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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章 -冒険- (異なる次元)
44/59

44.次元旅行~次元開放~

 ぶわわわわわっと空間が歪み始めた。


長老の部屋で始まったその異変は、あっという間に辺りの空間を塗り替えていく。

(その場にいた全員が驚きで動けずにいた)


かつて長老の部屋であったはずのその場所は、ひゅうひゅうと冷たい風が吹きすさぶ脆い空間となっていた。


辺りには風に吹かれながら様々な物が浮かんで漂っていた。


囲炉裏や座布団が奇妙に距離感を失い、ぺらぺらとした写真のようにエレーンの足元に漂っている。


それどころか、さっきまで目の前にあった全てが・・・同じように漂っている。

(人間も、猫たちも。全てが)



 『なんじゃろうか、こりゃあ』 エコーがかった声色で長老がつぶやく。



 長老の言葉を受けて僕は答えた。

「周りをご覧ください。僕らのいた世界は、まるで一枚の絵のように見えていますね。これが”次元開放”された瞬間なのです」

(僕の言葉に一同は言葉を失って立ちすくんだ)



 僕は深く息を吸い込み、ゆっくりと吐きながら左腕をまっすぐに伸ばして高く掲げた。(親指を伸ばしたまま)


遠くで再びチェロの音色が響く。


眩ゆい光が空を覆う。


大きな羽を広げた”金色の鷹”がゆっくりと舞い降りて、僕の親指に留まる。


 『長老、元気そうだな』


鷹の言葉に長老は曲がった背中をしゃっきりと伸ばし、敬礼の姿勢をとった。

『お、お、お久しぶりにございましゅ!お鷹さま!!・・・ぐしっ』 (長老は懐かしさのあまりに涙と鼻水が止まらないようだ)

『お懐かしゅうございます。お鷹さま』 エレーンがしっぽを伸ばして挨拶した。


『エレーンだね。導きご苦労だった』


鷹は優雅に羽をたたむとエレーンに向かってウインクをした。

(エレーンはもじもじと地面をふみふみした)


 『さて、幸一』 と鷹が首を回して僕を見つめた。くるくると色彩の廻る大きな瞳で。


その瞳から僕は全てを受け止める。


「わかってます。父さん」


 はっとした表情でエレーンと長老が振り返る。

『ほぅ。いつから気がついていた』 鷹が頭をくるりと回して首をすくめた。


「あなたの弾くチェロは間違えようがありませんからね。でもはっきりと解ったのは最近かな」

それよりも、と僕は腕を頭上に掲げて人差し指を天に伸ばした。

「そろそろ始めましょう」


 『そうだな』 鷹は頷いて自分の羽を一枚引き抜いた。


それで?と鷹が僕を振り向いた。

『誰を連れて行くのだ』


 僕はぺらぺらと揺れながら指差したのだ。セアンを。


挿絵(By みてみん)


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