59.そして日常は続く
朝の日差しがわたしたちの部屋に差し込み、やがて鳥たちのさえずる声で目が覚めた。
ふっふーん♪ ふっふふーん♪
キッチンから父の鼻歌が聞こえる。
ハミングしているのは「我が心のジョージア」だ。
シャッシャッとお米を研ぐ音。それがとても心地よくて、わたしは再び眠くなる。
お味噌汁の香り。卵が焼ける音。そしてベーコンはフライパンで踊り始める。
お茶を入れなくちゃ。
とても幸せな気持ちになった私は布団から飛び起きる。
「よ、よく寝れたか」
黄色いエプロン姿の父に親指を立てて答える。
「生まれ変わったみたいよ。お茶、いれるね」
「き、今日から出社か」
「そうよ」
「そうか。か、か、会長さんとタジマさんに、よ、よろしく伝えてくれ」
「わかったわ。ありがと」
短くてぶっきらぼうだけど、父は応援してくれているようだ。
(会社のみんなが私を呼び戻してくれたのだ)
・・・そこで私は唐突に気がつくのだ。 今日という朝はデジャヴのようだと。過去の一日をなぞるようだと。
もしかしたら世界は繋がっているのかもしれない。
しかし世界は同じ事の繰り返しではないのだ。なぜなら・・・
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「お、おはようごじゃいまふ」
あくび交じりに台所へ顔を覗かせ挨拶をするタロさん。
私は父と目を見合わせ、思わず微笑む。
今日から私たちは一緒なのだ。何があっても離れないと決めたのだ。
君の友達 -ジェームス・テイラー/キャロル・キング-
- そしたら僕を呼びなよ。
- それで君にはわかるだろう僕の居場所が。
- ボクは走って君の元に行くよ、君に会うために。
- 冬も春も夏も秋も。
- 君はボクの名前を呼ぶだけでいいんだよ。
- きっと君の元に駆けつけるから。
タロさんが起き掛けに点けたステレオが、今日の始まりを告げていた。
- fin -
最後の締めくくりで長い時間をかけてしまいました。
応援してくれた方たちに感謝しています。
ありがとうございました。
2013'12.9. 22:40 シュリンケル