39.猫森村へ2
『眠るな幸一』
地の底から響くその声に、僕は思わず目を開けた。
遠くでごうごうと低い水音が響いていた。
僕は思わず、がばっと身体を揺り起こす。
僕の1メートルほど先には、セアンの姿がゆらゆらと揺らめいていた。(気絶をしているのか、なすすべもなく流されていく)
その先に見えるのは・・・暗渠の出口だろうか?
時折、しぶきと共にぐわんと空間が歪んでいるようだ。
『なにしてんのよ!タロちゃん!』 僕の背に乗っていたエレーンが叫んだ。
『あそこが見える!? あれは次元の”歪み”よ! 飲み込まれたら二度と出れないわ!』
そんな大変なことをいきなり言われても、と僕はエレーンを振り返って聞いてみた。
「どうしたらいいの?」
『あきれた!タロちゃん、あなた暗渠に導かれたでしょ!』 エレーンが容赦なく僕の頭を叩く。
『次元を渡る時、私達の描くイメージが一致しないと危険なのよ!流れが安定しないの! お願いタロちゃん・・・猫森村をイメージして!!』
そんなの先に教えて欲しいよ、と僕は口を尖らせて反論したかったが、事態は非常に危険な状況を迎えているようだった。
僕は大きく両手を広げて一掻きした。
ぐんっと速度を上げて僕の身体はセアンに追いついた。
セアンとエレーンを抱えた僕は目を閉じて深呼吸をする。
まぶたの裏に僕は強く念じる -猫森村へ!-
周囲から泡がぶくぶくと僕らを包み・・・
・・・エレーンが(眠らせないために)僕の耳をがじがじと齧り・・・
水の流れが大きく変化した・・・