46.次元旅行~現実世界からの離脱~
鷹の話を受けたセアンは、しばらくの間言葉を失い佇んでいた。
セアンの出産、それはモルトケと別れた後に母親が一人で産んだと言う。
「モルトケは・・・お父様だったのか」
セアンが俯いたままぽつりとつぶやいた。
『お前はずっと知りたかったのだろう?』 と鷹が言う。
「ありがとう、お鷹様」 顔を上げたセアンの表情は、少し寂しげな反面、嬉しそうでもあった。
「師匠、あなたはここに来る時自分の全てを伝えてくれました。天涯孤独なタロさんの心に何が詰まっているのかを。
俺も自分のルーツを知ってようやく理解しました。あなたは”愛”そのものだと」
俺もそうありたい、とセアンは晴れ晴れと微笑んだ。
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『時は満ちた。そろそろ始めるぞ』
鷹はそう言うと、金色に輝く羽をくちばしに加えて僕たちを見つめた。
僕とセアンは長老とエレーンたちを振り向いた。(さよならを言うために)
しかし・・・彼らは張り付いたかのように動かない。
『あぁ、世界の時間を止めたのだ。ここから先に干渉することは宇宙のタブーだからな』
改めて辺りを見回せば、長老たちを含めた(我々の)世界の全ては一枚の写真のようになっている。
「行ってきます」 僕とセアンは彼らに告げて鷹に頷いた。
『少し痛いが許せよ』
そう言うと鷹は目を細め、金色の羽を器用に使って僕とセアンをこの世界から剥がし始めた。
!!!
それは”少し痛い”どころではなかった。
正直に言えば”ものすごく痛かった”のだ。
『頼むからあまり痛がらないでくれ。お前たちの感覚は今、わたしと繋がっているのだ』 鷹は辛そうにそう言った。
なるほど。
僕たちを剥がしながら、鷹は”世界”について話してくれた。
(僕とセアンは気絶しそうな意識の向こうで聞こえるその話を聞きながら相槌のひとつも打てなかった)
- 世界から剥がされる痛みは、これから向かう”真の世界”に繋がる通行料に当たるのだ
- 今まで全てだと思われていた”現実世界”、それは一夜の夢のようなもの。
- マコさんが今も眠り続けるあの世界もまた、一つの夢の世界であり、本来であれば”宇宙の口”によって現実世界から異動する事はありえないはずだったのだ。
ようやく”現実世界”から剥がされた僕たちは、ぐったりとへたりこんでいた。
「マコさんは、間違った場所に自分の夢を迷い込ませたんだね。僕の意識を追いかけて」 と僕は鷹に言った。
『そうだ。お前の覚醒はその時期から始まっていたのだ。無意識下での魂は”宇宙の口”の検閲を受けないからな』 鷹は大きな瞳を瞬きして頷いた。
僕はセアンに肩を貸して、なんとか立ち上がった。
「それじゃあ行きますか」 僕は鷹を見つめた。
鷹がゆっくりと羽を広げて空を見上げた。
セアンと僕はつられて空を見る・・・
そこには・・・巨大な”宇宙の口”が不気味に浮かんでいた。