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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章 -長い眠り-
2/59

2.眠り病 (2005年1月)

 ”眠り病”


担当医のサワダからマコさんの病名を聞いたのは、半年前の冬だった。



 ちかちかと古くなった蛍光灯の灯りに照らされた診察室で、サワダはカルテとレントゲン写真を交互に見比べる。


彼はシックなメタルフレームの分厚いメガネを掛けていた。

(フレームには☆マークが仲良く並んで刻まれている)



 「最初に説明しなければならないのは」 メガネのレンズをハンカチで丁寧に拭きながら、彼は僕に向き直る。

「どこに問い合わせても答えが分からない病気だと言う事実です」



 年季の入ったスチールデスクに掛けられたビニールシート越しに、一枚の女性の写真が見えていた。


「ああ、これは妻です」 僕の視線を辿ってサワダは首元を爪で掻いた。

「6年前に他界しちゃいましてね」 それでも毎日眺めてしまうのだと、サワダは笑う。

微笑みながらそっと写真をなでる。


たったそれだけの事で、僕は彼に好感を持った。



 内科医のサワダは言う。

マコさんの病名は世界中の症例にも当てはまらない病なのだと。


しいて言うならば-”眠り病”-


そういう事になるらしい。



 蛍光灯がチカチカと瞬いた。


 病院の外で雨混じりの雪が窓辺を叩く。



そのようにしてマコさんの病名が決まったのだ。


挿絵(By みてみん)


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