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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第二章 -冒険- (異なる次元)
41/59

41.長老と杖

 『まぁ立ち話もなんじゃし、家でゆっくりしんさい』


長老の言葉に甘えて、僕達は彼の家にお邪魔していた。


大きな栗の木に守られた長老の家は、どことなくナリタ会長の小さな屋敷に似ている。


四方をすっぽりと山に覆われたこの未開の地に、猫族の村は存在していた。


「空気が美味しい」 とセアンは何度も深呼吸をする。


僕も目を閉じて辺りの空気を胸に吸い込む。


生い茂る木々の香り。

新鮮な空気が肺に満ちる。


---


 「woom・・・お茶がおいしい」


セアンがうっとりとつぶやくのを見て、長老がふぉっふぉっと嬉しそうに笑う。


 『ところでのう、タロさん。そろそろ何があったんか教えてくれんかいね』

長老はそう言うと崩した足をゆっくりと座りなおし、床に置いていた杖を振りかざした。


 杖の動きに合わせて部屋の空間がゆったりと揺らぐ。

窓際に置かれた蚊取り線香の煙が引き寄せられ渦を巻き始めた。


ふおん。


ふおん、ふおん。


ぶおん


杖の先に呼応して、空間が切り取られてゆく。


・・・やがて、一瞬の煌きを放った空間に



 マコさんが眠っていた。

(どこからか音楽が流れていた)



-ザ・クリスマス・ソング-(Nat King Cole)


 切り取られた空間から静かに流れるその歌声だけが、辺りをそっと包んでいた。


挿絵(By みてみん)


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