておくよ」

「おぅ。じゃ、いってきます」

「いってらっしゃい。気をつけて。仕事、頑張ってね」

 僕らが手を振り、ハジメを送り出します。ニッと笑って、ハジメが出て行きました。



「ハジメ、行っちゃったね」

 僕が春花に話しかけると、春花が僕の顔を見上げてニヤニヤしています。

「なに?」

 僕が呆れ笑いながら、春花の顔を撫でます。上気して目がとろんとしている春花。もぞもぞと這い上がって、僕に抱きついてきます。

「えっちょっと。ヘイタいんじゃん」

「軟弱者は深い眠りについてるから大丈夫。今は…二人だけ」

「しょうがないなぁ…」

 こうなると、春花は強情なので僕が折れるしかありません。たぶん外では絶対見せないような姿です。

「んっ…」

 またも唇を奪われ、なすがままの僕。…舌は、自粛しましたが。寝てるとはいえ、ヘイタに悪いし。

「ねぇ、ヒロ…」

「全く…ハジメとヘイタに言われたこと、全然省みてないじゃん」

「ぷっ…かもね。ホテル、行こ?」

「またそうやって無駄遣いして。知ってる?僕今お金貯めてるって」

 僕は今、少ない生活費をさらに削って、ある目的の為に貯金してるんです。目的は、春花には内緒で。

「大丈夫、うちが出すから」

「…そう言って、いっつも僕がお金出してるじゃん」

 そう言いながらも、半ば覚悟するしかないようです。こうなったら、春花は言う事を聞かないので。しょうがなく、丸まっているヘイタに毛布をかけてあげます。

「カラオケ、楽しみだね」

 毛布をかけながら、春花に話しかけます。三人とも歌が上手いので、僕はほとんど鑑賞して楽しんでいます。好きなんです、上手い人の歌聴くの。決して、僕が歌うの恥ずかしいからじゃないですよ?

「ねー。なに歌おっかなぁ。ヒロ、何聴きたい?」

「うーん…考えとく。当日にいきなり振るからヨロシク」

 僕がいたずらっぽく笑うと、春花が頬を膨らませます。

「言っとくけど、うちアニソンは歌えないからね?」

「アハハ。わかってるよ」

 ちょっと出かけると書置きして春花に手を差し出すと、子供のように手を繋いできました。こういう子供っぽいところも、愛らしくて可愛いと思うのですが、どうでしょうか?玄関を出る前にもう一度、今度は僕の方からキスすると、満面の笑みを向けてくれます。

 僕の貯金の目的は、結婚資金。すぐには無理でも、働き口を探して、立派な社会人として春花を迎える計画を立てています。隠していますが、実は求人誌とか最近目を通してみたり。

 そんな僕の計画を知るはずもなく、春花は僕の手を引っ張って行きます。…その後姿を見ていると、なんだか僕も今を楽しもうという気持ちになってしまいますから、困ったものです。

すみません、バイト前なので急ピッチで書き上げました。誤字とかあったら指摘していただけると助かります。

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