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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章 -長い眠り-
21/59

21.タロの架け橋1

-ぷっぷっぷーーーん。

-みんな元気!? 10月だと言うのにまだ暑いねえ。

-昼下がりのひと時を、DJタロがお邪魔しまーす!

-”タロの終わらない番組”始まるよ!


 その日の番組テーマは”旅”についてだった。


リスナー”ヒゲ”さんは、提案型リスナーとして度々番組テーマを与えてくれていて、その日もありがたくお題を番組に取り上げさせて頂いたのだ。


ヒゲさんはこんなメールで提案してくれた。


- こんにちは。タロさん。

- 早速ですけど・・・

- 旅はいいよねえ。

- 旅は人を大きくするよねえ。

- ”旅”-have a nice Trip!- 旅行代理店のそんなタイトルを見るとついフラフラ~って入っていっては旅先に想いを馳せつつ妄想しちゃうよねえ。

- あぁ、ええなあ・・・ひと時のお・も・い・で☆


実に頭がトリップしていて魅力的!などと微笑みつつ紹介したところ、つられて幾人もテーマに載せた思い出話などが番組に寄せられた。

(ちなみにヒゲさんは番組によって文体を選んでいるそうである。実に芸が細かい)



 一通のリクエストが届いたのは番組の終了間際だった。


- タロさん、わたし思うんです。

- 旅が楽しくありえるのは、きっと帰る場所があるからなんだろうと。

- わたしの親友は困ったことに旅先から帰れないままなの。

- 旅先がどんなに快適であっても、おそらくとても辛い事なのだろうな。

- そんな親友の為にリクエストをしました。

- 彼女の為に、ぜひ聴かせてください。


 リスエストは”ホームにて-中島みゆき-”(1977)


懐かしくて暖かい、しかし切ない歌声が番組に流れた。

故郷行きの列車に乗ることができないと歌詞が流れる。

それは古いフォークソング。

しかしその曲を聴いた僕は・・・

そう、僕はマコさんの事を想ってしまう。


やがてエンディングテーマに切り替わり、番組は終了する。


 DJブースを片付けて防音ドアを開けた僕の目の前にいたのは、小柄なOLさんだった。

誰だっけな。どこかで見かけたんだけどなあ。僕は拙い記憶をたぐる。(昔から顔と名前を覚えるのが下手なのだ)


 「お久しぶりです、タロさん。あたし、節子です。N.A.の受付の」

そう言ってぺこりと頭を下げる女性を見て、ようやく僕は彼女の事を思い出した。

「あぁ、受付のせっちゃん!」そのニックネームはマコさんからよく聞いていたものだ。

「じゃあ、この前ここから覗いてたのは、せっちゃんだったの?」僕はその日、猫山さんがここで待っていたのを思い出す。

(猫山さんは「タロさんも隅に置けませんな。ふっふっふっ、ぐっふっふ」と思わせぶりに笑ったのだ)


猫山さんには絶対に誤解を解かねばならない、と僕はぎりぎりと奥歯をかみ締めた。


 ところで、と僕は聞いてみる。

「さっきのリクエスト、ひょっとしてせっちゃんの?」


 彼女はショートヘアをぶんぶんと振って大きく頷いた。


 ふわふわとしたショートヘアが揺れ、猫じゃらしのそれのようだなと僕は微笑ましく感じた。


挿絵(By みてみん)


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