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続・タロと今夜も眠らない番組  作者: シュリンケル
第一章 -長い眠り-
18/59

18.マコ・夢の洞窟

 草原を渡る風がサナトリウムに流れ込み、わたしは秋の香りに気付いた。


病室で揺れるカーテンに煽られて、テーブルに置かれた花束が香る。


いつものようにタロちゃんの優しい声がラジオから聞こえる。



-ザ・クリスマス・ソング-(Nat King Cole)


またタロちゃんは掛けてくれた。

わたしのお気に入りを。


あぁ、神様。


わたしは起きているわ。

少なくとも一日の半分くらいは、意識があるのよ。


でも、それは誰にも伝わらない。


 そうしてわたしは意識が薄れて行くのだ、ナットキングコールの素朴な歌声に包まれて。


幻の雪に包まれて、意識の淵から零れてゆく。


---


 辺りに漂うのは白い霧。


そうしてわたしは、いつものように白い霧の漂うほの暗い洞窟に座っていた。


滑らかな質感の地面は時折仄かに光を発しているようだ。

その光源は、足元に転がる水晶体とリンクしているようである。(呼応して点滅しているようだから)

近寄って目を凝らすと何かの結晶が煌めいているように見える。


 わたしはここが”現実の世界ではない”と感じているけれど、同時に”真実の世界である”と感じている。


ここはまるで-

(それを説明するには、ボキャブラリーが不足しているようだわ、とわたしはため息をついた)


『マコー!』

わたしの耳を捉えたのは、懐かしい友達の声。

「せっちゃん!?」


彼女の名を呼んだ瞬間、目の前の壁から彼女はふわっと現れた。


「マコなの?」とせっちゃんが目をしばたたかせて問いかける。

そうよ、とわたしは答えた。


 わたしたちは久しぶりの再会に手を取り合って喜んだのだ。


せっちゃんに触れた瞬間、モノクローム色の景色がゆっくりと揺らめいた。

わたしは彼女の感情を身の内に感じたのだ。

それは不思議な感覚だった。


そうしてわたしは知ったのだ。


 彼女が何を伝えたいのかを。


挿絵(By みてみん)


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