7.長い話3-追憶-(マコさんとの別れ2)
マコさんから電話が掛かってきた時、僕は初雪を眺めていた。
「タロちゃん。何も言わないでわたしのお願いを聞いてね」
携帯電話の向こうから聞こえるマコさんの声には、一切の感情が消されているようだった。
「そして聞き終わったら、そのまま電話を切って欲しいの」
僕は・・・何も言えないまま彼女の言葉を聞いていた。
(運命なのよ、と幻のエレーンがささやく)
「わたし達は、とても良い恋人同士だったと思うわ」 マコさんはしんみりとささやく。
「でもねタロちゃん。運命には逆らえないわ」 きっぱりと彼女はそう言った。
「わたしはねタロちゃん・・・」 彼女が一拍、言葉に詰まる。迷っている様子が伝わる。
「わたしを信じてくれるのなら」と彼女は言葉を続ける。
「わたしと別れて」
雪
はるか上空から降り積もる雪の群れ。
しんしんと降り続く白く小さな雪が、窓の外から吹き込んでくる。
僕は通話の切れた携帯電話を握り締めたまま、窓の外に顔を出す。
きん、と冷えた空気が僕の顔を包む。
僕の頬から涙が流れ、雪と一緒に熔けては混じる。
そうして・・・僕はマコさんと別れたのだ。
エレーンの予言通りに。