19.マコ・夢の洞窟2
わたしはせっちゃんを洞窟の片隅に座らせて、彼女の話を聞くべく部屋の装いを改めることにした。
(ここはわたしの”夢”そのものであり、わたしの想いに応じてこの場所は変化するのだ)
わたしはそっと床を撫でる。
それに呼応して床一面が仄かに光る。
光に包まれたわたしの洞窟が、その姿を鮮やかに変えて行った。
「これ・・・マコの部屋?」
せっちゃんがびっくりした顔のままでつぶやいた。
「正確には、良く分からないのよ。ここがどこなんだか」
わたしはそう言うと、わたしの部屋に設置された戸棚から紅茶のティーパックを取り出した。
どうぞ、と差し出した紅茶セットを戸惑いながら受け取ると、せっちゃんはようやく落ち着きを取り戻したようだ。
せっちゃんはティーカップを抱えて、その部屋を見渡した。
出窓からは陽光がキラキラと差込み、壁には張り替えたばかりのような壁紙が白く煌く。
ここが、マコの現実の部屋でなくて、なんなのだと言うのか。
せっちゃんは改めて戸惑うばかりだ。
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「せっちゃん。あなた、以前にもわたしと”ここ”で会ってるわね」
「え?どういうこと?」 せっちゃんは再び戸惑う。
そうしてわたしは説明を始めたのだ。この不思議な夢の世界の話を。
前回、せっちゃんがここを訪ねて来た時、わたしの世界は彼女の夢と一時的にリンクされていたらしい。
「その時、ここは”駅前のコーヒーショップ”だったわ。
覚えてるかしら。あなたはタロちゃんの事を誤解して憎んでいたでしょう?
でもその誤解は解けたようね」
彼女が記憶を結びつなぐのを待って、わたしは肝心な事を聞いてみる事にした。
「あなた、どうやってここに来たの?」
紅茶が香る部屋の中で、せっちゃんはゆっくりと口を開いた。